9月の株主優待銘柄

 9月は優待株の銘柄数が多く、株主優待祭りの季節です。2022年の権利付き最終日は9月28日(水)、権利落ち日が29日(木)、権利確定日が30日(金)。土日を挟まない最短スケジュールです。

 9月28日(水)までに優待株を購入し、一晩保有して、翌29日(木)まで持っていると優待権利を獲得できます。

 9月の銘柄数は394銘柄で、昨年と変わりありません。

 最近はJT、オリックスなど株主優待制度の廃止に踏み切る企業も増えていますが、まだその影響を受けていないのはうれしい限り。

 旅行需要で人気が高いANAホールディングスや日本航空の国内航空運賃割引優待のほか、家電量販店のヤマダホールディングスなどが相変わらず、人気の高い優待株になっています。

 物価高で生活費削減に役立つのは、なんといっても継続保有条件のない外食、食品系優待です。

 ランキング8位以下で目立つ、9月末・3月末の年2回の優待には、

  • TOKAIホールディングスの天然水(500ml)12本など(100株で5コースから選択)
  • 「かっぱ寿司」のほか、コロワイドグループの店舗でも使えるカッパ・クリエイトの自社ポイント(100株で3,000円分)
  • 牛丼店「すき家」のゼンショーホールディングスの飲食券(100株で1,000円分)
  • 「スシロー」「京樽」などで使えるFOOD&LIFE COMPANIESの飲食割引券(100株で1,100円分)
  • ワタミの「焼肉の和民」「鳥メロ」などで使える飲食券(100株で4,000円分)

などがあります。

 3月優待はクオカード、UCギフトカードなど金券優待も多数あります。

 楽天証券の「株主優待検索」を使うと、「金券」をはじめ、「食料・飲料品」「名産・特産品」などさまざまな優待内容別に、月ごとの優待株を検索できるので、ぜひ活用して、お目当ての優待株を探しましょう。

 9月優待株の人気No.1は、ようやく海外・国内旅行の需要が回復して、コロナ禍の業績悪化から立ち直りつつあるANAホールディングスです。

 100株保有で、9月・3月末に、国内全路線の片道運賃がおよそ半額になる株主優待番号案内書が各1枚贈呈されます。

 その他、ANAグループ会社・提携ホテルの10%以上割引、ツアー商品割引などの特典もあります。

 同社は今期(2023年3月期)最終利益が210億円と、待望の黒字に転換する見通しです。

 7月にコロナの第7波が全国各地に広がり、同社の株価も2,400円台で低迷していますが、今後は海外旅行客の増加も見込まれます。

 第2位は同じ空運会社の日本航空です。同社も国内定期航空路線が半額になる片道1区間の株主割引券が優待内容です。しかし、ANAに比べて年間でもらえる枚数が100株では1枚、200株では2枚、300株では3枚減ります。

 100株保有だと9月末にはもらえず3月末のみ1枚。9月末に割引券を1枚もらうには200株の保有が必要です。

 そのほか、旅行商品が2~7%オフになる割引券も発行されます。

 同社も今期は売上高前期比2倍、最終利益は450億円の黒字転換を見込んでいます。

 第3位は家電量販店のヤマダホールディングス。100株保有で9月末に1,000円分の買物割引券がもらえます。3月末は500円分なので9月のほうが少しお得。5万円前後で購入できることも人気の理由でしょう。

 第4位は業績絶好調の海運会社・商船三井が、優待制度の拡充もあって初のランクインです。同社の優待は従来、客船「にっぽん丸」のクルーズ料金が優待券1枚で10%割引、2枚で20%割引になるというもの(ただし、世界一周など、30日以上のクルーズでは1枚で3%割引)。100株保有では9月・3月末に各2枚の優待券が贈呈されます。

 これに加えて、毎年9月末の株主に、大洗-苫小牧間を運航する商船三井フェリー、大阪-志布志間などを運行するフェリーさんふらわあの2社のフェリー料金が5,000円割引となる「フェリーサービス共通クーポン券」が、100株保有で1枚贈呈される優待制度の拡充が行われました。

 同社は2022年4月1日に株式を3分割したため、100株の投資金額は約38万円。これまでよりは購入しやすくなりました。

 コンテナ船の船賃上昇で業績が絶好調のため、株価も上昇トレンドが続いています。

 また今期の配当金は1株あたり350円の予想で、100株でも3万5,000円の配当金がもらえる計算です。

 しかも、7月21日には今期業績予想を上方修正。今後は増配の発表が見込めるかもしれません。

 第5位は「ステーキ宮」や「海鮮アトム」など飲食チェーンを展開するアトム。

 9月・3月末、100株保有で、親会社のコロワイドやその傘下にあるカッパ・クリエイトの店舗でも利用できる自社ポイント2,000円分がもらえます。使える店舗が非常に多く、100株・約8万円の少額投資で取得できることから人気が高い優待です。

 第6位は事務機器のコニカミノルタ。9月末の株主に100株以上一律で、同社特製のカレンダーが送られます。株主に送付される「株主通信秋号」の裏表紙に印刷されたクーポンコードを利用すると、キンコーズの年賀状印刷サービスの割引を受けられる特典もあります。 

 第7位は玩具メーカーのタカラトミー。9月末の株主には一律で、通販サイト「タカラトミーモール」の買物代金が10%割引(半年で10万円が上限)となる制度が適用されます。1年以上3年未満なら30%割引になるなど、保有期間に応じて割引率がグレードアップします。

 同社のメインの優待は、100株でオリジナル「トミカ」2台がもらえる3月末です。

 第8位は「丸亀製麺」などを展開するトリドールホールディングス。9月・3月末に100株保有で、同社傘下の多数の外食店などで利用できる3,000円分の飲食券が贈呈されます。200株以上を1年以上継続保有すると、さらに年2回、3,000円分が追加贈呈される、おいしい継続保有優遇制度もあります。

「丸亀製麺」をよく利用する人にとっては、家計が大助かりの優待といえるでしょう。

コロナ第7波でも人気優待株の業績は回復傾向へ

「機関投資家にとって不利な制度だから」といった理由などで、株主優待を廃止する企業が相次いでいます。

 ただ、優待株が多い外食、小売り、スーパー、旅行、アパレル業界などの企業からすると、株主優待制度は、株主であると同時にお客さまでもある一般消費者に向けた販売促進、広告宣伝も兼ねた制度です。

 顧客獲得につながり、売上アップをもたらすような株主優待制度は、そう簡単には、なくならないでしょう。

 一方、今回、フェリー料金5,000円割引の優待拡充を行い、初めてランクインした商船三井やコニカミノルタのように、高額な配当金が魅力の優待株にも根強い人気があります。

 そうした企業の場合、優待自体はそれほど使い勝手のいいものではない場合もあります。ただし、商船三井のような業績絶好調で株価も上昇傾向となれば、話は別です。

 新型コロナウイルス感染症の第7波の拡大が心配ですが、いずれは終息するはず。

 コロナ禍で苦しんだ外食、スーパー、旅行関連の人気優待株も今期は業績の好転が見込まれ、株価が本格的な底打ち上昇に転じる気配もあります。

 物価高やそれにともなう利上げで、相変わらず株式市場は不安定です。

 しかし、コロナ禍の苦境を脱して業績が回復傾向にある人気優待株に投資を始めるには、いい時期といえるのかもしれません。