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株式ポートフォリオの銘柄数について
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

株式ポートフォリオの銘柄数について

2011/2/18
楽天証券経済研究所客員研究員として活躍する経済評論家・山崎元による「ホンネの投資教室」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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株式ポートフォリオの運用について、最初に二つほど簡単な問題を考えてみて欲しい。以下の文章(A)、(B)の内容は、運用として正しいか?

  • (A) 100以上も銘柄を持つとほとんどインデックス運用と同じだ。
  • (B) 運用資産額は同じでも、運用期間が長くなると銘柄数は増えるのが自然だ。

読者のご見解はいかがだろうか。

銘柄数が多くてもアクティブ運用は可能

文章(A)は、運用会社ではさすがに少ないかも知れないが、証券マンやベテランの投資家でも、同様のことを言う方は少なくない。しかし、これは、明らかな間違いだ。

たとえば、日経平均は225銘柄のポートフォリオだ。2010年の日経平均の変化率は-3.01%だが、TOPIXの変化率は-0.97%だった。仮に、日経平均がTOPIXのインデックス・ファンドであれば、顧客からも大クレームが来るだろうし、ファンドマネジャーはクビだろう(配当の影響は除外した大まかな比較だが)。

年間2%程度のちがいは誤差の範囲内だと強弁する人でも、2009年の両者を比較すると大きな差を認めざるを得ないだろう。TOPIXの5.63%上昇に対して、日経平均は19.04%も上昇している。これだけ差があれば文句はあるまい。

日経平均の構成銘柄は、日本の大手企業なので、TOPIXとそう大きくずれているわけではないが、銘柄のウェイトの付け方がTOPIXと大きく異なる。プロが運用するような大きな金額のポートフォリオになると、銘柄の有り・無しの選択もさることながら、どの銘柄にどのようなウェイト付けをしているかが重要な要素になる。日経平均はおおむね50円額面換算の千株単位で銘柄を保有した場合の株価のウェイトになるので、値嵩(ねがさ)株のウェイトが高い、かなり「癖のある」ポートフォリオだ。

それにしても、100銘柄程度でも「ほとんどインデックス運用と変わらない」としたり顔で言う人が多いのはなぜか。たぶん、分散投資を説明する時に、古い投資の教科書では、銘柄間の相関関係が独立な(リターンの相関係数がゼロ)のケースを前提として、20銘柄もあれば十分リスク分散されているという計算例(とグラフ)を見せることが多いので、これが記憶に残っているからではないか。

しかし、現実の株式は、相関係数がゼロというほど都合良くできていない。程度に差はあっても一緒に動くことが多く、プロのポートフォリオとして十分なリスク分散をするには20銘柄では不十分だ。投信でも年金でも(特に年金では)、プロのポートフォリオは、顧客が想定するポートフォリオの性質から乖離しない運用を心がける必要があるし、自分が取りたいリスク以外のリスクはなるべく取らないようにコントロールする必要があるし、ライバルとの相対的なリスクにも注意を払わなければならない。20銘柄や30銘柄ではとても十分とは言えない。

投信の場合でいうと、顧客はせっかく「小口の資金でもできる分散投資」のメリットを購入するのだから、少ない銘柄数で「これがアクティブ運用だ!」と開き直るのは、純粋に運用の問題としては、リスクの計測を知らないか、横着であるかのいずれかだろう。たとえば、「いい銘柄を30銘柄集めてポートフォリオを作りました」と言うファンドマネジャー(二昔くらい前はよくいた)は、「同じ位いい銘柄を100程度集めよ。仕事をサボるな!」と言われたら、反論のしようがないはずだ。

分散投資の意味が分かっていないファンドマネジャーだと、「30銘柄ならフォローできるが、100銘柄になるとフォローできない」と答えるかも知れないが、そもそも、完全なフォローなどできないから分散投資をするのだ(!)。30銘柄で十分だ、というのは自信の持ちすぎだろう。

この程度に投資銘柄数を絞った投資信託もあるが、これは、「私は優秀なファンドマネジャーです」という幼稚なはったりであるか、投資銘柄が顧客から見えやすいことに重きを置いた、銘柄を研究する投資クラブを投信化したようなビジネスモデルなのだろう。純粋に効率的な資産形成のために買う商品としてはお勧めできない。

銘柄数は時間と共に増えるのが自然

文章(B)は、運用の原理から考えて正しい。

たとえば、投資銘柄のうち、ある銘柄が値上がりして、ポートフォリオの中に占めるウェイトが上昇したとしよう。この銘柄がポートフォリオに与えるリスクは拡大するし、経済状況が変わっていないのに株価だけが上がったのなら、投資銘柄としての魅力度は下落しているはずだ。つまり、ポートフォリオがこの銘柄に対して期待できる貢献が低下するし、悪影響は増加する。しかし、通常、それらは少しずつ起こるものであって、「素晴らしくいい投資銘柄」がいきなり「ひどく悪い投資銘柄」になる訳ではない。劣化の過程では「まあまあいい投資銘柄」くらいの時期があるはずだし、現実にそういう場合は多い。

この場合、ポートフォリオのハンドリングとして正解になるのは、この銘柄を部分的に売却して、別のいい銘柄をポートフォリオに加えることだ。「まあまあいい銘柄」の段階で、持ち株を全て売ってしまうのは、ハッキリ言って下手なファンドマネジャーだ。

売買にはコストがかかるので、いったん保有した銘柄は、未保有の銘柄と、投資の魅力度(厳密には期待リターンとポートフォリオに与えるリスクの影響を総合評価する)が同じなら、保有し続けるのが正解だ。

一定の基準で評価した割安株の期待リターンを高くする、などの条件の下で、過去のデータを用いて仮想ポートフォリオを運用するバックテストを行う場合、売買にコストがかかるという現実的な前提を組み込むと、運用期間の経過と共に銘柄数が増える傾向が顕著である。

かくして、投資銘柄数は、運用期間の長期化と共に増えていくのが自然な動きだ。もちろん、せっかく増えた銘柄数を無理に減らす必要はない。プロのファンドマネジャーは、増えた銘柄数にあっても、的確に望ましいバランスをとり続けることができるようでなければならない。

個人投資家の皆様には、投信を評価したり選択したりする際のご参考にしていただけるとありがたい。

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