今日の為替ウォーキング

今日の一言

戦争とは、敵の意思を屈服させることを目的とする武力行使である - クラウゼヴィッツ

Cold As Ice

 先進国の中央銀行は、相容れない2つの政策を同時に実施しようとして苦労している。

 労働コストの上昇と物価高を懸念するなら、中央銀行は利上げを続け、過熱しすぎた景気を冷やして経済成長をトレンド以下に抑える必要がある。逆に、需要後退が経済成長を鈍化させ、失業率を上昇させることを心配するならば、中央銀行はより慎重な引き締めを行う必要がある。

 今はすべての中央銀行が、供給サイドのインフレに対抗して利上げしながら、需要サイドの不況をやわらげようとしていることである。

FRBの場合:
 FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレ抑制を最優先事項(第一の使命)と考え、目的遂行のためには、米経済成長をある程度犠牲にしても構わないとさえ考えている。米国のブレークイーブン・インフレ率(市場が予想する期待インフレ率)は、依然として物価上昇が高確率で継続することを予想している。すでに織り込まれている利上げとバランスシートの縮小の組み合わせでは、まだ不十分ということだ。

 FRBの予測によると、3年後の米経済は、インフレ率が依然として目標を上回っているが、GDPは潜在成長率を上回り、また失業率がNAIRU(インフレを生じさせない失業率の下限)を下回ると見ている。FRBはインフレを押しつぶしたいのではなく、安定させることで、米経済を軟着陸させたいという期待を抱いているのだ。

 とはいえ、経済構造の変化、景気見通しの不確実性、消費力低下や消費者需要の減速、そして地政学リスクの高まりといった状況の中で、金融引き締めをより積極的に行うことが景気後退のリスクを高めることは明らかだ。

ECBの場合:
 ECB(欧州中央銀行)は、量的緩和政策であるAPP(債券購入プログラム)の終了後、2022年7月から11年ぶりの利上げサイクルに入り、マイナス金利も解除した。

 欧州の重要な景気指数PMI(購買担当者景気指数)の2月は、予想を上回る強さだった。景気後退リスクが弱まったという点では明るいニュースだが、ECBにすると「利上げに経済が反応しない」という頭の痛い問題だ。

 欧州のコアインフレ率は4.2%なので、ECBが「実質プラス」金利まで利上げしたいのならば、少なくとも4.25%まで政策金利を引き上げる必要がある。
現在の主要政策金利は3.00%だから、まだまだ先が長い。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成