対策1)拠出額の増額を検討する

 最初に意識するべきは、定期的な積立投資を行っている場合の、積立原資の増額です。

 ただし、その「前段階」がひとつあります。インフレ時には支出が増加することになり家計が厳しくなります。何せ月20万円の家計が21万円、40万円の家計は42万円かかるのが「物価上昇5%の影響」だからです。

 この冬などは電気代、ガス代の上昇がひどかったのですでにそれくらいのインパクトが出ています。これが食品や日用品の価格にも広がると考えれば、生活コスト増が貯蓄余力の減少にしわ寄せがくる恐れがあります。

 まずは、家計管理と節約の取り組みを通じ、「積立投資をストップしない」ことが第一になります。

 そして、その次に意識するのは「積立額の増額」です。物価が上昇するということは、積立額が同額のままでは、未来のための軍資金も目減りしてしまうということです。定期的な積立額の増額を考えてみましょう。

 月3.0万円の積立をしていたとして、仮に物価上昇5%が2年続けば月3.3万円を意識する必要がある、といった具合です。

 例えば、米国の401(k)プランでは、同国のインフレトレンドを見据えつつ拠出限度額が毎年引き上げられる仕組みがあります。これも、「インフレ時には積立額を増額する必要性」を示唆しています。

 日本ではインフレを意識した積立増額というのは過去に想定したことがないテーマですし、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の上限も自動的に拡充するわけではありません。

 それでも、インフレ時には拠出額の増額を考えてみてください。枠を使い切った場合であっても、証券口座で積立投資信託の枠を設定してみたいところです。

対策2)将来の目標額の上方修正をする

 物価上昇が続いた場合、将来の目標額を上方修正することも必要になります。将来のモノの値段は将来まで物価上昇が続くことを見通しておく必要があり、その分現在価値よりも多い資金確保を意識する必要があるからです。

 今までは、2020年に考える「老後2,000万円」も、2000年に考える「老後2,000万円」も、感覚的には同じでよかったかもしれません。それはインフレが起きなかったからこそです。

 これから先、物価上昇が起きるであろう20年後の未来、2040年、あるいはそれ以降のことを考えるならそれでは足りないということです。

 仮に老後に2,000万円が必要だとします。あなたは今45歳で20年後のためにこれを準備しています。これで老後の行楽や娯楽費用をまかなおうと思っていたら、毎年2.5%の物価上昇が続いたとすれば20年後に必要な資金額は3,277万円まで高まります。ざっくり5割増し、と考えるわけです。

 目標額が上方修正されたとしたら、それに至るための計画も修正しなければなりません。最初に指摘した対策1の意味は、ゴールが高くなることへの対応でもあるわけです。

 対策としては拠出額の増額、運用利回りの向上、拠出期間の延長などを総合的に考慮して行います。しかし、運用利回りを高くすることでゴールを実現するアプローチはリスクも高めることになり注意が必要です。