先週の日経平均株価は8月17日(水)、2万9,222円の高値をつけ、1月年初につけた高値2万9,388円に迫る勢いでした。今週22日(月)から26日(金)は、米国の大幅利上げ継続に対する懸念が広がり、足踏みしそうです。

先週:日本株は円安で大幅高!米国株は9月0.75%利上げ警戒で反落

 先週の日本株はお盆で売買高は低調でしたが、一時1ドル137円台に達した円安トレンド再開もあって3週連続で上昇しました。

 中でも、主にIT関連の成長株の動向を示す東証マザーズ指数が前週比3%上昇と堅調。

 アマゾン・ドット・コム(AMZN)が、化粧品口コミサイト「@cosme(アットコスメ)」運営のアイスタイル(3660)の筆頭株主になることが報じられたのも、成長株上昇に拍車をかけました。同社の株価は1週間で2倍以上に急騰しています。

 米国では17日(水)、7月開催のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が公開。「どこかの時点で利上げを減速することが適切」といった発言記録もあり、予想よりハト派(金融緩和に寛容)な内容でした。

 しかし、セントルイス連邦準備銀行総裁ジェームズ・ブラード氏の「9月20~21日の次回FOMCで0.75%の大幅利上げの支持を検討」発言や、リッチモンド連邦準備銀行総裁トーマス・バーキン氏の「金利を景気抑制的な領域に引き上げるのが適当」といったタカ派発言が連続したことを受け、19日(金)の米国株は急落。

 機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週比1.2%下落、ナスダック総合指数も前週比2%下落しました。

 19日(金)には日本の7月の全国CPI(消費者物価指数)も発表。変動の激しい生鮮食料品を除くコアCPIは前年同月比2.4%増と11カ月連続で上昇。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 電気代は19%超、都市ガス代は24%超、生鮮食品を除く食料は小麦の価格改定の影響で3.7%上昇と、いずれも伸びが加速しました。

 賃金がまったく増えない中、食品や光熱費の高騰は国民の懐を直撃しそうです。

 今後は外食、食品、スーパー、小売りなど内需企業の間で、値上げしても売上を拡大できる勝ち組と、原材料費を価格転嫁できなかったり、値上げで販売不振に陥ったりする負け組の差が広がる可能性が高いでしょう。

今週:利益確定売りで下げる!?26日のパウエル議長講演で急落も?

 先週のFOMC議事録発表以降、米国市場では、米国中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)が秋以降、景気が多少落ち込んでも強硬な利上げを続けるのではないかという懸念が広がっています。

 その流れは今週の株価の下げ圧力になりそうです。

 今週末には、各国の中央銀行総裁が集まる経済シンポジウム、ジャクソンホール会議が25日(木)から27日(土)に開催予定。

 26日(金)夜には、ジェローム・パウエルFRB議長の講演が控えています。

 毎夏恒例のジャクソンホール会議は、株式市場がFRB議長の今後の経済見通しや金融政策の展望を知る非常に重大なイベントです。

 昨年の会議でパウエル議長は「インフレは一過性にとどまる可能性が高い」と発言し、予測を誤りました。

 今回は40年ぶりの物価上昇が続く中、パウエル議長が相当タカ派的な発言を行うのではないかという不安感が台頭しています。

 現在、株価が上昇に転じている原因の一つは、「秋以降、利上げ幅が縮小し、FRBの金融引き締め策が緩和される」という希望的観測が流布しているからです。

 パウエル議長が株式市場に冷や水を浴びせることなく、そうした楽観論を戒めるのは至難の業といえるでしょう。

 23日(火)には、フランス、ドイツ、ユーロ圏、英国の8月のPMI(購買担当者指数)の速報値が相次いで発表されます。

※PMIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!GDPと株価の関係

 前回7月分では、独仏ユーロの製造業PMIが好不況の境目となる50を割り込む低調な結果でした。今回さらに落ち込むと、欧州の景気後退が強く意識され、株式市場には逆風でしょう。

 26日(金)には米国の7月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表。

※PCEデフレーターに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 変動の大きい食品とエネルギーを除くPCEコア・デフレーターは前回6月、前月比0.6%上昇と伸びが加速しました。

 今回の7月では前月比の伸び率が鈍化する予想です。

 しかし、予想外の物価上昇となると、直後にジャクソンホール会議でのパウエル議長講演もあるため、大幅利上げ継続に対する警戒感から株価が急落する恐れもあります。

 日経平均株価は7月に1,408円、8月に入ってから19日(金)までに1,128円も上昇しています。

 円安を追い風に今後も底堅く推移する可能性が高いでしょう。

 しかし、急上昇が続いただけあり、今週は利益確定の売りなどもあって調整期間に入る恐れもありそうです。

 9月は例年、株式市場が乱高下する時期。その前触れで株価が急落するリスクがないとはいえないので、注意が必要でしょう。