テスラの不都合な真実

 テスラなどEV関連企業は、ESGで高く評価され、株価が一時大きく上昇していました。テスラが抱える以下5つの不都合な真実に目をつぶっていると私は考えています。

【1】発電で化石燃料を消費

 テスラ車はCO2を出しませんが、テスラ車が使う電気を作るために大量の化石燃料が使われています。

【2】中国リスク

 テスラは中国ビジネスが好調です。米中対立がさらに激化すると悪影響を受けるリスクがあります。

【3】価格低下リスク

 テスラ車の平均出荷単価は現在約5万ドル(約650万円)と高額で、富裕層しか購入できません。高級EVで先行したテスラは強気の高額販売を続けています。ただし、今後世界中の自動車メーカーが一斉にEVを増産するとEVの低価格化が進むと考えられます。低価格で高性能のEVが増えると、テスラ車も価格引き下げが必要になると考えられます。

【4】設備投資リスク

 急増する需要に対応するには、生産能力の大幅拡大が必要です。そのために投資負担が重くなります。いずれテスラは、世界の大手自動車メーカーと同じく、大量の設備を保有する「製造業リスク」を負うことになります。

【5】水素エネルギー車との競争

 遠い将来の懸念材料として、EVは燃料電池車(水素エネルギー車)との競争で劣勢となる可能性があります。遠い将来、EVと水素エネルギー車がともに大量生産によって価格が低下して大衆車として普及すると仮定してみましょう。その時、大衆車として評価が高まるのは、水素エネルギー車であると思います。2つ理由があります。

 1つ目の理由は、燃料充填時間の差です。EVは燃料充填(じゅうてん)に時間がかかります。一方、水素エネルギー車は、ガソリン車と同様に短時間で燃料充填できます。

 もう1つの理由は、重いものを運ぶ力の差です。水素の方が少ない容量に大きなエネルギーが積めるので、トラックやバスなど重い重量を運ぶ用途には水素エネルギーが使われると思います。