はじめに

今回のアンケートが行われたのは3月26日から3月28日です。年度末に向かって日経平均株価は10,000円の大台を回復し、28日の配当落ち分となる約80円を差し引いても10,000円台を維持するという、かなり市場センチメントが強気なトーンの中で行われましたが、結果はおおむね株価そのものが表している通りの結果となりました。今は慎重論や悲観論がまるで似合わないようなセンチメントになっているようです。このアンケートは日経平均株価をベースで行っていますが、TOPIXベースや東証2部指数ベースで行ったらまた別の結果が出たのかも知れません。TOPIXは、残念ながら前年度末の水準を回復できずに年度末を迎えた一方で、東証2部指数はかなりな騰勢の中にあるからです。さて、新年度入り後の市場を個人投資家の皆様がどのように考えていらっしゃるのか、今回のアンケート結果も是非今後の投資活動のご参考にして頂ければ幸いと思います。次回もぜひ、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「強気見通しはギネス更新の勢いが続く」

  • Q1:3月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI= +30.61
    (2月27日と1カ月後の日経平均の見通し DI= +31.14)
  • Q2:3月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +27.27
    (2月27日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +25.29)

今回の基準日となった2012年3月26日の日経平均株価の終値は10,018.24円です。3月14日に約8カ月ぶりに日経平均株価は10,000円の大台を回復し、その後もその水準を維持しながら、さらに一段高が期待されるようなセンチメントになっていました。ギリシャ問題が第2次支援によって峠を越え、欧州債務危機に対する不安感が大きく後退したことが大きいですが、米国のファンダメンタルズが引続き好調なものが続いているということも後押し材料となりました。NYダウが現地時間13日に前日比で217.97ドルも上昇して一気に13,000ドルの大台を突破したことが、これを受けた14日の日本市場の動きへと繋がっていることが何よりその証です。

こうした市場の流れは株式市場のみならずすべての資本市場に繋がっており、米国景気の好調さを受けて米国10年国債の利回りは2.3%台に向かって上昇し日米金利差が拡大、これを受けてドル高円安も加速、全般に日本株式市場の強気ムードを後押しする材料が揃った流れとなりました。

「強気見通しはギネス更新の勢いが続く」というコメントを付けたのは、3カ月見通しの強気度合いがDI上では過去最高を更新しているからです。前回の25.29がそれまでの最高値でしたが、今月はそれをさらに上回る27.27となっています。1カ月先見通しの方は、先月付けた最高値31.14をさすがに更新できませんでしたが、ほぼそれに肉薄する30.61で歴代第2位の値です。株価が昨年の震災前の水準に肉薄する中で、このDIの数値上昇は、個人投資家の皆様の先々の株式市場への期待値がいかに高いかを物語っていると思われます。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
3月26日 DI=+44.25 DI=+28.88 DI=+29.68
2月27日 DI=+43.71 DI=+24.43 DI=+31.29

調査時点のドル/円は82.71円、ユーロ/円は109.49円です。前回アンケート実施時で為替相場見通しについても株価に関するDI同様、対ドルと対ユーロは「Historical High」を更新しているとお伝えしましたが、今月はそれをさらに大きく上回る結果となりました。ただし、データをもう少し良く見て見ると、確かに両通貨とも円高になると見通す人は対ドルが全体の16.86%から15.78%へ、対ユーロが全体の25.71%から20.99%へと減少しているのは事実なのですが、これ以上の円安を見る人が増えているのかというとその数値も対ドルが全体の60.57%から60.03%へ、対ユーロが全体の50.14%から49.87%へと減少していることがわかります。つまり、前回アンケート実施時のように、積極的に円安を指示する人が増えてDIの結果が円安見通しに強く傾いたかと言えば、円高派が減少する一方で、現状水準を是認する立場の人が増えたということです。これは前回が経常収支の赤字化など円を積極的に売る材料があったのに比べると、今回は米国マクロの好調さに引っ張られるという展開であるからだということが言えると思います。

