急激な円安進行局面で外国人投資家の資金流入が期待できる銘柄に注目

 世界的な金融引き締め懸念が再燃する中で、相対的にバリュー株への資金シフトが続く見通しであり、今後も高配当利回り銘柄の活躍余地は大きいと考えられます。特に現在は、為替相場の急速な円安進行が強まっているため、外国人投資家の資金流入が期待できる高配当利回り銘柄に注目したいと考えます。

 基本的に外国人投資家は、円が自国通貨に対して上昇した場合に為替差益が得られます。そのため、今後も円安がしばらく継続すると考える場合には、日本株売りとなります。

 一方で、円安がピークを付けて、今後円高に反転するとみる場合は、日本株買いの妙味が生じます。現状、足元での円安進行は急激でもあり、円安がピークに近づいていると考える外国人投資家も多くなるとみられます。

 今回取り上げた銘柄は、配当利回りが高水準であるほか、ROE(自己資本利益率)が高く、外国人投資家の持株比率が高い銘柄としています。外国人投資家の日本株買いが本格化した際に注目されやすい高配当利回り銘柄と位置付けられます。

 中でも、コロナ前との比較で収益水準が高まっているように、足元で収益体質も強化されている銘柄をピックアップしています。具体的には、配当利回りが3.5%以上の高水準であり、今期予想営業利益がコロナ前水準(3年前比)で増益になっているもの、ROEが10%以上あるもの、外国法人持株比率が30%以上であるものとしています。

外国人投資家の買いが期待できる高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り 6月13日終値 時価総額 外国法人持株比率 ROE 5年平均成長率
8020 兼松 5.20 1,345.0 1,137 32.93 10.02 3.6
1808 長谷工コーポレーション 5.05 1,584.0 4,765 40.48 13.05 0.4
7272 ヤマハ発動機 4.40 2,613.0 9,157 33.72 18.11 18.1
7202 いすゞ自動車 4.06 1,624.0 12,626 35.77 10.57 12.5
1928 積水ハウス 3.99 2,353.5 16,114 30.91 10.44 4.8
9682 DTS 3.85 3,120.0 1,531 35.42 12.66 2.2
6134 FUJI 3.81 2,101.0 2,055 34.06 10.15 13.3
注:配当利回り、外国法人特殊比率、ROE、5年平均成長率の単位は%、時価総額の単位は億円
注:平均成長率は営業利益(今期予想含む)
注:配当利回りは会社計画がベース

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが3.5%以上(6月13日終値)
  2. 今期予想営業利益が3年前比で増益
  3. 時価総額が1,000億円以上
  4. 実績ROEが10%以上
  5. 外国法人持株比率が30%以上50%未満
  6. 前期実績・今期見通しともに営業増益

兼松(8020・東証プライム)

 総合商社の準大手的な位置づけとなります。電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空の4セグメントで展開しており、資源権益に投資していないことが特徴です。財務体質の健全性も相対的に高くなっています。

 配当性向目標としては30~35%をメドとしているようです。2022年4月には、兵庫県を地盤にNTTグループ各社の販売代理店となっているキンキテレコムを買収、モバイル販売網の強化に取り組んでいます。

 2022年3月期営業利益は293億円、前期比24.2%増となりました。エネルギー需要回復で鋼管事業が伸びたほか、畜産物価格の上昇、半導体関連製品の販売好調なども寄与しました。年間配当金は前期比5円増の65円としています。

 一方、2023年3月期は315億円で同7.3%増益の見通しです。モバイル分野での買収効果などによる電子・デバイスの増益、前期に発生した先物評価損の一巡による鉄鋼・素材・プラントの増益を見込んでいます。なお、年間配当金は前期比5円増の70円を計画しています。

 2022年3月には、空飛ぶクルマの離着陸場であるバーティポートの開発・運営、ならびにドローン物流の分野で世界をけん引する英Skyports社と資本業務提携し、日本国内での共同事業の合弁会社を2024年までに設立することで合意しています。

 兵庫県などとは空飛ぶクルマの振興を通じた地域創生の取組における連携協定を締結したほか、パーク24、あいおいニッセイ同和損害保険などとも、バーティポート開発に向けた業務提携を行っています。同分野における展開力は今後の期待材料とされそうです。

長谷工コーポレーション(1808・東証プライム)

 マンション建設の最大手企業で、累計施工数は68万戸を超え、現在ある国内マンションの約1割を施工している計算になります。国内トップの施工実績を背景としたトータルプロデュース、「土地持込による特命受注方式」などが強みとなっています。

 2020年2月に発表した中期計画では、2025年3月期経常利益1,000億円を数値目標としているほか、株主還元強化方針も示しています。年間配当金の下限を80円(直近で70円から上方修正)とするとともに、今後5年間累計の総還元性向を40%程度と設定しています。

 2022年3月期営業利益は827億円で前期比13.4%増益となっています。建築受注用地の取扱量が増加したほか、マンション分譲事業においても引き渡しが順調に進捗(しんちょく)しているようです。年間配当金は下限水準を70円から80円に変更したことで、前期比10円の増配となっています。

 2023年3月期営業利益は870億円で同5.2%増益の見通しです。建設事業の施行量増加、マンション分譲事業における引き渡し増加を見込んでいますが、資材価格の高騰が重しとなって増益率は鈍化を予想しています。年間配当金は80円継続の予定です。

 年間配当金の下限を80円と設定していることで、当面の減配リスクが乏しいことは、高配当利回り銘柄として注目するにおいて買い安心感が強いと考えられます。

 また、建設業界では目先、資材価格高騰の影響が全般的に強まる見込みですが、マンションに関して圧倒的な規模におけるスケールメリット(大量仕入れで安く購入できる)が享受しやすい状況にあるため、他のゼネコンとの比較で利益率悪化の懸念は乏しいものとみられます。セクター内での選別物色の対象になり得るでしょう。