毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ)、TSMC(TSM、NYSE、ADR)、AMD(AMD、NASDAQ)、エヌビディア(NVDA、NASDAQ)、ASMLホールディング(ASML、NASDAQ)、東京エレクトロン(8035)、レーザーテック(6920)、アップル(AAPL、NASDAQ)、マイクロソフト(MSFT、NASDAQ)、ウォルト・ディズニー(DIS、NYSE)、ロッキード・マーチン(LMT、NYSE)、レイセオン・テクノロジーズ(RTX、NYSE)、ノースロップ・グラマン(NOC、NYSE)、ゼネラル・ダイナミクス(GD、NYSE)
1.ハイテクグロース株にとって、かつてなく重要な決算シーズンが始まった
2022年6月30日(木)に公表されたマイクロン・テクノロジーの2022年8月期3Q(2022年3-5月期)から2022年4-6月期、5-7月期決算が実質的に始まりました。今回は、2022年1-3月期、2-4月期決算同様、かつてない複雑な金融、経済、政治状況の中で行われる2022年4-6月期、5-7月期の決算発表シーズンの見所を解説したいと思います。
まず、アメリカの金融、経済情勢をおさらいします。
グラフ1はアメリカの政策金利の動きを示したものです。2022年3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)から今回の利上げが始まりました。アメリカの10年物国債利回り(グラフ2)は、それを先回りして織り込む形で2022年1月に入って上昇に転じました。
アメリカ政策金利の利上げは現在も続いており、6月のFOMCでは0.75%の大幅利上げが行われました。7月のFOMCでも0.75%の利上げが行われると、6月のFOMCの発表後市場では予想されていました。しかし、10年国債利回りは6月14日の3.483%をピークとして急速に低下しています。7月5日は2.8090%まで低下しました。ただし、その後反発しています。
この背景には、アメリカ経済が景気後退に直面しているという事情があります。実質GDP(国内総生産)は2022年1-3月期にマイナス1.6%となりましたが、この中身を見ると個人消費と設備投資は堅調ですが、純輸出(輸出-輸入)が成長率に対してマイナス要因となりました。
2022年1-3月期の実質GDPはこのようにマイナス成長でありながら、中身を見ると堅調と言えるものでしたが、4-6月期はウクライナ危機の影響が出てきます。原油高、インフレのマイナス要因、上海のロックダウンがアメリカ国内の各分野の生産に与える影響もあります。4-6月期の実質GDPがマイナス成長になれば、2四半期連続マイナス成長になり、テクニカル・リセッションとなります(実質GDPが2四半期連続でマイナス成長になることを、テクニカル・リセッションという)。今回の利上げが続くことによる景気後退は来年に起きると言われてきましたが、定義だけで言えばすでにアメリカは景気後退に入りつつあると言えるのです。
景気後退が起き始めているということは、金利低下要因になります。原油価格の下落などによって期待インフレ率(グラフ4)が低下しており、実質金利もやや低下しています(ただし、これも最近は反発しています)。昨年末から6月までは好景気の中で名目金利、実質金利が上昇し上海のロックダウンも起きました。これらが半導体関連株中心にハイテクグロース株が昨年末から大幅に下落した要因と思われます。
一方で、上海で再びロックダウンかという観測があるにせよ、金利が過去半年間のように一方的に上昇する局面ではなくなったとしたら、これはハイテクグロース株にとって重要な転換点です。要するに、半導体関連株を中核に、ハイテクグロース株が底打ち反転する可能性、あるいはそれがすでに起きつつある可能性があるのです。
ただし、別の観点からアメリカ経済は利上げ局面になっても成長が続いており、さらなる利上げがあっても経済のソフトランディングは可能という意見がFRB(米連邦準備制度理事会)理事の間から発信されています。
要するに、今の株式市場には異なる二つの見方、アメリカ経済はテクニカル・リセッションに直面しつつあり、金利低下が肯定されるという見方と、アメリカ経済は堅調に推移しており、経済はソフトランディング可能であるという見方です。金利上昇局面では、株式市場は時として混乱しますが、足元では株価下落によって半導体関連株中心にハイテクグロース株のPER(株価収益率)が低下しており、このため、金利低下と経済は堅調という、一見すると相矛盾する見方が株式市場に良いインパクトを与え、半導体関連株等のハイテクグロース株のリバウンドに繋がっていると思われます。
このような金融市場の動きとハイテクグロース株の転換点を見極めることが、今回の決算シーズンの重要ポイントといえると思われます。
その意味では、7月13日公表のアメリカ消費者物価指数6月分、7月26、27日のFOMC、7月28日公表の2022年4-6月期アメリカGDP(速報)が重要になると思われます。