米シリコンバレー銀破綻で米利上げ早期終了も

 米シリコンバレー銀行の経営破綻の影響ですが、同社がシリコンバレーの新興企業融資に特化していること、金融当局が早期に破綻を認定して金融システムから切り離したことなどから、直接的なマーケットへのインパクトは限定的と考えられます。

 短期的には影響の広がりを見極めたいとする動きが広がりそうですが、中長期的には、今回の事象がFOMC(米連邦公開市場委員会)の金融政策の転換につながる可能性もあるため、市況は早晩、下げ止まりから切り返しへと転じていくことになりそうです。

 なお、米国の金融政策につながる材料として、3月10日に発表された米雇用統計も挙げられます。失業率が悪化して平均時給も市場想定を下回り、0.5%への利上げ幅拡大懸念を後退させるものだった印象があります。3月21~22日のFOMCに向けては期待感が高まっていく可能性も高いと考えられます。

 日本では、3月9~10日の日本銀行の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の変更も一部では想定されていましたが、今回は政策変更がなされませんでした。歴代最長の10年にわたった黒田東彦現総裁の任期が終わり、日銀の金融政策は4月から植田和男新総裁をはじめとする新執行部に委ねられることになります。

 この点では、3月15日に集中回答日を迎える春闘の結果も注目されます。期待通りに賃上げが広まれば、植田新体制で初めての金融政策決定会合となる4月27~28日に向けて、イールドカーブ・コントロール政策に関しての思惑が高まっていくことになるでしょう。

 金融引き締めにつながる政策変更は、米国の利上げステージが継続しているうちになるべく行いたいところであると考えられます。基本的には、米国の利上げ終了局面が早まったとみられるため、為替相場は円高ドル安方向に向かうものと判断されます。

 日本株にとって円高はデメリットとなりますが、緩やかな円高基調であれば、利上げ一巡後の米国株上昇がより強い支援材料として機能するものとみられます。

 米国の長期金利が低下局面に入るとみれば、金融関連株は目先手掛けにくい状況が予想されます。日銀のイールドカーブ・コントロール政策の変更が買い材料視される余地はありますが、政策金利の変更にはまだ時間を要するとみられます。出尽くし感につながりやすい材料となる可能性が高いでしょう。

 一段の円安期待が後退することで、輸出関連銘柄の自動車株の上値が重くなることも想定されますが、こちらは新型コロナウイルス禍が落ち着き、本格的な生産正常化への移行がプラス材料としてまだ残されています。

 全般的には、配当権利落ちのタイミングを迎えることも加わり、バリュー(割安)株からグロース(成長)株への資金シフトが強まっていくものとみられます。高配当利回り銘柄に関しては、ここからは、2023年度に減配の恐れが少ないものや、増配の可能性が高いものを重要視していくべきでしょう。

 その他では、マスク着用の緩和を受けて、口紅など化粧品関連の需要の高まりが見込まれるほか、春闘で賃金上昇の動きが大きくなれば個人消費関連銘柄の一段の刺激材料につながっていく可能性にも注目です。