毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:インテル(INTC、NASDAQ)、オン・セミコンダクター(ON、NASDAQ)
インテル(INTC、NASDAQ)
1.2022年12月期3Qは、20.1%減収、営業赤字1.75億ドル
インテルの2022年12月期3Q(2022年7-9月期、以下今3Q)は、売上高153.38億ドル(前年比20.1%減)、営業損失1.75億ドル(前年同期は52.27億ドルの黒字)、当期純利益10.19億ドル(同85.1%減)となりました。今2Qに続き営業赤字となりましたが、法人税の戻し入れがあったため、最終損益は大幅減益ながら黒字を維持しました。
ただし、今3Qはリストラ費用6.64億ドルを計上しており、これがなければ営業損益は黒字でした(売上総利益率42.6%)。今2Qのリストラ費用は0.87億ドルで営業損失7.00億ドル(売上総利益率36.5%)だったので、今3Qの業績の中身は前年同期よりは悪化したものの、今2Qより改善したと言えます。会社側は今4Qにも今3Qと同程度のリストラ費用を計上する見込みです。
表1 インテルの業績
2.セグメント別動向:全セグメントで業績が悪化
1)クライアント・コンピューティング
セグメント別に見ると、今3Qは全セグメントの業績が悪化しました。クライアント・コンピューティング(パソコン用CPU、GPUなど)は、デスクトップが昨年からの新製品投入の効果がようやく出てきたため売上高32.22億ドル(同3.3%増)と前年比、今2Q比とも増収になりました。ただし、競合するAMDに対して競争力のある新製品の投入が遅れているノートブックは売上高44.10億ドル(同25.8%減)、今2Q比でも減収となりました。デスクトップ、ノートブックともに、顧客のパソコンメーカーが在庫調整を行っていることが響きました。この結果、このセグメントの営業利益は16.55億ドル(同53.9%減)と大幅減益となりました。
2)データセンター&AI
クライアント・コンピューティングと並ぶ重要部門であるデータセンター&AI(サーバー用、データセンター用CPUなど)は、売上高42.09億ドル(同27.2%減)、営業利益0.17億ドル(同99.3%減)と大幅減収減益となりました。今2Qから大手顧客の一部が上海ロックダウンや景気減速に対応してサーバー用CPUの在庫調整を行ったことが響きました。
また、インテルのサーバー用CPU「Xeon」シリーズが競合するAMDの「Epyc」シリーズ(TSMC7ナノラインで生産)に対して競争力が低いこと、インテルにとって現在最先端の10ナノラインの生産能力が需要に対して十分でないことも業績悪化の要因と思われます。
3)ネットワーク&エッジ
ネットワーク&エッジ(5G、イーサネット、エッジ製品、ネットワーク制御用プロセッサー「Xeon D」など)は、売上高22.66億ドル(同14.1%増)、営業利益0.75億ドル(同85.3%減)となりました。この分野はインテルは得意でなく、5G向け、イーサネット向けなどの増収が続いているものの、在庫評価損や設備投資負担のために大幅減益となりました。
4)インテル・ファウンドリ・サービス
今3Qは売上高1.71億ドル(前年比1.7%減)、営業損失1.03億ドル(前年同期は0.44億ドルの赤字)となりました。
インテルは現在、アメリカ・アリゾナ州とオハイオ州にインテルにとって最先端の大型工場を建設中です。アリゾナ工場では総額200億ドルを投じて2つの半導体工場を建設します。「Intel 20A」と呼ばれる5ナノ相当のプロセスラインを含む生産ラインを構築する計画です。2021年9月に着工しており、2024年稼働開始の予定です。
また、オハイオ工場は初期投資200億ドルで、2つの先端半導体工場を建設します。2022年9月着工、2025年稼働開始の計画です。この2つの工場を含む最大8つの半導体工場を同じ敷地内に建設する計画です。
5)その他
これらの新工場には、インテル製品の生産工場だけでなく、インテル・ファウンドリ・サービス(インテルの新規事業である半導体受託生産事業)の工場も含まれると思われます。このセグメントの新工場建設費用は、その他のセグメントに含まれていると思われますが、その結果、その他のセグメントは大きな営業赤字が続いています。今3Qの営業赤字は15.83億ドルでしたが、この営業赤字が全社業績を圧迫しています。
なお、自動運転システムのモービルアイ(Mobileye)は、2022年10月26日付けでナスダックに上場しました。そのため、今4Qからセグメントから外れると思われます。
表2 インテルのセグメント別業績