分散が大事とは言うけれど、何をどう分散したら良いの?

――さらにいろいろな分散の要素についてお伺いしていきたいと思います。続いての質問です。

「分散が大切とは言うけれども、激動の時代にどのような分散の要素があるのか、どう分散すればいいのか分からない。」

 といただいております。

 分散と一口に言っても、何をどう分散したらよいのかわからないという方もいらっしゃると思いますが、マルチ・マネージャー運用では、資産の分散だけでなく、運用スタイルや運用会社の分散を徹底して行っているかと思います。こういった分散はなぜ必要なのでしょうか?

中川 分散投資といってもさまざまな切り口があります。

 当然、一つの資産でも、個別銘柄一つに投資するよりは複数銘柄に投資した方が、いわゆるポートフォリオ理論の観点からも分散できていることになります。また複数銘柄に投資する場合でも、セクターや大型、小型、地域や国別などの切り口があるかと思います。

 次に、複数資産に投資するとき、一般的に分散投資のスタートは株式と債券といわれます。これは相関関係が低く、値動きが異なるために分散効果が働きやすいためです。より分散効果を高めようとすると、ゴールドや不動産、原油など、実物資産も取り入れた分散投資も考えられます。

 次に分散効果を高めようとすると、分散の要素として「運用スタイル」が挙げられます。まず大きくは、インデックスにそのまま投資するパッシブ運用と、アクティブ運用との分散があり、さらにアクティブ運用の中でも、バリュー運用やグロース運用などのスタイル分散を行うことができます。

 さらに、それらのファンドを設定している運用会社も、分散の要素となります。日系か外資系か、知名度や規模の大小など、運用会社にもさまざまな違いがあります。

 最後にタイミングです。価格が下落した局面に底値で買いたい人もいれば、上昇局面でのモーメンタムに乗っていきたい人もいます。あるいは少しずつ投資していくという時間分散もあります。こういった分散の要素がある中で、どこまで分散が必要なのかを考えるのが良いのではないかと思います。

――資産の分散までは聞いたことがあっても、運用スタイルや運用会社の分散についてはなじみのない方も多いかと思います。これらはどのように考えて分散していけばよいのでしょうか。

中川 まず、なぜ運用スタイルを分散するかについてご説明します。

 次のチャートは、米国株式におけるバリュー相場とグロース相場の推移を示したものになります。上に行けばバリューが優位、下に行けばグロースが優位ということを示しています。1990年代後半のITバブルの時期は、グロースが優位となっていましたが、バブル崩壊後は2000年代中盤にかけてバリュー優位が続き、そのあとはまたグロース優位となりました。

 直近の新型コロナウイルス感染拡大の時期は、巣ごもり需要やDX銘柄などのグロース銘柄が買われ、ITバブル期を超える水準までグロース株優位となっています。次にバリューが来るのか、グロースが来るのかというのはプロでも判断しづらいため、バリュー・グロースどちらかに張っていくのは難しいのではないかと思います。

 したがって、スタイルの分散をすることでいかなる環境でも安定的なリターンを目指すことができると考えています。

(図5)米国株式 バリュー/グロースの推移

(出所)FactSetのデータをもとにラッセル・インベストメント作成
※2022年3月末時点。Russell1000バリュー/グローストータルリターン指数は、Russell1000 バリュー指数のRussell1000 グロース指数に対する相対収益率を表す。
※上記は過去の実績であり、いかなる記述も将来の投資収益などの示唆あるいは保証をするものではなく、またその結果の確実性を表明するものではありません。
※インデックスは直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。

 次に、運用会社の分散がなぜ必要かについてお話しします。一般的に運用会社を選ぶとき、過去にパフォーマンスが良かった運用会社を選びがちではないでしょうか。2016年に運用成績の上位25%に入った運用会社は82社ありました。

 その後2017~2019年と続けて上位25%に残ったのは、実はたった2社しかありませんでした。なかなかプロでもこのような確率で良いパフォ-マンスを出し続けるのが難しいという意味では、運用会社の分散も必要であると考えています。

(図6)好成績をあげた運用会社のその後

(出所)INTWORLD、ラッセル・インベストメント
※2019年12月末時点
※上記は過去の実績であり、いかなる記述も将来の投資収益などの示唆あるいは保証をするものではなく、またその結果の確実性を表明するものではありません。
※INTWORLD ラッセル・インベストメントのアクティブ・グローバル株式ユニバースにある330社の2016年のリターンおよび翌年以降のリターン。

