はじめに

今回のアンケート実施期間は9月3日(月)から9月5日(水)でした。

株式市場の動きを振り返ると、7月終盤から、ドラギECB総裁の発言をきっかけに、金融政策当局による政策対応期待が高まり、株価が上昇に転じましたが、8月に入ってからもその流れを引き継ぐ格好となりました。

その後は夏休みやオリンピックの期間ということもあり、特段大きな材料が出なかったことや、実際に金融政策当局のイベントが予定されているのが8月末から9月以降のため、時間的な猶予があったことが期待感を持続させ、株価は戻り基調を強めました。米NYダウがリーマンショック後の高値を更新したほか、日経平均も東証1部の8月の平均売買代金が10年ぶりの少なさという薄商いの中で、5月8日以来となる9,200円台をつける場面も見られました。

ただし、8月終盤に差し掛かると、中国をはじめとする世界的な景気減速が懸念されたことや、月末以降のイベントがいよいよ近づくにつれて上昇幅を縮め、結局、月末の日経平均は8,839円となり、前月末比で144円(1.67%)の上昇にとどまりました。

季節は秋を迎えますが、今回のアンケート結果を見ても、日経平均の見通し、為替の見通しともにDIの悪化傾向が続いています。欧州問題の長期化による影響が実体経済や企業業績に影を落とし始めているほか、米大統領選挙や中国指導部の後退など政治的なイベントも多く控え、材料の多さが却って動きづらくさせる状況がしばらく続きそうです。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「実体経済の悪化と企業業績の下振れ警戒で、一層弱気に」

  • Q1:9月3日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △29.55
    (7月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △11.78)
  • Q2:7月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △14.39
    (7月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △0.60)

日経平均の1カ月先の見通しDIと3カ月先の見通しDIは、それぞれ、△29.55、△14.39となり、前回(△11.78、△0.60)から大きく悪化しました。さらにその内訳を見ても、1カ月先、3カ月先の見通しの両方で、「弱気」の見方が大きく増加する一方、「強気」の見方は今年に入って最も低い水準となっており、強気派の減少が目立つ結果となっています。

強気派が減少した大きな要因としては、8月末の米ジャクソンホールでのバーナンキFRB議長講演から本格化する、欧米の政策当局のイベントを前にした警戒感と、世界的な景気減速が続くことで企業業績の下振れ懸念が意識され始めたことが考えられます。

確かに8月の日経平均は月間ベースで上昇はしたものの、好調な米国株市場と軟調な中国株市場の狭間に位置していたと言えます。米国株市場は、思っていたほど悪くなかった経済指標と、適度な金融緩和への期待の「いいとこ取り」で上昇していた面があるのは否めません。一方の中国株市場は景気減速傾向が嫌気され、上海総合指数が度々年初来安値を更新するなど、米中の株価指数は正反対の動きを辿りました。また、国内要因でも、8月13日に発表された4-6月期GDP成長率が、前期(1-3月期)に比べて大きく減速したことも、国内景気の先行き不透明感につながったと思われます。

これまでは、状況が悪化すれば、当局の対応期待が高まるという「綱引き」の構図を繰り返してきました。前回の調査結果(1カ月先の見通し)では、「中立」の回答数が半分以上を占めていましたが、今回は大きく回答数を減らし、弱気に転じる動きとなっており、個人投資家の心理がやや悪化に傾いた可能性があります。

マクロ環境では中長期の見通しを立てにくく、株式市場の薄商いが続く中、個人投資家は業績が堅調な内需ディフェンシブ銘柄を物色する動きや、個別の材料株で短期の値幅を取りにいく動きなど、ミクロの視点での取引が中心となり、相場の手詰まり感がより強まっている印象です。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
9月3日 DI=△14.14 DI=△25.76 DI=7.58
7月30日 DI=△13.57 DI=△26.15 DI=3.59

為替の見通しについては、米ドルのDIが△13.57、ユーロのDIが△26.15、豪ドルのDIが+3.59となりました。前回の結果が、米ドル(△2.30)、ユーロ(△21.02)、豪ドル(+4.24)でしたので、3通貨ともに円高見通しが強くなった格好です。この1カ月間でドル、ユーロともに円高が進行していたことが背景になったと思われます。

とりわけ、ユーロについては大きく円高が進行しました。スペインの情勢が不良債権による銀行救済問題だけでなく、地方政府の財政問題にまで拡大したことで、欧州への警戒感が強まり、リスク回避の円買いが進行したことが主な要因です。

また、7月の日銀金融政策決定会合では追加の金融緩和が見送られましたが、その一方で、イングランド銀行(英国の中央銀行)は資産購入枠を拡大、欧州ECBや中国、ブラジル、韓国なども相次いで利下げを実施するなど、国内と海外の金融緩和スタンスに差が出たことも円高につながりました。

今後も引き続き、米国をはじめとする各国の金融緩和の動きが予想され、円高要因が意識される場面が出てくると思われます。ただ、ユーロについては少し状況が異なり、欧州の金融緩和策などの対応は、景気対策とは別に、財政・債務問題の拡大を抑制するねらいもあるため、欧州不安が後退することによるユーロ買い戻しのシナリオも考えられ、円安要因になる場合があります。

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 36.36% 34.33% 2.03%
EU諸国 8.08% 7.58% 0.50%
ブラジル 30.56% 21.76% 8.80%
ロシア 8.33% 5.99% 2.35%
インド 28.79% 27.54% 1.24%
中国 12.88% 10.78% 2.10%
中東・北アフリカ 7.83% 7.19% 0.64%
東南アジア 42.42% 46.51% △ 4.08%
中南米 11.36% 9.18% 2.18%
東欧 4.29% 2.40% 1.90%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 70.20% 72.46% △ 2.25%
外国株式 22.73% 27.94% △ 5.22%
投資信託 29.04% 27.94% 1.10%
ETF 16.16% 14.97% 1.19%
FX(外国為替証拠金取引) 17.17% 16.17% 1.00%
国内債券 8.08% 6.59% 1.49%
海外債券 11.62% 10.95% 2.23%
19.19% 18.02% △ 0.37%
原油 7.07% 6.59% 0.48%
商品 6.06% 5.79% 0.27%
REIT 11.87% 11.98% △ 0.11%
CFD 2.78% 2.79% △ 0.02%

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。