はじめに

今回のアンケート実施期間は11月26日(月)から11月28日(水)でした。

11月の国内株式市場を振り返ると、値動きがやや荒い印象となりました。

上旬から中旬にかけては、米大統領選挙後に不安が再燃した「財政の崖」問題をはじめ、欧州でも景気減速や大詰めを迎えたギリシャの財政支援に対する協議の行方、中国の新指導部体制を見守る動きなどを背景に、売りが先行する滑り出しとなりました。日経平均は4月以来の7日続落を見せ、約390円下落する場面もありました。

ただし、その後は14日に野田首相が衆院を解散すると表明したのがきっかけに、ガラリとムードが変わりました。翌15日の国内株市場は、政局に対する停滞や閉塞感が打破されるとの期待や、次期政権担当者と目される安倍自民党総裁が、デフレ脱却に向けて無制限の金融緩和と、政策金利のゼロもしくはマイナスについて言及し、為替が円安に反応したことで大きく上昇しました。

その後も為替の円安基調が続き、日経平均は9月19日の戻り高値(9,288円)も超え、節目の9,500円が視野に入る水準で終了しました。約7カ月ぶりの高値水準に達したほか、月間の上昇率も5.8%と今年2番目の大きさとなりました。今回のアンケートが実施されたのは、株価が堅調に推移した時期(11月26日~11月28日)になります。

そのため、今回のアンケート結果は、日経平均・為替の見通しがともに大幅な改善を示しており、相場地合いのムードが好転し始めていることが窺える結果となりました。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

  • Q1:11月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI=27.84
    (10月1日と1カ月後の日経平均の見通し DI=△33.05)
  • Q2:11月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI=19.16
    (10月1日と3カ月後の日経平均の見通し DI=△9.41)

日経平均の1カ月先の見通しDIと3カ月先の見通しDIは、それぞれプラスの27.84、19.16と、前回調査(それぞれ△33.05、△9.41)のマイナスからプラスに転じ、大幅に改善しました。1カ月先の見通しDIがプラスになるのは今年3月の調査以来、3カ月先の見通しでは6月調査以来です。

DIの数字からは、11月中旬以降の株価の急騰を受けて、投資家の心理が好転したことが読み取れます。実際に、前回調査と比較すると、「強気」と「弱気」の回答率がきれいに逆転した格好となっています(強気回答の急増と弱気回答の急減)。その一方で、依然として「中立」の回答率が最も多いという傾向に変化はありませんでした。

今回のアンケート調査期間の日経平均を見ると、9,500円を目前に上昇ペースが鈍化していました。株価の節目を迎えた目先の達成感に加え、相場の過熱感も意識されたようです。日経平均の月間上昇率が5.8%と急ピッチだったことや、テクニカル面でも、日経平均と25日移動平均線との乖離率がプラス4.5%となっており、過熱感のメドとされる5%に近い水準に迫っています。さらに、国内の追加金融緩和や選挙後の新政権など、「期待が先走り」する株価の上昇だったこともあり、まずは12月16日に行われる衆院選挙の結果を見極めようとする動きとなっています。

また、衆院選挙が行われる12月中旬以降は、米国FOMCや日銀金融政策決定会合、中国の中央経済工作会議、ギリシャ支援再開実施予定など、注目のイベントが集中しているため、積極的に動きにくい状況でもあります。

それまでは、為替市場の円安動向をバロメーターとして、米国議会で議論されている「財政の崖」問題や国内衆院選挙戦における政策論議の動向を中心に、短期的な思惑やムードに左右される展開が続くと思われます。

そのため、今回調査の「中立」の回答率の多さは、これまでのリスクを警戒した先行き不透明感を反映したというよりも、イベント通過まではひとまず様子見といった、相場に対する冷静な姿勢が反映されたものと思われます。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
11月26日 DI=46.11 DI=32.93 DI=37.87
10月1日 DI=△6.90 DI=△13.60 DI=0.63

為替のDIについてですが、米ドルは46.11(前回は△6.90)、ユーロは32.93(同△13.60)、豪ドルは37.87(同0.63)とすべての通貨において、円安見通しが強まる結果となりました。日経平均の見通しと異なり、為替相場については半数以上が円安見通しの回答となっています。

解散総選挙や追加金融緩和を先取りした期待感による、いわゆる「安倍トレード」の円安観測が今回の調査結果にも反映された格好と言えますが、現在の円安の背景を整理すると、外部(国外)のポジティブ要因と内部(国内)のネガティブ要因に分けられます。

外部要因については、米国の「財政の崖」問題に対する見通しや欧州情勢、中国など世界景気などが良好であれば、米ドルやユーロ、豪ドルが買われて円安要因となります。一方の国内要因には、「安倍トレード」が円安スイッチを入れたきっかけではありますが、そのほかにも、国内景気の後退懸念などによる円売りの一面もあります。先日発表された10月貿易赤字が5,490億円と同月としては過去最大の赤字を記録したほか、10-12月期も2期連続でマイナス成長となる可能性が高まっています。

つまり、最近の円安は、国内政局動向を起爆剤として、外部要因のリスク回避が後退によるポジティブな面と、国内要因の「景気の減速傾向=追加の金融緩和期待」という構図によるネガティブな面が合わさったことによるものと言えます。

当面は国内要因に大きな変化はなさそうですが、外部要因の変化により円安ペースが鈍化したり、逆に円高に向かう可能性があることにも留意した方が良さそうです。

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 35.33% 38.91% △ 3.58%
EU諸国 7.04% 8.58% △ 1.54%
ブラジル 26.50% 26.99% △ 0.49%
ロシア 9.28% 9.62% △ 0.34%
インド 34.73% 34.31% 0.42%
中国 9.28% 10.67% △ 1.39%
中東・北アフリカ 8.23% 6.28% 1.96%
東南アジア 53.89% 45.61% 8.29%
中南米 10.63% 11.72% △ 1.09%
東欧 4.34% 3.97% 0.37%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 76.65% 70.80% 3.84%
外国株式 24.85% 23.43% 1.42%
投資信託 30.69% 23.43% 7.26%
ETF 13.77% 12.97% 0.80%
FX(外国為替証拠金取引) 19.01% 18.41% 0.60%
国内債券 5.99% 10.25% △ 4.26%
海外債券 11.68% 11.09% 0.59%
18.56% 21.13% △ 2.57%
原油 5.69% 7.11% △ 1.42%
商品 3.44% 5.86% △ 2.41%
REIT 12.13% 13.81% △ 1.68%
CFD 2.69% 3.14% △ 0.44%

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。