先週の日本株は前半続落、後半は反転上昇しました。9日(金)夜の米国株が上昇したため、今週9月12日(月)から16日(金)はツレ高して始まりそうです。ただ、その勢いが続くかどうかは疑問です。

先週:強硬利上げを織り込み株価反転上昇。勢いは続かない!? 

 先週は8日(木)にECB(欧州中央銀行)が0.75%の大幅利上げを決定。

 同日の民間講演で、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長はインフレ退治という「任務が完了するまで」大幅利上げを続ける意向を改めて表明しました。

 株式市場を急落させた強硬な金融引き締めが続きそうですが、世界の投資家は悪材料織り込み済みと判断。

 ここまで下げ過ぎたこともあり、前日7日(水)から先回りして反転上昇に転じました。

 9日(金)夜の米国株は、米国長期金利が3.3%台で横ばいだったこともあり、勢いよく続伸。

 多くの機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週比3.6%、ハイテク株が集まるナスダック総合指数は4%超も上昇と、3週間ぶりにプラス転換しました。

 とはいえ、下げ相場にも一時的な反転上昇はあるもの。

 今週、最初に立ちはだかる関門は、13日(火)発表の米国8月CPI(消費者物価指数)です。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 前回7月CPIは前月比の伸びが鈍化しましたが、8月CPIは前月比0.1%の下落予想。

 予想通りなら強硬な利上げ懸念が後退して続伸。逆にインフレ率が鈍化しないようだと、再び急落の可能性もあります。

 先週の為替市場では日米金利差拡大の思惑から、7日(水)夜に1ドル145円台目前まで円安ドル高が加速。

 日本株では、円安が追い風となる精密機器、鉄鋼、機械といったセクターが上昇しました。

 円安急騰株の典型例が5月以降、株価が2.5倍高した国際紙パルプ商事(9274)です。

 同社は国内で紙を販売するほか、欧州や豪州の商社を積極的にM&Aし、紙パルプを欧州や中国に卸売りする事業を手掛けています。

 国内事業は、原油高を紙の販売価格に転嫁できずに横ばい。

 しかし、欧州など海外で紙パルプの販売価格が値上がりしたことで、円建て換算した海外の売上高・利益が大躍進しています。

 このように、円安はすでに日本に工場がなくても、海外で事業展開する外需産業の投資収益にとって究極の追い風なのです。

今週:13日米CPI発表で上昇!?円安は日本株に追い風! 

 今週はなんといっても13日(火)の米国8月CPIの結果が相場を大きく動かしそうです。

 原油価格が80ドル台まで下落して落ち着いていることもあり、8月CPIで明確なインフレ鈍化の兆しが出た場合、株価が大きく続伸する可能性もあります。

 その場合、金利上昇が大打撃となってきた米国ナスダック市場や日本のハイテク株、新興成長株が反転上昇のけん引役になるでしょう。

 ただ、先週の上げが、あくまで下げ相場の持ち高調整レベルなら、材料出尽くしで再び下げに転じる可能性も。

 9月は株価が乱高下しやすい時期。どちらに転ぶか、見えにくいところです。

 翌14日(水)は、企業間の物価動向を示す米国の8月PPI(卸売物価指数)も発表。

※PPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 こちらは7月時点で前月比0.5%のマイナスとなっており、8月も小幅低下の予想です。

 15日(木)には米国の8月小売売上高や鉱工業生産も発表。

 物価高で米国の個人消費や製造業の生産活動が落ち込むようだと、今度はインフレから米国の景気後退懸念が株価の下げ要因として再浮上するかもしれません。

 日本では今週もドル/円の為替レートに注目が集まるでしょう。

 内需産業は円安で輸入価格が高騰すると、苦戦を強いられます。

 物価上昇は庶民の暮らしを直撃し、消費不振を招く可能性も高いです。

 しかし、先週8日(木)に岸田文雄首相が住民税非課税世帯に緊急支援給付金5万円の給付を表明するなど、政府は消費喚起策を次々に打ち出しています。

 また、新型コロナウイルス第7波も収束に向かい、活発な経済再開で個人消費はさらに盛り上がりそうです。

 今後は外国人観光客の受け入れ制限緩和が見込まれます。

 彼らにとって円安で物価の安い日本は極めて魅力的。

 インバウンド需要の拡大は、日本の国内消費の力強い下支え役になるでしょう。

 一部の海外ヘッジファンドは「欧米の金融引き締めと真逆の量的緩和を続ける日本銀行の政策はいずれ破たんする」と、日本国債や円売りを加速させています。

 先週、9日(金)には日本銀行・黒田東彦総裁が「将来の不確実性を高めてしまう」と口先介入したことで、ドルは一時、142円台まで下落。

 今後もヘッジファンドの円売りと黒田総裁の口先介入合戦は続くでしょう。

「円安=悪」という論調もよく見かけます。

 しかし、日銀が海外勢の圧力に屈して金融政策を二転三転させない限り、少なくとも株式市場にとって当面、円安は好影響以外の何物でもありません。