2023年に向けたリスク要因を警戒しておく

 上述した通り、2023年の米国株は2019年に倣って回復基調をたどると期待しています。ただ、相場の戻り基調が「一本調子」をたどるとは限りません。さまざまなリスクイベントが顕在化するたびに株価が変動する可能性があります。

 図表3は、2023年に向けて株価の押し下げ圧力につながりそうな潜在的リスクを一覧にしたものです。「インフレ金利リスク」、「地政学リスク」、「ワシントンリスク」、「チャイナ(中国)リスク」、「新興国の債務リスク」は、すでに市場参加者が多かれ少なかれ憂慮している「リスクシナリオ」ともいえるでしょう。

<図表3>市場が向き合う2023年の潜在的リスク要因

(出所)楽天証券経済研究所作成

 特に、「インフレ金利リスク」に関しては、市場が恐れている以上にスタグフレーション(景気停滞下でのインフレ加速)懸念が高まると、株価は変動を余儀なくされそうです。また、「地政学リスク」については、ウクライナ戦争でロシアが戦術核兵器を使用するような事態となれば、世界株式が急落に見舞われる可能性が想定されます。

「チャイナリスク」では、中国の経済活動の約5分の1を占めるとされる不動産部門の不況が長引くことが景気回復の足かせになる懸念があり、世界経済の重しとなる可能性があります。

 一方、10月に開催された共産党大会では習近平(シー・ジンピン)総書記が3期目入りを決めました。その「強権政治」は中国経済の活性化、改革開放、技術革新を抑制することが憂慮されており、台湾に対する武力行使を含めた圧力も憂慮されています。

 また、「新興国の債務危機」については、先進国金利とドルの上昇で外貨建て債務が膨張し、債務不履行に直面する新興国の通貨が急落。他新興国の通貨下落に波及するドミノ効果が不安視されています。

 上記した事象のどれもがメインシナリオとは思いませんが、2023年もリスク要因の行方を警戒すべき年となりそうです。

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