今日の為替ウォーキング
今日の一言
決断は疑惑の存在を前提とする。地位の進むに従って決断力を失う者が少なくない
Free Fallin’
日銀は一体、誰を向いて政策を行っているのだろうか? 何兆円もの資金を投入して、YCC(イールドカーブ・コントロール)政策を守ろうとしているのはなぜか?
日銀は消費者のインフレ期待を呼び覚まそうとしているのだと言う人もいる。しかし、日本の消費者の99%はYCCの動向を気にしていないし、黒田総裁の発言を聞くためにTVをつける家庭もいないだろう。
では、企業のためだろうか?日本企業の半数近くは、緩和政策の継続を積極的に支持しないとの調査結果もある。家庭でもなく、企業でもないとすれば、日銀の政策は、政治家と財政に対する配慮、あるいは投資家に向けられていることになる。
マーケットはYCC政策を据え置く理由をあれこれ推測するしかない。日銀は、市場に対して政策目的を説明するつもりはないし、説明したところでどうせ理解できないだろうという姿勢だからだ。
日銀は、FRBやECBが、マーケットとのコミュニケーションを重視し、不要な混乱をもたらさないよう注意を払っているのとは反対だ。黒田日銀は、昨年12月は何の前触れもなくYCCの変動幅を拡大した。しかし引締めが緩和政策の強化であると、理解不能な表現を駆使してマーケットを煙に巻いた。
黒田日銀は、マーケットと日銀の考えは一致していないことを認める。しかし同時に、マーケットの見方と日銀の見方は「同じである必要はない」とも明言している。言い換えれば、日銀は見解の相違を認識するも、政策がそれに影響されることは容認しないのだ。認識ギャップで市場に混乱が発生するのは日銀の責任ではないということだ。
今年1月の会合で日銀は、今度は逆にYCCの変動幅を維持した。1日数兆円の資金を投入してなお、金利が変動上限にへばりついている状態を放置した。変動幅を拡大するとのマーケットの予想は裏切られた。
「市場が金融政策の変更を期待して動いていたということがあったとすれば、それは是正されたと思う。」日銀総裁はこのように言い捨てた。中央銀行は常に正しいのだから、マーケットは黙って従っていればいいのだという勝利宣言でもある。
黒田総裁は、異次元の緩和政策を長年続けた末、国の借金(国債残高)1、000兆円を国と国民に抱えさせたまま、後任にYCCの後始末を託して今年4月に退任する。
次期日銀総裁に期待されているのは「市場とのコミュニケーション」だ。