FRBはインフレを誤診したので、間違った薬を適用している!?

 米国の弁護士、エコノミストで1998年のLTCM危機の際に破綻処理を担当したジェームズ・リッカーズが、『How Far Could Stocks Fall?(株価はどこまで下がるのか?)』というコラムを書いている。

 皆が注目するFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げについて鋭い指摘をしているので、以下に抜粋したものを紹介しておく。

 今日の株式投資家にとっての本当の問題は、暴落がこれまでのところ悪いということではなく、それが始まったばかりかもしれないということだ。1929年から1932年にかけてのダウ・ジョーンズの80%以上の崩壊や、ドットコム・バブル後の2000年から2001年のナスダックの80%の崩壊に、より近い損失を見ているかもしれない。

 FRBが利上げとバランスシートの縮小を進めていたのは、2018年12月24日に株式市場が暴落し、2カ月半で20%下落した時だった。パウエルFRB議長はパニックに陥り、再び金融緩和に転じた。たぶん彼は再びそれをするだろう。しかし、当時と今の間には重要な違いがある。2018年にインフレはなかった。したがって、FRBはインフレについて実質的な懸念なしに緩和に軸足を移す余裕があったのである。2022年後半の現在は、明らかに余裕はない。

 FRBは経済の需要を減らすことによってインフレを粉砕しようとしている。彼らは、消費者が来るべきさらなるインフレを期待して購入している「ディマンドプル」インフレに焦点を当てているのだ。しかし、私たちが見ているインフレは「コストプッシュ」インフレと呼ばれている。これは需要側ではなく供給側から来ている。それは世界的なサプライチェーンの混乱とウクライナでの戦争という地政学リスクから来ている。

 FRBはこの病気を誤診したので、間違った薬を適用しているのだ。タイトなお金は供給ショックを解決しないのである。価格の上昇は続くだろう。しかし、タイトなお金は消費者を傷つけ、貯蓄を増やし、住宅ローン金利を引き上げ、とりわけ住宅市場を傷つける。

 ここで問題となるのは、パウエルの探求が経済と市場にどれほどのダメージを与えるかである。それが投資家にとって最大の課題だ。その答えは、パウエルが予想していたよりもはるかに大きなダメージを与えるだろう。歴史は、FRBがオーバーシュートすることを示唆している。「ソフトランディング」はないだろう。

出所:9月28日ゼロヘッジ 「株価はどこまで下がるのか?」 (ジェームス・リッカーズ)

 中央銀行は、自らインフレを引き起こし、今となってはそれを間違った認識で阻止することを望んでいる。