金(ゴールド)価格の変動を決める7テーマ

 特に長期視点の金(ゴールド)投資においては、「ドル建て金価格」の動きに注目することが必要だと述べました。その「ドル建て金価格」は、どのような要因で動いているのでしょうか。

 以下は、筆者が考える、「短中期」「中長期」「超長期」の三つの時間軸ごとの、金(ゴールド)相場に影響を与え得る七つのテーマです。

図:金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマ

出所:筆者作成

 有事の金買い(上記の有事ムード)だけ、株と金(ゴールド)の関係(上記の代替資産)だけ、ドルと金(ゴールド)の関係(上記の代替通貨)だけ、など、どれか一つのテーマだけで、現代の金相場を正しく分析することはできません。

 ウクライナ危機勃発、高インフレ継続、FRB(米連邦準備制度理事会)による急速な利上げ、中国の景気減速、各種人権問題噴出など、不安材料に事欠かなかった2022年の金相場(ドル建て)が下落したことから分かる通り、「有事だけ」では現代の金相場を分析することはできません。(もし今も、有事だけで金(ゴールド)価格が動くのであれば、2022年は急騰していたかもしれない)

 2022年の下落は、不安材料が噴出したことによる「有事ムード」増幅と株価が不安定化したことによる「代替資産」起因の上昇圧力を相殺して余りある、強い下落圧力が存在していたために起きたと、考えられます。その強い下落圧力は、FRBの急速な利上げがきっかけで発生したドル高(「代替通貨」起因の下落圧力)によってもたらされました。

(1)テーマを俯瞰(ふかん)すること、(2)複数のテーマ起因の圧力を相殺すること、この二つなくして、現代の金(ゴールド)相場を分析することはできないのです。