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低成長下の株式投資にも希望はある
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

低成長下の株式投資にも希望はある

2012/10/5
今回書こうとしていることと同趣旨のことは、本連載でも何度か取り上げたことがあるが、重要なポイントなので、改めて書いてみたい。特に、株式相場が不調な時にこそ、原理原則の正確な理解を確認しておくことが大切だ。
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今回書こうとしていることと同趣旨のことは、本連載でも何度か取り上げたことがあるが、重要なポイントなので、改めて書いてみたい。

特に、株式相場が不調な時にこそ、原理原則の正確な理解を確認しておくことが大切だ。また、昨今のような相場では、そうしないと、「心が折れる」心配がある。

低成長だと株式投資は絶対ダメなのか?

先日、ある勉強会の議論で、「ともかく、株価は低成長では絶対上がりません。そして、これからの日本は間違いなく低成長です」と繰り返し発言する人物がいて、閉口した。間違いを正してあげようかとも思ったが、年長者だし、株式や投資信託の投資でかなりの損をされた方のようなので、止めておいた。

読者も、この人物のようにお考えではないだろうか。だとすると、株式に対して悲観的になるのも無理はない。

将来の経済成長率を正確に予想することなど誰にも出来ないが、悲観的な材料の一つは、労働力人口の動向だ。日本の15歳~64歳の人口は、2010年の8,173万人から2030年には6,700万人台へと、この先20年間でざっと17%も減少することが見込まれているという。これは、1年あたり約0.9%の減少だ。国全体の経済成長がプラスかマイナスかについては、労働人口の減少ペースと労働生産性の改善率とのどちらが勝るかが問題だが、今後の労働人口減が成長率に対する影響は小さくない。

まして、現実の株価に影響が大きい名目成長率は目下デフレで、日銀は、消費者物価上昇率1%と目標を提示してはみたものの、これを早急に達成しようとして慌てる様子が一向に見られない。

確かに、日本の経済を巡る条件は厳しい(ある部分は政策により「不必要なまでに」厳しい)。しかし、理屈上、株式には、低成長でもリスクフリー金利よりもかなり高いリターンがあっておかしくないし、マイナス成長でもそれは同じなのだ。

主な問題は「予想の変化」

さて、株価は、将来の利益の割引現在価値の合計と考えることができる。利益成長率を長期にわたって一定とした場合、理論上の株価は、図に示した式で求められる。

具体的な数字を入れて考えて見よう。たとえば、9月末時点の日経平均を株式に見立てた場合の一株当たり利益は約750円だ(今期基準、日経予想)。これをベースに、仮に、投資家が株式に要求している投資利回りが8%だとして、長期的な成長率を2%と見込むとしよう。式の右辺の分母は、0.08-0.02で0.06となり、750÷0.06を計算すると、12,500円となる。

ここで、成長率をマイナス1%にしてみると、式の右辺の分母は0.08-(-0.01)となるので、0.09となって、これで750を割ると、8,333円だ。

株式に対する投資家の期待(要求)利回りが8%だとして、将来の予想利益成長率がプラス2%なら現在の株価は12,500円となり、将来の予想利益成長率がマイナス1%なら現在の株価は8,333円となるという二つの結果があるが、共に、この株価が達成された後、将来に実現する株式のリターンは8%であり、同じだ。マイナス成長を仮定する場合は、将来の一株利益も減っていくが、リターンは同じものが実現する。

要は、成長率が正しく予想されて既に株価に織り込まれているとすれば、株式は、今後、リスクに見合ったリスクプレミアムを伴うリターンをもたらすということなのだ。

マーケットの世界では、予想されている事態と同じ事態が起こってもインパクトは中立と考えるのが大原則だ。

企業の利益は個別企業ではもちろん、全体の統計でも大きくぶれるが、長期的なイメージとして名目GDPの成長率に近いものと見ていいだろう(長期的にそうでなければ、上場企業利益の名目GDPに対する比率がゼロまたは無限に発散してしまう)。

対象をGDPの成長率に変えても予測は簡単ではないが、よくあるように「日本は人口が減るから低成長であり、だから長期的に株価は上がらない(はずだ)」という議論が必然的な正しさを持つものではないことがお分かり頂けるだろう。

株式のリターンに大きく影響する要素は、第一に「予想外の成長率(予想)の変化」であり、第二に「リスクプレミアム(株式のリスクに対して投資家が要求する追加的利回り)の変化」だ。

ざっと20年に及ぶ日本株の低迷は、主として、現実の成長率低下と共に、日本の経済成長率及び企業の利益成長率に対する「将来予想」が下方修正されてきたことによる。もう一つには、投資家が、株式に対する要求リターンを上げて(リスクプレミアムを上げて)きたことがあるかも知れない。先の関係式から、筆者は、現実をこのように解釈している。

前述のように、将来の低成長自体はその予想が株価に十分織り込まれたなら、後のリターンにとって問題ではない。

また、投資家がリスクを嫌いリスクプレミアムが拡大すると、その過程で株価は下がるが、株価が下がった後には期待リターンは以前よりも上昇しているはずだ。日本や世界のあちこちで起こった経済問題と株価の下落がもたらす心理的影響を考えると、現在、リスクプレミアムが拡大した状態にある事は想像に難くない。

リスクプレミアムは無限に拡大していくような性質のものではない。また、過去を振り返ると必ずしも規則的ではないが循環的に変動している。投資家が自信を回復すると、リスクプレミアムは縮小に転じ、この過程は、株式に通常の期待リターン以上の大きなリターンをもたらす。

成長率が「思っていたよりもましであるらしい」と投資家が思える状況、あるいは、リスクプレミアムが縮小する状況は、何れも、これまで想定されていた期待リターンよりも大きなリターンが得られる。

現在、想定成長率がただちに上方修正される確実なきっかけはまだ見えていないとしても、当面の低成長自体は現在の株価に十分織り込まれているのではなかろうか。また、リスクプレミアムが拡大している時期だとすれば、現在は投資の好機(ないしはその近く)である公算が大きいのではないだろうか。

率直にいうと中国の経済にまだ心配な点があるが、日本、米国、欧州は一通りバブル崩壊の底が見えた感がある(欧州はもう長引くかも知れないが)。仮に、中国のバブル問題が一巡すると、株式投資にとって「怖い要因」の大きなものが見当たらない、「株式の時代」と呼べるような時代が(たとえば十数年間くらいにわたって)訪れる可能性もある。

筆者は、遠くない将来に、チャンスを果実に変える投資家がいるのではないかと考えている。

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