先週の日本株は底堅く上昇しました。しかし、米国株は6月3日(金)の下げで主要3指数がいずれも週間で下落。今週6月6日(月)から6月10日(金)、日本株は上昇を続けられるでしょうか?

先週:円安・リオープンで「米国弱い・日本底堅い」継続

 日本株にも強い影響を与える米国株は先々週に主要3指数が全て6%以上、上昇。リバウンド上昇継続が期待されましたが、先週は横ばいが続き、3日(金)発表の米国雇用統計を受け大幅下落しました。

 雇用統計は米国の経済活動の先行きを占う重要経済指標です。

 3日(金)発表の5月非農業部門新規雇用者数は予想を上回り、前月比39万人増。

 平均時給は前月比0.3%増で、予想を0.1%下回りました。

「雇用は堅調だが、賃金の伸びは抑制」という結果は、40年ぶりの物価上昇が一番の下げ要因になっている米国株にとって本来、朗報のはず。

 にもかかわらず「旺盛な新規雇用で好景気が続き、今後も米国中央銀行FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが続く」という連想から、米国株は力なく下げました。

 これは、米国株がかなり弱い証拠になります。

 2日(木)、OPEC(石油輸出国機構)などが7月からの原油増産を決定したにもかかわらず、供給増が十分でないという見方から原油価格が上昇したことも響きました。

 一方、日本株は、再び1ドル130円を超えた円安や「Go Toトラベル」事業の7月再開検討などが追い風となり、米国株が伸び悩む中、日経平均株価が前週比979円高と大幅上昇して終了しています。

 業種別上昇率は機械、輸送用機器、電気機器セクターが前週比4~5%高と、日本を代表する製造業の株価が大きく上昇しました。

 小売、サービスなどリオープン(経済再開)関連セクターも2%超上昇しており、「米国株は弱いが、その割に日本株は底堅い」状況が続いています。

今週:金曜日の米CPIまで手詰まり!?岸田政権の改心に期待

 止まらない物価高とそれを抑えるための金融引き締めが、世界の株式市場の上昇を阻む大きな障害になっています。

 米国FRBは6月以降、保有する米国債や住宅ローン債権を毎月475億ドル(約6兆円)ずつ減額するQT(量的金融引き締め)を始動しました。

 9月には倍の950億ドル(約12兆円)まで資産の圧縮幅を引き上げる予定です。

「お金を借りにくくする」利上げと違い、QTは「世の中に出回るお金の絶対量を直接減らす政策」のため、株式市場に流れ込む資金量を減少させる効果はより深刻です。

 そんな中、今週は9日(木)にECB(欧州中央銀行)の理事会が開催されます。

 5月時点で、ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は7月からの利上げ開始を周知させており、今回の会合で利上げペースなど具体案が表明されそうです。

 FRBと同様、金融引き締めに積極的なタカ派姿勢が強調されると、世界的株安に拍車がかかる恐れもあります。

 今週、最も注目すべきなのは、10日(金)発表の5月米国CPI(消費者物価指数)です。

 今回発表の5月CPIは前年同月比8.2%と、伸びが鈍化する予想になっています。

 米国でCPIの前年比上昇率が5%を超え、急速なインフレが意識されるようになったのは昨年2021年5月だったこともあり、さすがにインフレがピークアウトし始める、という見通しが大勢です。

 しかし今年に入って、ロシア・ウクライナ戦争や中国のゼロコロナ政策による生産活動の停滞という新たな物価上昇圧力が加わっています。

 米CPIが予想に反して高止まりするようだと、株価にとっては非常にネガティブです。

 米CPIという最重要指標が金曜日夜に控えているため、円安とリオープン期待に沸く日本市場も、今週は様子見の膠着(こうちゃく)相場になるかもしれません。

 ただし、先週5月31日(火)には岸田文雄政権が目玉政策「新しい資本主義」の実行計画案を表明。「資産所得倍増プラン」という新たなスローガンが加わり、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の拡充など、株式市場に優しい政策が打ち出されました。

 日本には他にも、

  • 金融引き締めに動く欧米に対して、日本では量的金融緩和策が継続。経済的に追い風となる面があり、強い円安が定着
  • 欧州ほどロシア・ウクライナ戦争の悪影響を受けにくい
  • 西側諸国の対中国包囲網でアジア経済圏での存在感が増し、インバウンド景気や製造業の復活などに期待できる

 といった、漁夫の利ともいえる追い風が吹いているのも事実です。

 これまで株式市場に対して冷めたい印象のあった岸田政権が、日本株上昇を後押しする「資産倍増」政策にかじを切ったことで、「岸田ショック」転じて、「岸田ノミクス」が始動することに期待したいところです。