残ったNISA枠で駆け込み投資対象にしたい5銘柄

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座の非課税投資枠は翌年以降に繰り越すことはできず、2022年分の残ったNISA枠を使い切るには、国内株式の場合は12月28日までに買い付けなければなりません。

 現状では大半の投資枠をすでに使ってしまっているケースも多いとみられ、この場合、少ない投資金額で買える低位株などが、年末にかけてNISA枠で買える銘柄となります。同様の投資行動を行う個人投資家も多いと考えられます。

 NISA投資の特徴としては、株式や投資信託などの譲渡所得に対するキャピタルゲイン課税や配当などの収益にかかるインカムゲイン課税が発生しないこと、NISA以外の口座で発生した利益や損失と損益通算ができないことが挙げられます。

 投資銘柄を選定する上では、NISA制度は個人投資家の長期投資を促す政策であることからも、長期的な収益成長、それに伴う株価上昇が期待できる銘柄であることが重要になってきます。

 加えて、インカムゲイン課税が発生しないことで、配当利回りの高さに比重を置くことがより妙味となるでしょう。さらに、損益通算ができないことから、キャピタルロス(値下がり)を回避する必要性も高いといえます。

 その意味では、短期的に株価が大きく上昇していない銘柄を選定することが優位になると考えられます。なお、年内の低パフォーマンス銘柄は、短期的に損出し売りの対象となる公算もありますが、NISA投資はあくまで長期投資と考え、出遅れ銘柄の方に関心を高めたいところです。

 今回取り上げる5銘柄は、時価総額が一定以上ある高配当利回り銘柄の中で、足元連続2ケタ増益が続くなど安定成長期待の高いもの、今年に入って株価の上昇が限定的なもの、小さい投資金額で買えるものとしています。

(表)NISA枠での駆け込み投資対象銘柄

コード 銘柄名 配当利回り(%) 11月18日終値(円) 時価総額 (億円) 株価騰落率(%) 今期営業 増益率(%)
9381 エーアイテイー 5.67 1,410.0 337 ▲3.49 37.7
7593 VTホールディングス 4.67 492.0 587 5.35 22.6
6507 シンフォニアテクノロジー 4.14 1,451.0 432 10.59 26.4
8151 東陽テクニカ 3.83 1,357.0 354 21.59 11.5
6871 日本マイクロニクス 3.74 1,471.0 589 ▲20.66 14.0
(注)株価騰落率は昨年末比                        
(注)決算期はエーアイテイーが2月、東陽テクニカが9月、日本マイクロが12月、他は3月                        
(注)配当利回りの高い順にランキング

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが3.5%以上(11月18日終値)
  2. 年初来の株価上昇率が25%未満(11月18日終値)
  3. 時価総額が300億円以上
  4. 今期予想を含めて営業利益が3期以上連続で2ケタ増益
  5. 最低購入額が20万円以下

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 エーアイテイー(9381・東証プライム)

 中国や東南アジアに特化した総合物流企業です。海上輸送が主力で、2021年度のコンテナ取扱量は28万585TEU(長さ20フィートのコンテナ数)となっています。輸出入通関サービス(2021年度実績14万5,931件)、航空輸送なども手掛けています。

 2018年には日立物流と資本業務提携を締結、2019年には日新運輸を完全子会社化しています。DX推進による通関業務のさらなる効率化推進、中国での保税物流サービス拡充などに注力しています。

 2022年6月中間決算の営業利益は27.5億円で前年同期比79.6%増となり、第1四半期決算時に上方修正した水準である23.5億円を上回る着地になっています。海上運賃の上昇効果が大幅な増益と上振れの要因となった格好です。

 通期予想は、運賃水準の低下の可能性などから、第1四半期決算時に上方修正した水準の49.3億円、前期比37.7%増を据え置いています。年間配当計画については、6月中間決算時に従来の61円から80円に引き上げると発表しています。

 6月中間期は上海ロックダウン(都市封鎖)の影響もあって、取扱コンテナ本数は前年同期を下回る水準となっています。来年度にかけては、海上運賃の下落が影響する可能性もありますが、販売量は着実な回復が期待できます。

 円安を背景に、加工食品の輸出拡大などといった施策も奏功するとみられます。年初来の安値水準にまで調整している現状の株価水準は、押し目買いの好機と捉えられます。

2 VTホールディングス(7593・東証プライム)

 後発組の自動車ディーラーです。ホンダベルノ東海として設立し、その後は日産系販売会社を複数買収、現在は日産とホンダ車の取り扱いが中心となっています。イギリスやオーストラリアなど海外にも展開しています。

 成長戦略と位置付けている積極的なM&A(買収や合併)で事業領域を拡充しており、マンションや戸建て分譲などの住宅関連事業も柱の一つとなっています。中古車輸出、レンタカーを手掛けるトラスト(3347)を子会社に抱えます。

 2022年9月中間決算の営業利益は58.5億円で前年同期比34.7%増となりました。期初予想は40億円でしたが、その後2度の上方修正を行っていました。販売価格の上昇に加えて、海外新車販売などが順調に推移、住宅関連事業でも新規連結化効果が寄与する形になっています。

 通期予想は125億円で前期比22.6%増の見通し、第1四半期に上方修正した数値110億円から上方修正しています。M&A実施に伴う負ののれん発生益の計上を織り込んでいます。年間配当金は前期比1円増配の23円を計画しています。

 中古車価格の上昇効果は今後一巡してくる可能性もありますが、今後は自動車生産の正常化、挽回生産の本格化などによって、新車販売が上向いていくものとみられます。会社側の業績計画は総じて弱めであり、ガイダンス発表時はネガティブに捉えられることもありますが、基本的に下振れリスクは乏しいといえるでしょう。

 積極的なM&Aは今後も継続されるとみられ、引き続き株価のカタリスト(相場を動かすきっかけ)になっていく公算も大きいでしょう。