W杯は、かつては西側、今は非西側で回っている

 サッカー発祥の地は「英国」です。そしてその英国は、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドで出場しています。

 四つの地域のサッカー協会はそれぞれ個別に活動しており、FIFAへの加盟も英国としてではなく、個別に加盟しています。(カタール大会でヨーロッパ大陸の予選を通過したのはイングランド、ウェールズの二つ)。

 また、1930年の第1回(ウルグアイ大会)から2018年の前回大会(ロシア大会)までの21回の大会で(1942年と1946年は第二次世界大戦の影響で中止)、3位以内に入った回数が多いのは欧州の国々です(45回、南米17回、北米1回)。

 開催回数が多いのも欧州の国々です(11回、南米7回、北米1回、アジア2回、アフリカ1回)。

 92年間のW杯の歴史を振り返れば、「W杯と言えば欧州」と言えるでしょう。しかし、中国が資金拠出で突出した存在感を示しているとおり、2022年のカタール大会の「欧州色」は、従来よりも強くはありません。

図:W杯のパートナー企業、スポンサー企業数の推移(国別) 単位:社

出所:FIFAなどの資料をもとに筆者作成

 上図は、1986年のメキシコ大会以降の、パートナー企業、スポンサー企業の数の推移(国別)です。

 1990年のイタリア大会、1994年のアメリカ大会、1998年のフランス大会、2002年の日韓大会、2006年のドイツ大会など、1990年代から2000年代前半の大会では、積極的に欧州の企業は資金を拠出していました。日本企業も同様です。

 この間のパートナー企業、スポンサー企業を務めた具体的な企業名(当時の名前含む)は、アルファ・ロメオ(イタリアの自動車メーカー)、オペル(ドイツの自動車メーカー)、コンチネンタル(ドイツのタイヤメーカー)、フィリップス(オランダの電気製品メーカー)、キヤノン、富士フイルム、JVC(日本の電子部品、電気機器会メーカー)などです。(ソニーは2010年の南アフリカ大会、2014年のブラジル大会、セイコーは1982年のスペイン大会、1986年のメキシコ大会でパートナー企業もしくはスポンサー企業を務めた)

 パートナー企業、スポンサー企業で「欧州」が目立っていたわけですが、2014年のブラジル大会あたりから、中国企業の参入が目立ち始め、様子が変わります。

 vivo(スマホメーカー)、万達集団(金融、不動産などの複合企業)、蒙牛乳業(乳製品メーカー)、ハイセンス(電気機器メーカー)、英利(太陽電池メーカー)などが名乗りを上げたのです。

 中国企業の参入、そして今大会ではByju's(インドのオンライン学習関連企業)などの参入もあり、もはや「欧州」の影響度は低下傾向にあると言わざるを得ません。W杯はどんどんと「非西側化している」と言えるでしょう。

 それは非西側の影響力が強まり、相対的に西側の影響力が低下していることを意味します。両者の間には「分断」があります。