先週の日本株は、米国の景気後退懸念の影響で一進一退が続きました。

 12月9日(金)には米インフレ率の高止まりを示す指標も飛び出し、米国株は大きく下落。

 今週12日(月)~16日(金)の日本株は乱高下の可能性が高そうです。

先週:景気後退懸念に沈んだ米国株、中国期待で救われた日本株!

 米国では毎年12月25日前後から新年にかけて「クリスマスラリー」で株価が上昇するのがアノマリー(明確な根拠はないものの、起こりがちな値動きのクセ)になっています。

 しかし、先週の株式市場はクリスマスラリーどころか、暗中模索の毎日が続きました。

 週前半には、来る2023年に米国が景気後退(リセッション)に陥る懸念が台頭。

 材料視されたのは、米国の短期国債の金利が長期国債の金利を上回る「逆イールド」の深刻化です。

 通常、債券の金利は償還までの期間が長いもののほうが短いものよりも、長い間、お金を債券発行者にゆだねることになるので高くなります。

 しかし、金融引き締め政策の行き過ぎなどで短期金利が高くなり、長期金利を上回るのが「逆イールド」と呼ばれる現象。

 米国では景気後退の前兆シグナルとして恐れられています。

 米国の10年国債の金利は低下していますが、その過程で7日(水)、2年国債の金利が10年国債の金利を上回る逆イールドの幅が約40年ぶりの大きさまで拡大。

 9日(金)の市場終了時点の利回りは2年国債の4.34%に対して、10年国債は3.58%となりました。

 さらに痛撃になったのが、9日(金)に発表された米国の11月のPPI(卸売物価指数)です。

 前年同月比7.4%、前月比0.3%のいずれも上昇となり、市場予想を多少上回りました。

 その結果、高止まりする物価高のせいで2023年も政策金利の高止まりが続くという不安感が台頭。

 多くの機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は、週間で前週比3.4%下落と低迷しました。

 一方、日経平均株価(225種)は前週比0.4%上昇し、辛うじてプラスをキープ。

 強力な支援材料になったのは、中国政府が7日(水)に、新型コロナウイルス感染封じ込めを図る厳格な「ゼロコロナ政策」の大幅緩和を発表したことです。

 8日(木)には上海のディズニーランドも営業を再開しました。

 政策の急転換を受け、中国の香港ハンセン指数が前週比で6%以上も急上昇しました。

「ユニクロ」の中国事業が成長を支えるファーストリテイリング(9983)が週間で3.4%上昇。

 産業用ロボットのファナック(6954)も中国の工場再開で業績回復が見込めることから、3.2%高。

 改めて、日本株が米国だけでなく中国経済の見通しに連動して買われやすいことが浮き彫りになりました。

 ドル/円相場は、米国の金利低下にもかかわらず、先週は5日(月)に1ドル=134円台前半から取引が始まりましたが、9日(金)は136円台後半で終えました。小幅ながら、円安ドル高が進行したことも日本株の救いになりました。

今週:米CPI、FOMC後のパウエル発言で株価乱高下は必至!?

 今週はいよいよ13日(火)に米国の11月のCPI(消費者物価指数)が発表されます。

 10月は前年同月比7.7%の伸びと予想を大幅に下回り、株価が急騰するきっかけになりました。

 しかし、予想以上の伸び率だった11月のPPIを受け、今回の発表には警戒感が強まりそうです。

 予想を超えるような伸びになってしまうと、年末を目前にして株価が大きく急落する引き金になりかねません。

 先々週までの株式市場では、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)による利上げが物価高の収束によって、2023年早々にも打ち止めになるという楽観論が優勢になりました。

 一方、先週は一転して、「これまでの利上げが米国経済を景気後退に陥らせる」という新たな悲観論が台頭しています。

 そこに13日(火)に発表される11月のCPIの伸び率が高止まりしたままだったら、市場がこれまで織り込みつつあった楽観的なシナリオが全部ひっくり返って振り出しに戻ってしまいかねません。

 そうなると株価が急落してもおかしくないでしょう。

 一方、11月CPIの伸びが予想よりも鈍化していれば、景気後退に陥ることなくFRBが2023年半ば以降に利上げから利下げに政策転換するという明るい見通しが広がる可能性もあります。

 そして、14日(水)にはFRBが13~14日に開くFOMC(連邦公開市場委員会)の会合結果が公表され、利上げ幅が発表されます。

 FRBはこれまで4会合連続で0.75%ずつ引き上げてきましたが、今回の利上げ幅が0.5%に縮小されるという予想が大勢を占めています。

 問題なのは、FOMC後に開かれるパウエルFRB議長の記者会見です。

 利上げ幅が0.5%に縮小されても、政策金利は4.25~4.5%に達し、長期間高水準で続くことは、株価にとって致命的です。

 現在の株式市場の関心は「利上げはいつ終わるか」から「利下げはいつ始まるか」に移りつつあります。

 高金利の長期化はやむをえない、といった発言がパウエル議長の口から飛び出すと、株価急落の引き金になりかねません。

 15日(木)には米国の11月小売売上高も発表されます。

 こちらはあまりに良い数字だとインフレ高止まり懸念に、悪い数字だと景気後退懸念を招くことにそれぞれつながりかねません。

 2021年12月末に4,766ポイントだったS&P500種指数が現在3,900ポイント前後で推移しているように、今年の米国株が下げ相場になることはほぼ確定しています。

 一方、昨年末に2万8,791円だった日経平均株価の先週末の終値は2万7,901円。

 日本株が今年、前年比マイナスのままで終わるか、それともプラスに転換できるか。

 今週の相場が今年の年間のパフォーマンスに影響を与えるのは必至といえるでしょう。