株主優待制度が転換期を迎えている。2022年に入り、オリックスやJT(日本たばこ産業)など個人投資家に人気の優待を実施する企業が、相次いで廃止を発表した。公平な利益還元を求める声に応えるため、配当や自社株買いなどへのシフトが進んでいる。一方、優待を拡充する企業の中には、長く株を保有してくれる株主への優待を手厚くしたり、SDGs(持続可能な開発目標)につながる優待を実施する動きなどもある。制度の見直しに伴い、企業と株主の関係づくりは変化しつつある。

相次いだ優待廃止。理由は「公平な利益還元」

 ここ数年は、株主優待制度の廃止が相次いだ。直近1年間ではオリックスやJT、丸井グループ、マルハニチロなど人気優待として知られる企業が廃止を決めた。優待銘柄の顔ぶれは、大きく変わっている。

 企業が優待を廃止する主な理由は、全ての株主に公平な利益還元を実現するためだ。優待は日本独特の仕組みで、恩恵を受けられない海外の機関投資家にとって不公平だとする批判が根強くあった。

 また、2022年4月の東京証券取引所市場再編の影響もある。上場維持に必要な株主数の基準が緩和されたことで、企業にとって個人投資家の獲得を目的に優待を続ける意義が薄れている。

 こうした流れを受け、優待を取りやめ、配当や自社株買いに集約する動きが増えている。

 丸井グループは、2023年3月期の期末配当に優待廃止に伴う特別配当1円を加え、年間配当を前期比7円増の59円とする方針。今後も増配と自社株買いによる株主還元を強化し、2026年3月期の総還元性向を、2022年3月期(参考値)比で10.1ポイント増の70%に引き上げる計画だ。優待は、2022年9月末の株主が対象の分を最後とする。マルハニチロも2022年3月末で優待を取りやめ、2022年3月期の年間配当を前期比15円増の55円とした。配当などの直接的な利益還元を優先する。

廃止ラッシュに一服感

 もっとも、足元では廃止ラッシュを脱した感がある。大和インベスター・リレーションズ(IR)によると、2021年9月末までの1年間に優待を廃止した企業数は75社と、過去10年間で最多だった。

 その後も廃止の動きはあるが、2021年10月~2022年7月末時点で45社(大和IR調べ、速報値)にとどまる。大和IRコンサルティング部の濱口政己氏は「このまま廃止企業が増え続ける、といった流れはなくなりつつある」とみている。

新設・拡充優待のトレンドは「長期継続」「SDGs」

 優待への逆風が強まる一方で、新設や拡充に乗り出す企業もある。

 ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは2022年6月末の対象株主から、新たに優待を実施する。個人株主を増やし同社店舗の利用を促す目的で、優待内容はドン・キホーテなどで使える電子マネー「majica(マジカ)」のポイント2000円分。実用的な優待が好感され、2022年6月末の個人株主数は4万6,566人と、優待を発表する前の2021年12月末比で2.7倍に増えた。

 長く株を持ち続ける株主への優待を手厚くする企業も増えている。

 半導体商社のトーメンデバイスはこのほど、3年以上かつ200株以上の継続保有を条件とする優待を新たに設けた。横浜家系ラーメン「町田商店」を展開するギフトホールディングスも、1年以上の継続保有でもらえる優待を新設。長く株を持ち続けるほどメリットを感じてもらえる仕組みで、株主をつなぎとめようと知恵を絞っている。

 優待を通じて、SDGsへの貢献を掲げる企業もある。

 食品工場の企画・制作などを手掛けるラックランドはこのほど、優待の事前予約制度を導入した。同社は、優待で東北地方のご当地食品詰め合わせなどを贈っている。事前予約により食品加工業者が適正量を把握できるようにし、フードロスの削減に貢献する。中小零細企業が多い食品加工業者の持続可能な発展にもつなげたい考え。担当者は、「社会貢献の一環として優待制度を継続していきたい」と話している。

 廃止と拡充に揺れる株主優待。制度を取り巻く環境が変わる中、企業はどのような株主還元策を示すのか。株主とのコミュニケーション力が問われている。