基本・楽観・悲観の3シナリオ

 以上、10月のテクニカルな買い動意と、これからまだまだ警戒的なファンダメンタルズの評価を踏まえて、基本・楽観・悲観の3シナリオを考えます。筆者は、この段階で、これら3シナリオを決め打ちするようなズバリ予想は「根拠レス」と考えます。FRB当局者にとっても、投資家にとっても、インフレと金利の高止まり具合、それによる景気の落ち込み具合について、誰も確信を持てない段階でしょう。筆者が考える無理なく適切なアプローチは、サイクルの各局面がどうつながっていくかを、指標や政策を確認しながら進むというものです。

基本シナリオ

 12月の0.5%利上げの確からしさが増し、2023年初頭にかけて、利上げ打ち止め感が醸成され、中長期金利が軟化すれば、株式相場は中間反騰に。しかし、2023年の半ばにかけて景気後退に伴う逆業績相場を経て、早ければ同年後半のどこか、順当には2024年にインフレ率が年率3%台を低下していく中で、金融緩和観測が浮上して金融相場の様相に。

楽観シナリオ

 10月からの「売られないから買う」地合いのまま、決算期、11月FOMCを過ぎ、雇用統計やCPIが幸い弱めで12月0.5%利上げへ進む流れの中、早期に中長期金利が3%台を低下し、中間反騰の様相が前倒しで進行。2023年もインフレ低下が思いのほか早く、景気悪化も底浅で、逆業績相場も2022年の底値を割れずに経過。政策金利の引き下げが観測される中、金融相場に移行。

悲観シナリオ

 インフレ沈静のメドが立たず、政策金利は一段高めた後も高止まったままで、景気後退も深いものになる重度のスタグフレーション。投資ファンド、金融機関、企業、新興国の破綻などクレジット・イベントもダメ押し。1970年代後半の「株式の死」のように、何年も株価は高値更新に至らない事態に。
 

 経済も株式市場も、インフレ沈静のメドはまだ見えず、景気悪化もこれからというところで、下降トレンドからの反転をメイン・シナリオにするだけの材料が出てくる段階ではありません。決算の中身も、株高にかまけて、予想より良かった、良いところもあるという視点より、この先の景気後退につながり得る兆しを見いだすことが肝要と心しています。

 一方で、相場の正念場ステージでは、いち早く強気を主張する「進取派」、相場が上がるところに追随する「焦燥派」が相まって、思わぬラリーになる6~8月のような展開も可能性としては「あり」です。その勇気が報われるような展開であれば良いとは願いますが、ファンダメンタルズの追い風を確認してから参入する筆者はまだまだ慎重です。

 リスク投資に果敢に挑む「進取派」もいれば、筆者のような「慎重派」もいて、それぞれに投資の仕方があります。重要なことは、焦燥など感情をいたずらにぶらすことなく、ご自身の投資スタイルに沿ったロジックをきちんと踏まえて取り組むこと、これが一貫して変わることのない筆者の推奨です。

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