【特別インタビュー】
ファンズ株式会社 代表取締役
藤田雄一郎さん

【前編】国債以上、配当株未満?「あ、この感じの利回り投資はアリかも」という話
【後編】「優待+利回り」だけど、株じゃない?預貯金とインデックス投資の「間」かも

 上場企業に年率1~2%程度の利回りで貸付投資できる「Funds」。2019年1月のサービス開始から3年半で募集したファンドは合計約240本。平均利回りは2.11%、平均予定運用期間は14カ月。これまで分配金の遅延発生はゼロ。過去の貸付投資先には、三菱UFJ銀行やサントリー、メルカリなど誰もが知っている有名上場企業も多数あります。

 優良企業にお金を貸すことで、銀行預金に比べて有利な利回りを得られるという商品性に、「ちょうどいい」と感じる人も多いのではないでしょうか? 

 そんな「Funds」のもう一つの魅力が、クーポン券の提供やイベント実施、ホテル宿泊などの「Funds優待」。過去には大阪王将の食事10%割引券、ぐるなびの「プレミアムミールキット」購入権など、株主優待制度のような優待特典のあるファンドもあるのです。

 優待でお得感を味わえて、しかも年率1~2%の利回りを得られるので、これまで優待株投資をしてきた人にも魅力的な商品です。しかも、株式や投資信託のように元本が変動することはありません。ある意味、預貯金とインデックス投資の「間」に位置するような新しい金融商品といえるかもしれません。

 会員登録、口座管理手数料や出金手数料などは全て無料。1円から投資が可能なので、今後1~2年間は使う予定のない少額の余裕資金を運用するのにぴったり。そんな「Funds」の投資対象や仕組みをファンズ株式会社代表取締役の藤田雄一郎さんに聞きました。

三菱UFJ銀行やメルカリも。優良企業がFundsを活用する理由!

――最近は個別の事業案件や非上場企業に出資や融資をするクラウドファンディングのサービスがたくさんあります。それらと「Funds」の違いは何ですか?

 貸付型クラウドファンディングの世界では、銀行でお金を借りるのが難しいような会社や事業に、利回り10~15%で出資や融資を行うサービスが主流です。銀行など既存の金融機関がカバーできない領域にお金を行き渡らせることも、新しい資産運用の形として意義のあることですが、その分、リスクも高くなります。

 私たちが作った「Funds」は、利回り自体は1~2%と決して高くはありませんが、お金を貸し付ける対象が上場企業中心。安心して投資できるという点をより重視した設計になっているかと思います。

――上場企業を中心に投資案件を絞る理由はどこにありますか?

 株式市場に上場している企業は東京証券取引所や証券会社の審査、監査法人の監査があり、ひとたび上場すれば、投資家の厳しい目にさらされます。上場企業としてのガバナンスや社会的責任、コンプライアンスを維持している会社だからこそ、私たちも、個人投資家の皆さまも安心感を持ってお金を供給できる、と思っています。

 私たちファンズ株式会社の社員の多くは銀行出身者や監査法人、投資銀行出身者。そのため、投資案件については、銀行が行う厳格な審査を踏襲した上で、その企業が将来得るキャッシュフローなどを重視して投資先を厳選しています。たとえ上場企業でも1割ぐらいは審査でお断りしているというのが現状です。

 投資上級者の方なら、ぜひご自分で決算書を確認してみてください。貸借対照表やキャッシュフロー計算書を見て、その会社にどれぐらいキャッシュがあって、毎年どれぐらい増えたり減ったりしているのか吟味してほしいですね。ご自分で決算書を読み込んでリスクを把握した上で、「Funds」の複数の案件に資金を分散投資すれば、さらに安心感は増すと思います。

――上場企業からすると銀行にお金を借りるほうが楽ではないですか? わざわざ「Funds」を利用する理由はどこにあるのでしょう。

 私たちも銀行さんがお金を貸さないような企業には基本、貸付投資は行いません。ただ、企業も銀行から借りきれない部分の資金を調達したいというニーズがあるため、私たちが銀行の補完金融的な役割を果たすことができます。

 実際、非上場企業であればベンチャーキャピタルなどからお金を調達することができますが、ひとたび上場企業になると、株式を新規発行するか、銀行など金融機関から融資を受けるかしか、資金調達しにくい面があるのも実情です。

――「Funds」で募集されている案件はどんな企業のものですか?

 不動産関連企業が多く、全体の約4割を占めます。その他、ユーグレナさんのような健康食品会社、楽天証券を通じて募集の取り扱いをさせていただく初案件となった家計簿アプリのマネーフォワードさんなど、成長性の高い新興企業が中心です。

 一方、ぐるなびさん、大阪王将のイートアンドホールディングスさんのように、新商品や新サービスを「優待」の形で提供することで、お客さまづくりのプラットフォームとして「Funds」を活用されている企業もあります。

 三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社である三菱UFJ銀行さんの場合、「Money Canvas(マネーキャンバス)」という、新たな資産運用の教育サービス立ち上げの際、その周知も兼ねて予定利回り1%、期間約11カ月、総額3億円のファンド募集をしました。人気が高く、すぐに売り切れましたね。

――三菱UFJ銀行といえば普段、私たちがお金を借りる側の金融機関。その会社にお金を貸せるなんておもしろいですね。

 仮に1億円募集して利息1%だと借入コストは年間100万円。「Funds」のお客さまは30代、40代で資産運用に興味のある方ですから、彼らに対してプロモーションできると考えれば、マーケティングコストとしては悪くないのではないでしょうか。

 このような一見小さいけど、実は重要なニーズをつなぐことで、優良企業に個人が年率1%でお金を貸せるという、これまでの金融の常識では考えにくい仕組みが作れたんです。

――株主優待制度と同じような優待がある「Funds」は株主優待ファンにとっても魅力的ですね! 

 企業に投資をすると、その企業のことを応援したくなったりしますよね。実際、「Funds」で化粧品会社のファンドに投資したら、優待としてもらった化粧品がとてもよかったので、その会社の株も買いました、という投資家の方もいらっしゃいました。

 このようにファンづくり、お客さまづくりを兼ねて、「Funds」を活用していただいている企業さまは増えています。単純に資金の調達コストとしてだけみると、銀行から融資を受けるのに比べると割高だけど、マーケティングコストと考えれば妥当性は十分あるということですよね。

 最近ではホテルに安く宿泊できたり、温泉旅館に泊まれたりするファンドもありました。まさに「お試し」です。投資家からすれば分配金収入を得ながら優待特典で生活を楽しめるし、企業側からすればお金を集めつつ、プロモーションもできる。両社にとって、「ひと粒で二度おいしい」、そんなサービスではないかと思います。