運用会社を選ぶ際の4つの落とし穴

――やはり運用スタイルや運用会社の分散という要素も、リターンの安定化には考慮すべきということですね。続いて最後のご質問となります。

「プロの方がファンドオブファンズで運用する際に守るべきポイントを教えてください」

 御社は、まさにファンドオブファンズ形式で多様なファンドに分散投資しているかと思うのですが、その手法について個人のお客さまにもぜひお伝えいただければと思います。

中川 運用会社を選ぶ際の落とし穴として、4点挙げさせていただきます。

 まず1点目ですが、個人投資家の場合、どうしても投資するときに有名な運用会社に投資しがちかと思います。しかし、有名になるためのプロモーションが上手かどうかと、運用の巧みさとは、全く関係ありません。もちろん、有名な会社の方が安心ということもあるかもしれませんが、有名だからという理由だけで選ぶと、うまくいかない場合もあります。

 加えて、皆さんの手に入る情報はどうしても日本の情報がほとんどだと思いますが、日本で有名だからと言って海外で高く評価されているとは限らないですね。そういった点で、私どもは運用会社の名前や知名度だけで投資先を選ぶということはありません。

 2点目は、やはりファンドの資産残高を見て、残高の大きい方に人気があり、良いと思われがちかと思います。ただ、私どもの調査ではファンドの資産残高の大きさとリターンの高さは別問題になります。むしろ、資産残高が大きくなればなるほど思った通りの売買がしにくくなります。

 例えば投資対象が中小型株など流動性の低い市場の場合、資産残高が大きくなりすぎると、売買することでマーケットを動かしてしまうことがあるため、買いたい銘柄があっても買えないという場合があります。

 さらに言えば、残高の大きさはプロモーションが上手かどうかにかかっている面もあります。先ほどと同様に、プロモーションの上手さと運用の巧拙とは、全く関係はありませんので、ファンドの資産残高の大小と今後の期待できるパフォーマンスは別物と考えております。

――たしかに、残高が大きかったり、有名な会社だったりしますと、「みんな買っているから」と安心しがちかと思いますが、実はパフォーマンスとはあまり関係がないということですね。

中川 はい。3点目も、個人投資家の方がよく気にされる点かと思いますが、信託報酬が低い方が良いのかという点についてです。

 パッシブ運用については、インデックスに追随する投資手法ですので、インデックスのリターンから信託報酬がコストとして差し引かれるため、信託報酬の差がリターンを左右することになります。このため、パッシブ運用においては信託報酬が低い方が良いといえます。

 ただ、アクティブ運用に関しては、インデックス以上に高いリターンを求めるわけですから、高いリターンを出してくれる優秀な運用担当者を雇おうと思えば、それなりに高いサラリーを出さないといけないことになり、それが結果的に信託報酬の高さにつながってくることがあるかと思います。

 ともあれ、個人投資家にとっては、信託報酬控除後のリターンが、実際に自分に跳ね返ってくるリターンとなります。このため、信託報酬の高低以上に、信託報酬控除後のリターンが高いアクティブファンドを選ぶことが一番重要ではないかと思っています。

――ただ、先ほどのお話ですと、過去のパフォーマンスが良いファンドが優れているかというとそういうことではないということでしたよね。

中川 そうですね。そちらが4点目になります。先ほども説明した通り、過去のパフォーマンスをチェックするのは重要なことですが、それを将来も出せるかというのは違う次元の話になります。

 先ほど運用会社の分散についてお話ししましたが、運用会社も生き物であるといえます。例えば、運用会社の中身を見て、ファンドマネージャー、ポートフォリオマネージャーはどういう人物なのか、過去どのようなパフォーマンスを上げてきたのかを見ても、3年後や5年後に全く同じような運用会社であるとは限りません。

 特に、優秀な運用担当者は引き抜かれ、いなくなっていることもよくあります。定期的に運用担当者や運用会社の中身を見ていかないと、最終的にはその運用会社が駄目な運用会社になっている可能性もあります。そういう意味では定期的なチェックが必要であるといえます。

 このため、我々が運用するマルチ・マネージャー運用のファンドでは、運用会社のモニタリングを行い、入れ替えや除外するだけでなく、将来優れた運用能力を発揮しそうな運用会社の新たな発掘を行っています。

――中川さん、ここまでたくさんのご質問にお答えいただきありがとうございました。

 分散投資にはどのような観点が必要か、大変勉強になりました。

 マルチ・マネージャー運用がどのようなものなのか関心を持たれた方、またこれらの分散の要素を自分で実践するのは難しい…と思われた方は、実際に今回お話しいただいたマルチ・マネージャー運用の手法によって運用されている、以下のファンドをチェックしてみてください。

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