判断に有効性があれば、ボトムアップがいい

 筆者が考える正解は、ボトムアップだ。なぜかというと、「意思決定の分散」の効果が働くからだ。

 例えば、100銘柄のポートフォリオが二つあるとして、「PER割安」や「大型成長株」といった属性から一気に作られたポートフォリオは、それぞれの属性に対する賭けが外れた場合にベンチマークに負けてしまうが、その賭けの勝率が仮に55%だったとした場合、45%は負けてしまう。

 他方、個々に理由の異なる優位性を持った(仮に勝率が55%に相当するような優位性だとしよう)「賭け」を100個独立なものを用意出来れば、全体としてベンチマークに負ける可能性はごく小さい。

 現実には「55%の優位性を持った予測力」は強気に過ぎる仮定であり、賭けの勝率は限りなく50%に近いので(注:取引コストを除いた場合でだ)、トップダウンとボトムアップの「差」は現実に表れにくいのだが、「別々の事情と相関関係で、何らかの優位性を持った賭け(=投資銘柄)」をたくさん見つけて組み合わせることが、優れたポートフォリオへのより確実な道のはずだ。

 つまり、「同じくらいいい銘柄」を30銘柄見つけた人よりも、100銘柄見つけた人の方が、いいポートフォリオを作ることが出来るはずだし、投資したい銘柄それぞれの理由が互いに独立であれば尚いい。

 これは、仕事としての運用者にとってハードワークが必要な所以だ。但し、別の原稿で何度も書いているように、ハードワークの内容は、決算説明会や経営者インタビューで暇を潰すことであるべきではないと筆者は考えている。