大きく円安が進んだ2022年

 2022年のマーケットを語る上でインパクトが大きかったことといえば、やはり「急速な円安の進行」だったと思います。

 年初に115円近辺だったドル/円レートは一時150円を突破、足元でも140円近辺まで円安が進んでいます。

 ここまで円安が進むと、米ドル預金を所有している方は多額の為替差益を得ているケースが多いのではないでしょうか? また、「こんな場合はどうなの?」と疑問に持たれている方も少なくないでしょう。

 そこで今回は、外貨預金に焦点を絞り、どのようなケースでどのような税金がかかるか、そして知っておきたい節税テクニックをご紹介したいと思います。

 なお、本コラムの記述は国内の金融機関で外貨預金を保有しているケースを想定しております。

 海外の金融機関で外貨預金を保有している場合は、これとは異なる取り扱いになりますのでご注意ください。

為替差益はどのように課税されるの?

 米ドルの外貨預金を保有していて、円安が進んだため円に変えた場合、その時点で為替差益が認識されます。

 例えば1ドル=110円の時に1万ドルの外貨預金を預け入れ、1ドル=140円の時にこれを円転した場合、(140円-110円)×1万ドル=30万円が為替差益として課税の対象となります。

 この為替差益は、総合課税の雑所得に分類され、所得税・住民税の課税対象となりますから、確定申告が必要となります。

 ただし、会社員の方で、為替差益を含めた給与所得以外の所得が20万円以下の場合など、所得税の確定申告が不要となるケースもあります。

外貨預金の利息の税金は?

 外貨預金にかかる利益は、為替差益と利息です。では、外貨預金の利息の税金はどのような扱いになっているのでしょうか。

 外貨預金の利息は、源泉分離課税、つまり天引きとなります。利息を受け取るとき、所得税と住民税合わせて20.315%の税金を差し引かれ、課税は完了となります。

 したがって、外貨預金の利息が預金口座に入ってきても、特段何もする必要はありません。

 なお、利息を受け取った後に円安が進行し、その後に利息を円に変えた場合は為替差益を認識する必要があります。

米ドルのまま預けっぱなしなんだけど…

 こんなケースはどうなるでしょうか。

「米ドルの外貨預金を保有しています。円安が進行しましたが、円に変えることなくそのまま外貨預金のままにしています。円安によって含み益が生じている状態ですが、税金はかかるのでしょうか?」

 回答は「税金はかからない」です。

 為替差益は、米ドルで保有していた資産を円など他の通貨に替えた場合、もしくは他の資産に替えた場合(例えば米ドル預金を使って米国の不動産を購入した場合)など、利益が実現した場合に発生します。

 外貨預金のまま保有を続けていて、円安により含み益が膨らんだとしても、その利益は実現していませんので課税はされません。

要注目!為替差益と○○○○の損失を損益通算して節税できる

 為替差益は総合課税の雑所得に分類されます。したがって、総合課税の雑所得に分類される損失があれば損益通算ができます。

 例えば株式や投資信託、債券の売却損は譲渡所得なので異なる分類ですから損益通算できません。

 また、先物・オプション取引、FX、CFDといった取引で生じた損失は、分離課税の雑所得に分類されるので、こちらも為替差益と損益通算はできません。

 では、為替差益と損益通算できるのはどんな損失なのでしょうか? それは「暗号資産(仮想通貨)」にかかる損失です。

 実は、暗号資産の売却損益は総合課税の雑所得に分類され、外貨預金の為替差損益と同じグループなのです。同一グループ内ですから利益と損失を損益通算し、ネットすることができます。

 為替レートが円安になったのと対照的に、2022年は暗号資産の価格が大きく下落しました。中には多額の損失を被ったり、含み損を抱えている方も多いのではないでしょうか。

 すでに確定した暗号資産にかかる損失はもちろん為替差益と損益通算できますし、もし年内に実現した為替差益が多額で、その一方暗号資産の含み損がある場合は、年内に売却して損失を確定させれば損益通算をすることができます。

 もし為替差益と暗号資産の損失を損益通算したいのであれば、確定申告が必要ですから、忘れずに行うようにしましょう。