はじめに

今回のアンケート集計期間は2月22日(月)~2月24日(水)です。中国人民銀行が準備預金率の引き上げを発表、そして中国本土市場が春節で一週間の休場という一方で高まるギリシャの財政危機問題もいったんはEU財務相理事会が財政再建計画を承認したことで安心感が広がるといった流れの中で、今回の「楽天DI」のアンケートは行われました。トヨタの品質問題も米国議会での公聴会を控えて、とてもナーバスな問題となっているなかでの集計ですが、個人投資家の皆さんの視線は、米国の公定歩合引き上げに集まったという結果になったと見てとれます。今回の集計結果も、皆さまの今後の投資のご参考にして頂ければ幸いです。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「3月末の日経平均株価は不透明ながらも、その後は決算発表を見ながら上昇する」

Q1: 2月22日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △2.08
(1月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △20.10)
Q2: 2月22日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +10.68
(1月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △0.12)

今回の基準日となった2010年2月22日の日経平均株価の終値は10,400.47円です。前回1月25日に実施したアンケート結果では短期DIが△20.10と大きくマイナスでしたが、まさにその通り、月初に日経平均株価が10,000円の大台を割り込む場面がありました。要因は大きく2つあり、1つがギリシャの財政危機問題がユーロ安を招いたこと、もう1つが中国の金融引き締め観測が高まり実際に中国人民銀行が預金準備率を引き上げたことが挙げられます。

ギリシャ問題について、EU財務相理事会が財政再建計画を承認したとの報が伝わると市場は大きく安堵してユーロの買い戻し、あるいはそれらを受けた株の買い戻しというよう流れに発展しました。ただ中国は春節(旧正月)で1週間休場となったため、取引再開後の市場反応を見極めたいとの参加者が多く、閑散な取引が続きました。今回はちょうどその取引再開初日からのアンケート集計ということになりましたが、不透明な状況ながらも落ち着いた展開となった足元の状況もあり、短期DIはほぼ中立という結果となりました。一方、注目すべきは3カ月後の見通しを示すDIが前回の△0.12からプラス10.68と大きくポジティブ転換したことにあります。

3カ月後といえば5月末ということになりますので、多くの企業の2010年3月期決算発表が峠を越え、市場が新たな一年を展望する段階に入るタイミングです。その段階を展望してDIが大きくプラスに変わったということは、発表される3月期決算はそれなりに良い数字が発表されるということを示唆しているのかも知れませんし、それらを受けても株価が堅調に推移するという見通しを持つ人が増えているということになります。

現状の日経平均株価指数採用銘柄で算出される今期PERは約30倍前後と高いままですが、2011年度の決算見通しで計算すると10倍台後半になると言われています。後述しますが、そうした流れをサポートするかのようにドル円為替は円安を見込み、注目する投資対象国として米国の評価が高まっています。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
2月22日 DI=+18.25 DI=△1.63 DI=+20.92
1月25日 DI=△20.10 DI=△14.71 DI=+4.67

調査時点の円/ドルは91.48円、円/ユーロは124.75円です。前回に比べて対ドルは1.27円の円安ですが、対ユーロでは2.91円の円高です。ただこの原稿執筆時点(2月25日)の水準は対ドルが89円台に入り、対ユーロも120円台と共に円高に振れています。再びギリシャ問題が浮上してしまっていることと、FRB議長が「民需回復は緩やか」といった低金利政策を当面は継続すると読み取れるメッセージを発したため、ユーロ→ドル→円といった順番で再びユーロが一番弱い通貨となってしまったという背景があります。

前回と大きく変わったのは対ドルに対する見方と正反対に円安見通しになったことがあります。これは先週、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策や景気見通しを変更したからではないとただし書きを付けながらも、公定歩合を0.5%~0.75%へ引き上げるというベクトルの変更を行ったため、市場はある段階では確実に米国は出口戦略を取り始めると先読みし始めたことを反映していると思われます。そうした市場反応を受けて、バーナンキFRB議長はあらためて議会証言で上述のようなコメントを発したのだと思いますが、市場の流れは短期的にはそれを織り込むとしても、大きなトレンドは変わったと思われます。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 19.29% 13.76% ↑ 5.53%
EU諸国 6.97% 5.74% 1.23%
ブラジル 46.29% 47.25% △0.96%
ロシア 8.61% 10.77% △2.16%
インド 45.10% 52.75% ↓ △7.65%
中国 52.08% 52.87% ↓ △0.79%
中東・北アフリカ 5.19% 5.98% △0.79%
東南アジア 29.97% 25.36% 4.61%
中南米 7.72% 8.01% △0.30%
東欧 2.37% 4.19% △1.81%

前項で、為替について言及した通り、市場参加者は米国の景気回復や出口戦略への見通しを期待し始め、米国経済の回復を期待する流れに入ったと感じます。為替についてはドル高を見込み、「今後注目する投資先」として米国が前回比+5.53%となる19.29%まで急上昇したのはその反映だと思われます。

一方、中国と並んで人気を集めるとともに、その景気過熱感を気にする向きが金融引き締めを危惧していることを素直に反映したのがインドの注目度かと思われます。今回の集計では△7.65%と大きくポイントを失いました。しかし、それでも中国、ブラジルと続いて僅差で3位にあり、2桁に届かないEU諸国との違いを際立たせています。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 68.55% 68.78% △0.23%
外国株式 28.93% 29.67% △0.73%
投資信託 31.60% 31.58% 0.02%
ETF 18.55% 18.18% 0.36%
FX(外国為替証拠金取引) 21.36% 22.25% △0.88%
国内債券 6.53% 5.14% 1.38%
海外債券 11.57% 11.84% △0.27%
17.95% 17.11% 0.85%
原油 5.34% 4.78% 0.56%
商品 4.90% 3.83% 1.07%
REIT 8.46% 7.66% 0.80%
CFD 5.19% 5.50% △0.31%

アンケート開始後、これほどまでに対前回比の数値が変化しなかったことは初めてです。通常は対前月比の振れ幅は2%~4%程度になるのですが、今回は平均が0.22%で標準偏差が±0.73%です。そうした流れの中で一番変化したのが国内債券、前回比+1.38%となりましたが、それでも全体でみると6.53%ですから国内債券が急激に人気を集めたという感じではありません。商品の長期低落傾向には、今回歯止めが掛かったのでしょうか? しかしいずれにしても「個人投資家は●●に注目している!」と言えるほど明確な「●●」を今回は見つけることができなかったと思われます。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

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株式等の取引にかかるリスク
株式等は、株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。また、株価指数連動型上場投資信託(ETF)は、連動を目指す株価指数等の変動等により損失が生じるおそれがあります。
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国内株式の委託手数料は、原則1カ月ごとに「ワンショットコース」と「いちにち定額コース」の2コースから選択することができます。
ワンショットコース(現物取引):
1回の約定代金が10万円まで145円/1回、20万円まで194円/1回、50万円まで358円/1回、100万円まで639円/1回、150万円まで764円/1回、3,000万円まで1,209円/1回、3,000万円超は1,277円/1回。いずれも税込み。
ワンショットコース(信用取引):
1回の約定代金が30万円まで262円/1回、30万円超は472円/1回がかかります。いずれも税込み。
いちにち定額コース(現物取引・信用取引共通):
1日の約定代金合計が50万円まで450円/1日、100万円まで900円/1日、200万円まで2,100円/1日がかかります。以降、1日の約定代金合計が100万円増えるごとに1,050円追加されます。取引のない日は手数料がかかりません。1日の約定代金合計は信用取引と合算して計算いたします。いずれも税込み。
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