対策3)見かけ上の高いリターンを割り引いて考える

 そして、運用収益についても割り引いて考える必要があります。インフレが2.0%上昇した年に、資産運用で2.0%上昇したとしても、「実質的なリターンはゼロ」という感覚を持つ必要があるからです。

 インフレのない時代、資産運用はシンプルなものでした。年4%増やすことができればそれはそのまま資産価値の4%増を意味していたからです。そしてその運用収益はゴールに確実に近づいたことを意味していました。

 これからは「収益率-インフレ率」を常に頭に置いておく必要があります。どんなに高い収益も高インフレの時期には相対的に小さな資産価値上昇にとどまってしまうからです。

 また、インフレ初期においてはインフレ率を定期預金金利は下回ってしまいます(今がまさにその状況です)。健全な経済が回れば、銀行預金金利は上昇に転じますが、現状はまだこれからです。

 そういう意味でも「インフレ程度を補う運用」というステップ、「インフレを上回り資産の実質価値を向上させる運用」の2段階が、私たちのリスク資産運用に含まれていることを考えて、運用結果などは評価していく目線が必要です。

 ここしばらくのあいだ、リスク資産運用で大きな収益確保をできていたみなさんは、もしかするとこれから数年はそううまくいかない時期を過ごすかもしれません。

 何せ、年4%くらい稼いでも、実質は年2%程度でしかないというような、難しい運用管理をしていかなければならないからです。

まとめ:運用収益が、そのまま資産価値の増となった時代が終わる

 今回は、個人投資家の運用計画に物価高が及ぼす影響を「積立額」「目標額」「運用成績」という3つの観点から考えてみました。

 いずれも、20年以上考えてこなかったお題であり、今年は真剣に考えるべきテーマです。まだまだ不確定要素も多く、個人投資家にとっては難問ですが、時折意識してみるといいでしょう。