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債券運用では何が大切か~東電債の教訓に学ぶ~
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

債券運用では何が大切か~東電債の教訓に学ぶ~

2011/6/3
楽天証券経済研究所客員研究員として活躍する経済評論家・山崎元による「ホンネの投資教室」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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問題山積の東京電力債

東京電力の福島第一原子力発電所で事故が起こり、東京電力の債券が注目を集めている。事故の発生以来、格付会社による東電債の格付引き下げの動きが続いている。こうした中、格付を基準に投資対象債券を決めていた運用資金の多くが、東電債の扱いに苦慮することになった。

彼らが直面したのは、たとえば以下のような問題だ。

まず、保有する債券の満期を待たずに途中売却することそのものが「想定外」であった資金があちこちにあった。

また、保有する債券の一部を途中で売却した場合に、残りの債券を時価評価する必要に迫られるので、東電債を売りに出すことができずにいた資金もある。

ちなみに、主な格付会社の格付を見ると、東電債は、震災前、外資系ではS&PがAA-、Moody’sがAa2、国内系では、R&IがAA+、JCRに至ってはAAAの高評価を得ていた債券だった。

これが、3月11日の震災発生以後時間をおきながら(決して素早くはなく!)徐々に変化して、5月末時点では、S&PでBB+(一般に投資適格未満とされる)、Moody’sではBaa3、R&IはA、JCRはA+へと下方修正された。

資金によっては、AA-以上を投資適格と定めている場合もあるし、一般に投資適格とされるBBB-を割り込んだ場合には投資対象から外すルールになっていることもある。

しかし、いずれにせよ格付を基準に保有債券の売却を決定する資金では、同様のルールを設けている他の多くの資金が同時に東電債を売る意向を持つことになる一方で、買い手はごくわずかなので、売却が難しい状況に陥った。

取引が薄いから、どの程度正確な実態が表れているかという問題はあるが、東電債の同一年限の国債に対する上乗せ利回り(スプレッド)は、震災前の0.1~0.2%といった水準から、5月末には3%強まで拡大した。これは、満期まで10年近く残っている債券の場合、2割を大きく上回る価格の値下がりを意味し、実現損の計上を嫌う資金の場合、東電債の売却が一層難しいものとなった。

「格付が下がっても将来のデフォルトはあるまい」との希望的観測の下に東電債を保有し続けることが可能ではあっても、現状は、「絶対安心!」とはとても言えそうにない不確実性の下にある。

東電債は、現在、日本の社債市場で最大の銘柄であり、4兆数千億円の発行残高があって、これを誰かが保有している。投資家の悩みは深い。

投資家の教訓

東電債のケースを参考に、債券運用にあたって投資家が留意すべきポイントを挙げると以下の通りだ。

債券投資で大切なこと

  1. 運用に「絶対(大丈夫)」はないと覚悟する。
  2. 横並びの判断の危険性を認識して対策を考える。
  3. 運用は「時価評価」が絶対の条件。
  4. 部分的な売却を躊躇しない。
  5. 徹底的な分散投資以上に有効な信用リスク対策はないと知る。

簡単に補足しよう。

先ず、AAAやAAの格付を持っていても、短期間で信用リスク面の評価が悪化することがあるのだから、「絶対に大丈夫」を期待して運用を行ってはならない。これは、債券投資に限らない原則だ。

次に、他人と同じ売買のトリガー(引き金)を持つと、同方向の売買が殺到して、売買が成立しなくなったり、価格が極端に動いたりする。仮に格付を参考にするとしても、他の資金と異なる条件(たとえば、BBB-未満ではなく、BBB+を割り込んだら原則として売却する、など)を設定するほうがいい。

また、債券運用の場合、満期まで持ちきることを方針として、時価評価の適用を逃れようとするケースがあるが、これは、非合理的な行動や行動の遅れを招く諸悪の根源と言ってもいい。もともと時価評価をしていれば、値下がりしてからの売却を「損出し」として躊躇する必要もないし、時価評価を避けるために「満期保有」でやせ我慢をする必要もない。

はっきり言って、時価評価を避けようとする投資家には、他人の資金を運用する資格などない。また、自分のお金を運用するとしても、現状認識を避けることは少しもプラスにならない。

また、実際の運用を行うに当たって、保有するポジションを一気に処分するか否かと考えるのではなく、柔軟に部分的に変化させることが重要だ。機関投資家の場合、部分的に売却すると、その債券の残りのポジションについて「満期保有目的ではない」として時価評価を適用すべしとする会計士の意見が制約になって、売却ができないケースがあるが、これは、大いに不都合だ。

そもそもすべてを時価評価することが望ましいのだが、これを適用しない場合、大きなポジションと小さなポジションでは、リスクに与える影響が大きく異なるのだから、多額と少額の保有は、投資に関する判断が異なっておかしくない。

これは、いわば二重の誤りといえそうな状況だが、投資行動にあって無用な(非合理的な)縛りを課そうとする会計士は、その存在自体が有害だ。

ところで、東京電力のケースにまさに表れているように、個々の債券の信用リスクを判断することは、素人投資家はもちろん、プロの投資家にとっても難しい。そして、今回、格付会社の格付がすべて東電の状況悪化の後追いになったことから分かるように、格付会社も投資に十分な信用リスク判断がタイムリーにできているわけではない。加えて、格付会社は、発行体から格付手数料をもらうというビジネスモデルの根本的欠陥があり(日系の格付会社の方が東電債により甘いのは、一部にはこの事情によるものだろう)、そもそも格付を信用し、格付に依存して投資を行うこと自体が大きな問題を含んでいる。

それでは、なぜ、プロの投資家は信用リスクのある債券に投資できるのかを考えると、彼らが数十、数百の銘柄に分散投資を行うことができるからだということに思い至る。決して、彼らに完全な信用リスク判断のノウハウがあるから投資できているのではない。

こうした諸々の要因を考慮すると、大規模な分散投資が不可能な個人投資家が個別の社債銘柄に投資することには、大きな無理があるのだと考えざるを得ない。

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