逆に、対豪ドルについては「変わらず」と考えている人が「円高」に一部動いたことでDIが31.29%⇒29.68へ低下しています。欧州景気のスローダウンを通じて、中国景気への影響が出始め、これを受けて資源輸出国である豪州の景気見通しにやや陰りが出てきていることがその背景です。つまり金利に低下圧力が掛かりやすくなっており、高金利通貨としての先々の魅力に「?」マークを付けた人がやや増えたということだと思われます。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 35.03% 33.29% 1.74%
EU諸国 6.95% 7.43% △ 0.48%
ブラジル 29.01% 31.86% △ 2.85%
ロシア 7.49% 6.57% 0.92%
インド 41.18% 39.86% 1.32%
中国 18.32% 18.71% △ 0.40%
中東・北アフリカ 6.28% 7.43% △ 1.15%
東南アジア 45.99% 45.29% 0.70%
中南米 8.02% 9.71% △ 1.69%
東欧 3.61% 3.00% △ 0.61%

やはり、こうなると米国が投資対象としては魅力を集めるようです。ポイントの上昇幅としては全地域で最高となりました。その反対で、ブラジルは大きくポイントを下げています。政策金利の0.75%引き下げを行うなど、景気過熱を危惧していた従来とは大きく方針転換をしているように受け止められているのだと思います。また穿った見方をすれば、従来は通貨選択型投資信託ではブラジル・レアルを採用しているものが絶大な人気を集めていましたが、このところの通貨選択型や毎月分配型投資信託に対する規制強化などが微妙にそれらに影を落としている結果なのかも知れません。ただ大きなマクロ・ビジョンの中では、ブラジル景気がこのままスローダウンしてしまうとは考え難く、一時的な動きと考えられます。それはやはりロシアやインドがポイントを伸ばしているように、新興国経済の伸長を除いてはグローバル・エコノミーの成長も考えられず、リスクオンとリスクオフが繰り返す中で、最終的に成長が期待できるのは何処かという議論に落ち着くと見るからです。その意味では、すでにGDPで世界第2位にまで成長した中国の存在は、新興国と見るべきか否かの端境期に差し掛かっているものと思われます。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 75.00% 76.86% △ 1.86%
外国株式 24.60% 23.57% 1.03%
投資信託 30.35% 28.71% 1.63%
ETF 16.58% 15.00% 1.58%
FX(外国為替証拠金取引) 17.51% 16.14% 1.37%
国内債券 6.28% 5.14% 1.14%
海外債券 9.63% 11.57% △ 1.95%
18.32% 17.71% 0.60%
原油 7.22% 8.43% △ 1.21%
商品 4.01% 3.57% 0.44%
REIT 12.17% 11.14% 1.02%
CFD 2.01% 2.86% △ 0.85%

やや意外感をもって見たのが、国内株式が株式見通しのDI結果とは裏腹にポイントを落としていることです。歴代最高の強気DIを示しながらも、今後の注目商品としての人気を落としているというのは「まだ上がるかも知れないが、すでに9合目まで来ている」というような慎重な判断があるのかも知れません。確かにこのアンケートでは「上がるか(強気)、下がるか(弱気)」しかお尋ねしていませんので、5%上がるのも、20%上がるのも、共に強気という投票になってしまう欠点があります。近時その辺を改良した設問も考えてみたいと思います。

海外債券は高金利通貨の金利低下を見通しているのか、それともやはり円安はこの辺りまでと考えているのか、不思議とポイントを落としています。これも、もしさらなる円安を見通すのであれば、金利収入と為替のキャピタルゲインの両方が得られるのですから、好適な投資対象と思われるのですが、これも水準感の問題かもしれません。

一方で、投資信託やETFの注目度が高まっています。個別株式を選別したり、海外市場の株式投資を行うならば、投資信託やETFを利用するのが効率的だとお考えの方が多いようです。原油については高値警戒感があるように思われます。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

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