先週の日本株は、24日(金)の東京株式市場の取引時間中に行われた植田和男次期日本銀行総裁候補の衆議院での所信聴取が評価されて急上昇。

 日本株は22日(水)に米国株の下落を受けて大幅に売られましたが、24日の日経平均株価(225種)の終値は2万7,453円で、前週末比0.2%の小幅安まで戻しました。

 しかし、24日に米国株が再び大きく下落。27日(月)の日経平均も反落して始まりました。

 今週2月27日から3月3日(金)は、米国の利上げ長期化懸念が再燃して、株式市場はまたしても暗雲に包まれそうです。

先週:米国株はインフレ高止まりで急落!植田氏デビューは高評価

 先週は、21日(火)に発表された米国の2月総合PMI(購買担当者景気指数)がサービス業部門の好転で、好不調の境目である50を上回りました。市場予想を超え、8カ月ぶりの高水準となりました。

 さらに24日(金)発表の1月の米国PCE(個人消費支出)も予想を大きく上回る前月比1.8%の上昇。

 PCEの価格指数(PCEデフレーター)や食品・エネルギーを除いたコアデフレーターも、前月比0.6%の上昇と、これまでの鈍化傾向から再び伸びが加速しました。

 PCEのコアデフレーターは、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が最も重視している物価指標です。

 その伸びが再加速したことで、米国のインフレ長期化が改めて強く意識された1週間となりました。

※PCEデフレーターに関して詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 FRBは大幅な利上げを続けることで、過熱した米国の景気やそれにともなう物価高を必死に抑え込もうとしています。

 しかし、1~2月の景気・雇用関連指数は、1月の雇用統計や小売売上高、21日発表の2月サービス部門PMI、24日発表の1月個人消費支出など、どれをとっても景気の加熱ぶりを示すものばかり。

 景気がよく、モノやサービスの価格が上昇するインフレが続くと、お金の価値は逆に下落します。

 これまで100ドルで買えたモノが20%値上がりして120ドル払わないと買えなくなるということは、お金の価値が「100÷120=約83.3%」に目減りすることを意味します。

 そんなインフレに対して一番弱い金融商品は債券です。

 インフレになると、長期間、他人に貸しているお金の実質的な価値もどんどん目減りしてしまうからです。

 そのため、投資家は損失覚悟で債券を市場で売却しようとします。

 債券価格が下落すると、それに反比例して、債券に対する実質的な利回りが上昇します。

 例えば、100ドル貸すと毎年10ドルの利息がもらえる債券があったとします。表面利率は10%です。

 投資家の売りが殺到し、この債券の価格が90ドルまで下落したとしましょう。

 すると、毎年10ドルの利息に対する実質利回りは「10÷90(ドル)」で約11.1%まで上昇します。

 これが先週、米国債市場で起こったことです。

 米国の強すぎる経済指標で当面インフレが続くとみた投資家は、インフレが続くとお金の価値が目減りして不利になるので、米国債を大量に売却。

 米国債の価格が下落したため、逆に金利が跳ね上がりました。

 短期金利の指標となる米国2年国債の金利は24日、4.8%に到達。

 長期金利の指標となる10年国債の金利も4%台目前まで上昇しました。

 金利が急上昇すると、お金を借りて株式市場に投資している投資家の中には、金利負担に耐え切れず、株式を売却して現金化する動きが広がります。

 株式市場から資金が流出するので、景気がいいにもかかわらず、株価も大きく下落することになるのです。

 米国株を代表する24日のS&P500種指数が前週末比2.67%安となるなど、先週の米国3大株価指数はそろって大幅な下落となりました。

 一方、日本株を救ったのは、24日に行われた日銀次期総裁候補・植田氏の衆議院での所信聴取でした。

 植田氏は、現在、日銀が行っている異次元の金融緩和は適切で、物価上昇率2%の目標達成まで継続すべきと安全運転の答弁に徹しました。

 しかし、「企業収益や雇用の改善でデフレではない状況になった。この芽を大事に育てていく」といった原稿棒読みではない、前向きで独自の発言もありました。

 植田氏の手腕に対する期待感から、質疑応答中の日経平均は大きく上昇し、ある意味、100点満点といえる国会デビューになりました。

 それは2023年3月期の決算期末に入る日本株を下支えする好材料になりそうです。

今週:米国の金利上昇が続くなら続落!?日本株は円安が下支え

 2月から3月へと月をまたぐ今週は、28日(火)に2月の米国消費者信頼感指数が発表になります。

 強すぎる米国景気を支えているのは、日本と違って物価や金利が上昇してもあまり気にせず、旺盛な消費活動を続ける個人消費者です。

 その最新の動向が分かる指標として注目を浴びそうです。

 3月1日(水)にはISM(全米供給管理協会)の製造業景況指数が発表。

 3日(金)には、活況を呈するサービス部門の景況感が分かるISM非製造業景況指数も発表されます。

 米国の2月の雇用統計発表は来週10日(金)になります。米雇用統計は基本的には毎月第1週の金曜日に公表され、3日がその日に当たりますが、いつもより遅い発表となります。

 そのため、2日(木)発表の前週分の新規失業保険申請件数に注目が集まるかもしれません。

 今年に入ってからは失業保険の申請件数が予想を下回ることが多く、米国で活発な雇用が行われることを示す発表が増えています。

 強すぎる雇用はインフレ高止まり、金利上昇をもたらすので、現状は株価にとってネガティブです。

 今週も先週同様、米国でインフレ長期化を懸念した金利上昇が続くようなら、株価が大きく続落してもおかしくないでしょう。

 ただ、米国の金利が上昇すると、日米金利差拡大で為替相場は円安に振れます。

 実際、24日(金)のニューヨーク外国為替市場では1ドル=136円台半ばまで急速な円安が進みました。

 円安は日本株の下支え要因になります。

 植田日銀次期総裁候補への市場の高評価もあり、米国金利上昇でも円安同時進行で、日本株がそれほど大きく下げない展開に期待したいところです。