先週は、18日(水)に終了した日本銀行の金融政策決定会合で長期金利上限のさらなる引き上げはせず、これまでの異次元緩和の継続が発表されたことで、日本株は急騰しました。

 その後、反落したものの、先週の日経平均株価(225種)の取引は前週比434円高で終了しました。

 20日(金)のニューヨーク株式市場で米国株が上昇に転じたことや、為替相場も1ドル=129円台で安定したこともあり、今週23日(月)~27日(金)は大幅続伸に期待がかかります。

先週:緩和継続で日本株上昇、巨大IT企業リストラでナスダック底打ち!?

 先週は、金融緩和などを柱とした経済政策「アベノミクス」を支えた黒田東彦総裁率いる日銀の強い意思表明が、株価上昇につながりました。

 昨年12月19~20日の金融政策決定会合で、10年国債の上限金利を0.25%から0.5%に突如引き上げた日銀。

 今回も日銀の政策変更を見越して、海外のヘッジファンドなどが日本国債に空売り攻勢を仕掛け、10年国債の金利が上限の0.5%を超えるなど、海外ヘッジファンドvs日銀の攻防が続いていました。

 そんな中、18日(水)正午前に終了した今回の金融政策決定会合では、長期金利の上限を0.5%に据え置き、大規模な国債買い入れを続けることを表明。

 この決定を歓迎し、18日の日経平均株価の終値は前日比652円高と大幅上昇しました。

 1ドル=127円台まで円高に振れていた為替相場も一時131円台半ばまで戻すなど、株高・円安が続きました。

 しかし、米国では、18日(水)発表の12月鉱工業生産の製造業生産指数が前月比1.3%の低下と予想外の大幅な落ち込みに。

 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が金利引き上げで米国の景気を「オーバーキル(過度に落ち込ませる)」させるのではないかという懸念が台頭しました。

 セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁ら米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)メンバーから利上げに積極的なタカ派発言も相次ぎ、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は18日(水)から19日(木)にかけて急落。

 それを救ったのが巨大IT企業のリストラ策です。

 1月に入って以降、アマゾン・ドット・コム(AMZN)が約1万8,000人、マイクロソフト(MSFT)が1万人のリストラ策を表明したのに続き、20日(金)にはグーグルの持ち株会社アルファベット(GOOG)は全従業員の約6%に相当する1万2,000人のリストラを発表。

 大規模リストラによる巨大IT企業の収益向上期待、さらに前日に決算発表した映画配信のネットフリックス(NFLX)の会員数が3カ月で766万人も増加したことを好感し、ハイテク株の集うナスダック総合指数は20日(金)、2.6%高と大幅上昇しました。

 先週の日本株では、IT関連など成長株が集まる東証マザーズ指数も前週比2.3%高と、2週連続で上昇。

 米国ナスダック市場や東証マザーズ指数の上昇は、2022年に売られてきたハイテク、IT関連株の底打ちを強く示唆するもの。

 今後の株価の本格的な上昇にとって非常に明るい兆し、といえるでしょう。

今週:マイクロソフト決算や日銀総裁人事に注意!上昇機運継続か!?

 今週は中国市場が春節で1週間、休場になります。

 また、日米企業の2022年10-12月決算発表が本格化するため、個別企業の業績で株価が動く展開になりそうです。

 日本株にも影響度が高い米国企業としては、24日(火)のマイクロソフト(MSFT)、昨年1年間で株価が65%も急落した25日(水)の電気自動車テスラ(TSLA)の決算発表に要注意です。

 一方、日本株では24日に自動車、家電向けモーター最大手の日本電産(6594)、26日(木)にシリコンウエハ製造世界一の信越化学工業(4063)などが決算発表を開始します。

 米国では26日(木)に2022年10-12月の米国実質GDP(国内総生産)の速報値、27日(金)には12月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表。

 PCEデフレーターはFRBが最も注目するインフレ指標であるだけに、物価上昇の鈍化から、さらに物価低下の傾向が鮮明になれば、米国株の上昇が期待できるでしょう。

 先週、日銀が断固とした量的緩和継続の方針を示して、日本株上昇の起爆剤となりましたが、黒田総裁の任期は4月8日まで。

 黒田氏を支えてきた副総裁2人の任期も3月19日で満了します。

 そのため、岸田政権が2月10日(金)を軸に次期総裁候補を国会に提示するのではないかという報道が流れています。岸田文雄首相も今月22日(日)に放送されたBS番組で黒田総裁の交代を明言し、後任の人事案を2月に国会で提示する意向を示しました。

 23日(月)から国会も始まり、ポスト黒田が誰になるのか、報道も過熱してきます。

 日銀の次期総裁には、黒田総裁が支えたアベノミクスを継承するような、金融緩和に積極的な「リフレ派」の候補が抜てきされるというのが大方の予想です。

 具体的には、現在副総裁を務め、日銀で長年、量的金融緩和政策の設計にかかわってきた現副総裁の雨宮正佳氏が有力候補といわれています。

 ただ、アベノミクスとは一線を画したい岸田政権が、あえて金融引き締めに積極的な反リフレ派の次期総裁を選べば、日本株が大きく急落する恐れもあります。

 懸案の日銀人事を除けば、米国のインフレ鈍化や中国経済の再開、訪日観光客による内需活性化など、日本株を取り巻く環境は良好といえるでしょう。

 FRBの高金利政策にもかかわらず、米国経済が景気後退に陥らずに悪影響を最小限に抑えながらソフトランディング(軟着陸)すれば、2023年春に向け、力強い上昇相場入りも期待できそうな1週間になりそうです。