先週の日経平均株価は週間で528円高となり、先々週の1,861円安の3分の1弱を戻しました。今週6月27日(月)から7月1日(金)は世界的な物価上昇や強硬な金融引き締め策といった株価下落要因がいったん忘れられ、戻りを試す展開になりそうです。

先週:パウエル発言で悪材料出尽くし。景気後退でも株高の理由は?

 今週で6月が終わり、7月に入ります。

 6月末で1年の半分が終わることもあり、米国では年金資金など機関投資家の「リバランス買い」が入って、一説には7%程度、株価が上昇すると予想されています。

「リバランス」とは、運用する資産をあらかじめ決めた資産配分に戻すこと。

 4-6月期の米国株は大きな下落に見舞われたため、落ち込んだ株式の比率を上げるリバランス買いが増えると見込まれているのです。

 先週は22日(水)、23日(木)に米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長が2日連続で議会証言をしました。

「景気後退リスクがあっても物価抑制に全力を傾けている」と強調。しかし「米国経済は非常に力強い」「景気後退を意図しているわけではない」といった市場に配慮した発言も目立ちました。

 これが景気後退になったら金融引き締めを多少ゆるめる、といった意図に解釈され、悪材料が出尽くしました。

 世界中の投資家が運用指針にするS&P500種指数が4週間ぶりに週間で6.5%近く上昇し、先々週の5.8%安を取り返しました。

 株価が下げ過ぎたこともあり、「一時的な景気後退が発生しても、それによって物価・金利が低下すれば、逆に株高につながる」といった楽観論が浮上したようです。

 長期金利の指標となる米国10年物国債の金利が3.3%台から3.1%台まで下落したことも追い風でした。

 中でも、今年に入って株価が半値から7割近く下落したフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)や、映画のネット配信企業ネットフリックス(NFLX)の株価が急騰しました。これらハイテク株が、業績から見て株価が安い米国割安株指数(ラッセル1000バリュー指数)に組み込まれる見通しが報じられたことが起爆剤になりました。

 そのため、ハイテク株が集まるナスダック総合指数も週間で7.5%上昇しました。

 これは、東証グロース市場に上場する国内のIT、ネット関連株の短期的な反転上昇にもつながりそうです。

 24日(金)には日本でも、5月の全国CPI(消費者物価指数)が発表されました。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比2.1%と2カ月連続して2%を超えました。

 電気代18.6%、ガソリン代13.1%、生鮮食品以外の食料では食用油が36.2%も上昇しました。

 ただ、物価高を価格転嫁すれば業績が上がるという見通しから、内需株のサービス業、小売業セクターが前週比3~4%上昇と底堅く推移しました。

 株式市場は物価上昇をポジティブにとらえたようです。

今週:米PCE価格指数に注目!日銀短観で「悪い円安」かわかる!? 

 今週は29日(水)夜にパウエルFRB議長やECB(欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド総裁のパネル討論会が予定されています。

 今の市場の期待は「物価高で景気後退懸念が出ることで、強硬な金融引き締め策が少し和らぐ」というもの。その期待に沿う発言が出れば、株価上昇につながるかもしれません。

 28日(火)には米国6月消費者信頼感指数、29日(水)にはドイツ6月CPI、30日(木)には中国6月PMI(製造業購買担当者景気指数)、フランス6月CPIなどが発表されます。

※PMIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!GDPと株価の関係

 世界的な景気減速の行方を占う上で大切な、各国の景況感に注目が集まるでしょう。

 中でも30日(木)発表の米国5月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)がとても重要です。

※PCEデフレーターに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 6月10日(金)には、米国5月CPIが予想を上回る上昇となったことで株価が急落しました。

 米国FRBがより重視している5月PCEデフレーターが予想の前年同月比6.4%を大きく超える物価高を示すと、再び株価は急落モードに入ってしまうかもしれません。

 7月1日(金)には日本銀行が全国企業の景況感を調査した2022年4-6月期の日銀短観も発表されます。

 前回4月発表の大企業の景況感指数は製造業、非製造業ともに7期ぶりに悪化しました。

 今回はちょうど1ドル121円台から136円台まで、急速な円安が進んだ時期です。

 企業が、実際のところ自社の業績にとって「いい円安か、悪い円安か」、どう判断しているのかに注目が集まりそうです。

 季節的には「サマー・ラリー(夏の株価上昇)」といわれ、株価がいったん反発しやすい7月を迎えます。

 ただし、株価が下がり過ぎたことによる短期的な自律反発は、状況次第ではすぐに終わるかもしれないため、注意が必要です。