先週の株式市場は13日(火)の米国CPI(消費者物価指数)ショックで急落。日経平均株価は前週比647円安に沈みました。

 秋の連休に挟まれ、3営業日しか取引のない今週9月20日(火)から22日(木)は、21日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)を控え、波乱が続きそうです。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

先週:物価高と景気後退懸念で米国株は6月安値に接近! 

 今年に入って何度も繰り返された米国CPIショックが再び市場を襲いました。

 先週の日本株は、新型コロナウイルス対策の外国人入国制限の撤廃が報じられ、旅行関連株を中心に上昇機運でした。

 しかし、13日(火)夜発表の米国8月CPIが予想を上回り、前年同月比8.3%も上昇したことで、米国市場は全面安。ダウ工業株30種平均が今年最大の1,276ドル安を記録しました。

 翌14日(水)の日本株も急落し、物価高を抑えるための強硬な利上げに対する恐怖感が広がりました。

 変動の大きなエネルギーと食料品を除くコアCPIは、前年同月比6.3%上昇と前月の5.9%高から伸びが加速。

 いったん上がると下がりにくい家賃など、住居費の上昇が止まりません。

 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)はすでに3月から4度も利上げを行っています。にもかからず物価は下がらないどころか、まだ上がり続けている。

 それは今後も、FRBの強硬な利上げが続くことを意味します。

 一部には「FRBは意図的に株価を急落させて、景気や消費マインドを冷やさざるをえない」といった見解もあるほど。

 そして16日(金)には、世界最大級の航空輸送会社フェデックス(FDX)が景況悪化を理由に2023年5月期の利益見通しを撤回。株価が1日で20%も暴落しました。

 中国と欧州経済の落ち込みが原因のようですが、高止まりする物価高に続いて、今度は景気後退懸念が、先週の米国株に追撃を与えました。

 多くの機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週比4.7%安、ハイテク株が集まるナスダック総合指数は5.5%安と大幅下落。

 日本市場が祝日で休場だった19日(月)は上昇に転じました。様子見といったところでしょうが、すでに米国株は6月につけた年初来安値に接近しています。

 米国のCPIショックに翻弄(ほんろう)された1週間でしたが、日本株では、近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT-CTホールディングス(9726)が前週比23%高、エイチ・アイ・エス(9603)が16%高。

 インバウンド復活が期待される旅行関連株だけは大きく上昇しました。

 一方、物流関連のフェデックス株急落で、これまで日本株上昇のけん引役だった海運株は今週、売られる可能性が高そうです。

今週:FOMCで1%利上げも?22日の日銀会合が波乱要因

 今週最大のイベントは、何といっても、21日(水)終了の米国FOMCです。

 0.75%の利上げが大方の予想ですが、1%の超大幅利上げもあるのでは、という声も出ています。

 インフレ退治をやり遂げるまで利上げを続ける、と宣言しているジェローム・パウエルFRB議長が8月CPIの結果を受けて、さらに強硬な発言を行うのは必至の情勢です。

 これまで米国株はFOMC通過前後から、材料出尽くしと見越して反転上昇する傾向が続きました。

 しかし、今回もそうなるとは限りません。 

 翌22日(木)には、日本銀行の金融政策決定会合も開かれます。

 黒田東彦日銀総裁が、欧米とは逆行する量的金融緩和策を続けるのは規定路線。

 日米の金利差がさらに拡大し、ひょっとすると1ドル150円台まで急速な円安が進む可能性もあります。

 円安は原則、日本株にとって追い風ですが、海外ヘッジファンドが円売り、日本国債売りを加速させ、「悪い円安」という雰囲気が台頭すると株価もツレ安するかもしれません。

 2008年秋のリーマンショック以降、世界経済は各国中央銀行が金融緩和政策で市中にバラまいた資金を糧に成長を続けてきました。

 壮大な「中央銀行バブル」だったともいえます。

 しかし、インフレが進む状況では金融緩和はできません。

 今後も大幅利上げが続くと、株式やビットコインをはじめ、格付けの低い社債、REIT(リート:不動産投資信託)、住宅ローン市場などから、お金がどんどん流出します。

 借金をして無理な投資をしていた投資会社などが破たんし、金融危機的な状況が来るかもしれません。

 つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の普及もあって、いまや多くの日本人がS&P500など米国株価指数に連動するインデックスファンドに投資しています。

 S&P500はドルベースでは年初から2割前後も下落。

 しかし、2021年末の1ドル 115円台から現在の143円まで2割以上、ドル高円安が進行しているおかげで、日本の米国株投資家は打撃を受けていません。

 金融危機的な状況が起こると、通常、株安と同時に急速な円高が進みます。

 景気後退などが意識され、現在の世界的なドル高トレンドがどこかで反転するタイミングに注意が必要でしょう。