はじめに

今回のアンケート集計期間は10月25日(月)~10月27日(水)の3日間です。11月2日と3日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、国内独自の要因で動くことを忘れた日本株式市場は膠着感を強め、さらには1995年につけたドル円相場の史上最高値である79円75銭をうかがう動きの為替動向に弱気見通しが相当に高まった中で、今回のアンケート集計は実施されました。ある意味では予想通りの結果がでたという印象でもありますが、それにしてもいつになったら国内株式市場にホットな目線が帰ってくるのかと思います。国内の政治も捗々しくない状況が続いており、年内は明るい絵を描けない状況がこのまま続いてしまうのでしょうか?「2011年は明るい年になりそうです」とコメントしたかったというのが本音ですが投資家マインドは相当傷んでいると言わざるを得ません。今回の楽天DI集計結果も、皆さまの今後の投資のご参考にして頂ければ幸いです。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「再び投資家心理が大きく悪化、弱気見通しが急上昇」

  • Q1:10月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △36.97
    (9月27日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △29.41)
  • Q2:10月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △16.00
    (9月27日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △12.97)

今回の基準日となった2010年10月25日の日経平均株価の終値は9,401.16円です。8月末アンケートの「超弱気」から前回はいったんやや回復感が見られたものの、再び市場の見通しは大きく弱気に傾く結果となりました。DIの計算方法は「強気」から「弱気」を引いたものを総数で割るという方法を取ります。従いまして、DIがマイナスになる方法としては、「強気」が減る場合と、「弱気」が増える場合の両方があるわけですが、今回のDIが対前月比で低下した理由は「弱気」の増加です。すでに「強気」の比率が10%台前半に落ち込んでいるのでこれ以上減りようもないと言えるのですが、中立が増えたというより、明確に弱気が増えたというのが特徴です。

前回に比べて何が大きく変わったかと言えば、後述の通り「ドル円」での円高見通しがこの水準に達してもなお急増したことが挙げられます。日本経済が円高に対して弱いということは衆目の一致するところですが、有効な円高対策を政府が打ち出さない(打ち出せない?)ばかりか、G20などでますます円売り介入などの円高是正策が講じられなくなったということが大きいかと思います。このアンケート集計期間の後に発表されましたが、菅内閣の支持率が急低下したこともこのアンケート結果の背景を説明しているように思われます。

一方、注目されたFOMCにおいては景気テコ入れのため、2011年の半ばまでに6,000億ドルの国債を追加で買い入れる方針がFOMC声明で表明されました。これはほぼ市場の予想通りの水準で強いて言えばやや多めの金融緩和という感じです。これを受けてドルは対ユーロではやや売られたものの、対円ではひとまず史上最安値を更新するほどには売り材料とはならず、むしろやや買い戻されて81円台へと戻っています。米国債の長めの期間の方に掛っていた過度な金融緩和からくるインフレ懸念もやや払拭され、長期金利も落ち着いた動きになっています。中間選挙の結果については、下院で与野党が逆転し、上院は民主党が過半数を維持できたということで、これも大方の予想を覆すものではなく、むしろこの先サプライズが無かったことを市場がどう織り込んでいくのが注目される状況となりました。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
10月25日 DI=△39.72 DI=△18.62 DI=+3.03
9月27日 DI=△31.67 DI=△17.80 DI=+3.17

調査時点の円/ドルは80.49円、円/ユーロは112.94円です。1995年つけたドル円の史上最高値79.75円まであとわずかという水準で今回のアンケートは行われましたが、それでもなお円高見通しが△39.72と、本アンケートを開始した2008年10月(リーマン・ショック直後の異常事態)に次ぐ強い円高見通しとなりました。当時の為替水準は100円台ですから現在とは全然状況が違います。恐らく市場は79.75円という史上最高値を更新しないと収まらないというエモーショナルな状況に入っているものと思われます。対ユーロでのDIが前月水準を変えていないことからも、対ドルについてのみが際立って円高見通しになっていることがそれを裏付けるように思われます。

一方、このところ人気の通貨となっている「豪ドル」ですが、やや円高見通しに変わった前回から再び円安見通しに変わり、資源国通貨の人気の高さを示しています。ただ注目する投資先ではブラジルの人気に陰りが出ていることから、資源国と言っても跛行色が出ている状況とも言えそうです。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 23.03% 20.21% 2.82%
EU諸国

8.83%

8.60%

0.23%
ブラジル 37.79% 45.70% △7.91%
ロシア 7.03% 6.49% 0.55%
インド 56.97% 55.20% 1.76%
中国 26.07% 27.30% △1.23%
中東・北アフリカ 6.90% 6.18% 0.71%
東南アジア 36.83% 33.63% 3.19%
中南米 8.00% 7.54% 0.46%
東欧 3.86% 4.07% △0.21%

わずか前回の引き上げから2週間という短期間で再度IOF(金融取引税)を引き上げたブラジルに対する注目度が急低下しています。また今回は、新たに先物取引の証拠金に関しても同じく6%(従来0.38%)へと引き上げた上に、マンテガ財務相が「今回の措置の目的はレアルが過去3カ月間で7.1%上昇した要因である外国人の短期投資意欲をそぐことだ」と説明していることがひとまず投資家のマインドを冷やしたかと思われます。ただブラジル自体は長期の公的債務における借り換えを海外投資家によるロールオーバーで行なっているという背景があり、短期的なヒートアップは回避したい一方で、海外からの投資資金がなくなっては困るという台所事情もあり、ほとぼりが冷める頃には状況は変わることも推察されます。

また積極的な追加金融緩和策が期待される一方で、中間選挙の苦戦が伝えられるオバマ政権を抱える米国が注目度合いを高めていることにはやや皮肉な一面も感じます。大きな政府を標榜し、熱狂的な支持で誕生したオバマ政権が誕生後2年目で早くも試練を迎えているわけですが、日本も見た目は似たような「捻じれ国会」の状況でも、2大政党政治が成熟した状況とそうでない状況ではこうも期待値が変わるものかと考えさせられます。米国に対してはむしろ現実的な経済政策対応がされると市場はポジティブに受け取っているようです。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 59.03% 66.37% △7.33%
外国株式 28.69% 29.56% △0.87%
投資信託 29.79% 30.32% △0.52%
ETF 14.90% 15.23% △0.34%
FX(外国為替証拠金取引) 21.93% 23.83% △1.90%
国内債券 5.66% 7.84% △2.19%
海外債券 12.41% 13.57% △1.16%
18.62% 17.65% 0.97%
原油 5.79% 3.92% 1.87%
商品 5.10% 4.22% 0.88%
REIT 12.28% 9.35% 2.92%
CFD 4.14% 3.77% 0.37%

国内株式への注目度合いが60%台を切ったのは本アンケート開始後初めてです。国内証券会社のお客様を対象にアンケートをお願いしているという背景もあり、国内株式に対する注目度合いはある程度「お約束」的にも高かったという流れもあったと思いますが、今回の人気凋落ぶりは過去に例を見ません。

国内債券も人気を落としていますが、さすがにゼロ金利政策継続が日銀から表明され、ここまで金利が低い状態では投資家が国内債券に魅力を感じないのも無理からぬことと思われます。一方、その反対に利回りでの投資対象として評価され易いREITがジリジリと人気を取り戻していることが注目されます。価格変動リスクに対しては慎重になる一方で、利回り選好は引き続き続いているということだと思われます。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

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