米金融引き締め減速観測で、日米株価ともに上昇基調へ!
直近1カ月(10月21日~11月18日)の日経平均株価は3.8%の上昇となりました。10月3日の2万5,621円をボトムに、上昇トレンドが継続しました。期間中の高値は11月11日の2万8,329円で、2万8,000円台を9月14日以来、約2カ月ぶりに回復する形になりました。
高値に達した後は2万8,000円レベルを挟んだもみ合い商状となっています。なお、期間中のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は8.6%の上昇、ハイテク株主体のナスダック総合指数は2.6%の上昇となり、日米ともに上昇基調となりました。
堅調な株価推移の背景となったのは、米紙の報道をきっかけに12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げ幅が縮小されるとの観測が台頭し、米国の金融引き締めペース鈍化への期待が高まったことです。
その後、米国の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)が11月1~2日に開催したFOMCで、4会合連続での0.75%の利上げを決定した一方、声明文では12月以降の利上げペース減速を示唆する文章を盛り込みました。
その後発表された米雇用統計の内容や、消費者物価指数が市場想定よりも下振れしたことなども、12月からの利上げペース鈍化をより意識させる結果となっています。株価上昇局面ではFRB高官によるタカ派的な発言があったり、米主要ハイテク企業の決算が重しになったりする場面もありましたが、期間中を通して、過度な金融引き締め懸念が後退する状況となったようです。
また、折に触れて、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う中国の「ゼロコロナ政策」が緩和に向かうとの期待感も高まりました。なお、11月8日に投開票が行われた米国の中間選挙では、想定以上にバイデン大統領の与党・民主党が善戦する状況となりましたが、市場に与えた影響は軽微にとどまりました。
金融引き締め緩和期待を背景に、米国10年債利回りが4.2%台から一時は3.6%台の水準に低下したことで、グロース株への買い安心感が強まりました。SHIFT(3697)、Sansan(4443)、マネーフォワード(3994)、ラクス(3923)など、中小型グロース株の代表銘柄が30%を超える上昇率となっています。
また、グロース株物色の流れから、レーザーテック(6920)やアドバンテスト(6857)など主力の半導体関連でも強い動きが目立ちました。半面、コロナ禍からの経済再開(リオープニング)関連として物色されてきた高島屋(8233)、三越伊勢丹ホールディングス(3099)、J・フロントリテイリング(3086)など百貨店株は総じてさえない動きになりました。
ほか、期間中には7-9月期の決算発表が本格化したことで、主に決算内容を手掛かりとした個別物色も活発化しました。アシックス(7936)、イビデン(4062)、フジクラ(5803)、キーエンス(6861)、川崎重工業(7012)などは決算が好感されて大きく上昇しました。
半面、レノバ(9519)、テルモ(4543)、オリンパス(7733)、DOWAホールディングス(5714)、TOYOTIRE(5105)などは決算発表後に売りが優勢となりました。
2023年相場への期待反映した年末の動きに注目
これから1カ月間の株式市場で最も注目されるのは12月のFOMCとなるでしょう。12月13~14日に開催されます。FOMCに向けては利上げ幅の縮小を織り込みに行く動きが期待されるので、株式市場も底堅い展開になると見込まれます。
現状の市場の見方としては、12月に0.5%の利上げの後、2023年1-3月にかけて、0.5%、0.25%の利上げが続くと織り込んでいるとみられます。12月FOMCにおいては、こうした方向性が改めて確認されるとみられるので、その後もさらに買い安心感が強まる可能性はあります。
ただ、金融政策への不安感が後退する一方で、利上げによる景気悪化の顕在化をネガティブ視する局面も徐々に訪れそうです。その意味では、11月後半から本格化する米国の年末商戦がリスク要因となる可能性があります。米国株は、景気の悪化を嫌気する動きと金融引き締め緩和を好感する動きの綱引き状態になりそうです。
日本は、2023年にかけての経済成長率の悪化が欧米各国ほどではないとみられているため、日本株は相対的に世界的な金融引き締めの緩和をポジティブに反映しやすいと考えられます。新年度に入ってからの海外投資家の日本株への資金シフト期待を先回りするような動きも出てくる余地があります。
急激な円安の一服は一部セクターを中心に上値を抑える要因となるものの、円安のピークアウトは為替差益を狙った海外投資家の日本株買いを促すものともなります。ただし、食料品価格、エネルギー価格の今後の一段の上昇が、国内の個人消費に及ぼすマイナス影響などは不透明です。
一方、来年の春闘で基本給を底上げするベースアップが本格化すれば、好材料となります。これは、賃金が一向に上がらなかった日本の変化として、株価に大きなインパクトを与える可能性があるでしょう。
日本株にとって2023年は、世界的なインフレ懸念が後退する中、景気悪化のダメージが相対的に小さい状況でもあることから、株高への期待は高いとみられます。これから年末にかけて、2023年相場への期待感が反映されるような展開を想定します。
そうした中で、世界景気の影響を受けやすい景気敏感株よりも、内需系のグロース株などに買い安心感が強まると考えられます。現在の企業収益の重しとなっている部材調達不足やエネルギー価格高騰の問題なども徐々に解消されていくとみられます。
円高への反転はマイナス材料となる自動車関連株に関しても、部材不足の解消による収益向上の余地は大きいといえます。なお、年末にかけては節税対策の損出し売り圧力などが強まると考えられるため、年間パフォーマンスが低い銘柄には、需給面でのマイナス要因を考慮する必要があるでしょう。