はじめに

今回のアンケートが行われたのは9月26日から9月28日です。何度も蒸し返されては関係各国の首脳が火消しに躍起になる、そんなことの繰り返しが続いていたギリシャ問題ですが、今回は、その状況がかなりシリアスな感じになってきた矢先のアンケートになりました。世界の資本市場の関心事は、29日(現地時間)にドイツで行われる議会が欧州金融安定ファシリティー(EFSF)拡充策を承認するか否かであり、また一方で日本国内においては、まさに2011年度上半期末目前、放っておいても投資家がリスク回避的になる局面での集計となりました。今回もこのアンケート結果が皆様の日々の投資活動に、少しでもお役に立てればと願っております。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「さらにセンチメントは急速に悪化、ダウンサイドを強く意識」

  • Q1:9月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △36.73
    (8月29日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △4.19)
  • Q2:9月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △9.85
    (8月29日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +14.94)

今回の基準日となった2011年9月26日の日経平均株価の終値は8,374.13円です。前回のアンケート基準日8月29日である8,851.35円よりもさらに株価は下落したにもかかわらず、さらに言えば、じつは前回も同じトーンで前々回との比較感をお伝えしているのですが、投資家のセンチメントはより一段と急速に悪化していることを裏付ける集計結果となりました。しばらく、震災後の最安値は3月15日に付けた8,605.15円という状況が続いてきましたが、この水準についても9月12日にあっさりと塗り替えられ、底値が見えない状況になっていたことは確かです。今回の基準日の日経平均株価が8,374.13円と年初来安値を大きく更新した日に当たっていることはアンケート結果を考える上で斟酌すべき事実だとは思いますが、DIの数値もかなり急速にマイナス側に悪化してしまいました。

ちなみに今回の1カ月後の見通しは、昨年10月25日を基準日として行ったアンケート結果とほぼ同水準です。昨年10月に実施した結果の要因は、その2回前にあたる昨年8月30日を基準日とした結果の△40.40がリーマン・ショック後の最安値に次ぐ弱気水準となった、という流れの延長線上にあったものです。ゆえに、現在のこの水準がいかに弱気を示しているかは容易に想像頂けると思います。この時も市場の関心事は最高値に迫る円高の話にあり、政治は民主党代表選で菅直人元首相が再選され、やはりゴタゴタしていた頃です。

円高と政治の状況はあまりその時と変化したとは言えません。しかしその一方で、日本株市場を取り巻く環境はより悪化しています。一番はギリシャ問題であり、QE2終了とともに息切れ感が強くなっている米国経済であり、当然、東日本大震災やそれに続く原子力発電所事故が未収束でもあり、という状況です。逆に考えれば、それほどまでに状況が悪いにもかかわらず、このレベルで△36.73で踏み止まっていると捉える事もできるのかも知れません。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
9月26日 DI=△27.21 DI=△38.90 DI=△13.52
8月26日 DI=△12.85 DI=△6.98 DI=+16.48

調査時点の円/ドルは76.50円、円/ユーロは102.66円です。この原稿を書きながらあらためて驚いてしまいますが、前回基準日に比較して円/ドルの水準は、ほとんど変わっていないにかかわらず、円/ユーロは極端に円高に動いています。当時のユーロは111.34円です。金額にして約9円、率にして約8%もわずかひと月の間に円高に動いています。実は今回のDIの数値は、対ユーロについては過去3番目に円高を織り込んだ数値です。リーマン・ショックの時が最大で△65.18、次が2009年1月26日の△41.59で、今回が3番目になります。2008年12月1日に行ったものが△36.98でそれに続きます。

為替に関するDI値は、経験則として極めて足許の市場動向に左右されやすいという癖がありますが、102円台にまで円高が進んでもなお円高を見込んでいるというのはかなりセンチメントが傾いていることを示唆しています。もちろん、対ドルのDIも先月に比べるとマイナスが大きくなっているのですが、前々回7月25日のDIが△22.78ですから、そう大きく全体観が変わった印象はありません。

一方、対豪ドルでもいきなりプラスからマイナスにかわり、一気に円安見通しが円高見通しになったことが伺えます。株式見通しのDIとあわせて考え、まさに投資家がいかにリスク回避的な姿勢を強めているのかを垣間見ることができます。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 27.38% 24.86% 2.52%
EU諸国 8.85% 8.24% 0.61%
ブラジル 30.72% 37.29% △ 6.57%
ロシア 9.02% 8.10% 0.91%
インド 40.73% 39.66% 1.07%
中国 22.20% 22.49% △ 0.28%
中東・北アフリカ 7.18% 8.80% △ 1.62%
東南アジア 33.56% 36.87% △ 3.32%
中南米 8.01% 9.08% △ 1.06%
東欧 4.01% 3.91% 0.10%

新興国市場に対する個人投資家のリスク回避的な姿勢は、危機回避一辺倒からやや跛行色がついてきたように思われます。先月に引き続きブラジルは大きく注目度合いを下げましたが、逆にロシアやインドは1%前後上昇しています。中国もほぼ変わらずと言って良い水準です。確かに東南アジアはまだマイナス傾向ですが、じつはこれは前回プラスでした。

一方注目すべきは米国が注目度を高めた点です。前回比+2.52%の27.38%というのは4月以来の水準です。この頃はまだ米国景気に期待感があり、東日本大震災によるサプライチェーン寸断の影響は見込まれるものの、まだそんなに悲観論に傾いた局面ではありません。そこまで戻しているということは、投資家はそろそろ何をどうしたらいいのかと言う見通しを考え始めた、すなわち市場にある程度目線を戻してきたということなのかも知れません。「全部駄目だ!」と言うほどにさじを投げた訳ではないという程度に過ぎないですが…。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 61.60% 6411% △ 2.50%
外国株式 23.21% 24.30% △ 1.10%
投資信託 34.22% 35.20% △ 0.97%
ETF 17.20% 19.55% △ 2.36%
FX(外国為替証拠金取引) 19.70% 21.37% △ 1.67%
国内債券 7.85% 7.40% 0.44%
海外債券 13.86% 12.85% 1.01%
17.86% 17.04% 0.82%
原油 5.01% 4.61% 0.40%
商品 4.84% 4.47% 0.37%
REIT 10.35% 9.50% 0.85%
CFD 2.67% 3.35% △ 0.68%

投資対象エリアについては目線が変わりつつあるようですが、残念ながら具体的な金融商品になると、投資家の目線はまだまだリスク回避的な状態のままにあるようです。株やETFといった値動きの荒いものはまず敬遠された感じです。その反面、債券はリスク回避的にこそ買うものであり、また危機回避的に金を買うという流れは見て取れます。REITがややポイントを高めているのは、やはりこう世の中が価格変動リスクに対して過敏になってくると、利回りで物色する目線と言うのが生きてくるということだろうと思われます。早く全体が正常化して各リスクと向き合える状況に戻って欲しいと思う結果でした。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。