毎週金曜日午後掲載

本レポートに掲載した銘柄:ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)

1.2022年12月期1Q業績は19.0%減収、49.7%営業減益

 ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)の2022年12月期1Q(2022年1-3月期、以下今1Q)は、売上高35.34億ユーロ(前年比19.0%減)、営業利益7.85億ユーロ(同49.7%減)となりました。

 今1Qは大幅減収減益となりましたが、これは主に対顧客関係と会計上の問題によるものです。EUV露光装置の出荷台数は前1Q9台、前4Q12台から今1Q9台に減少しましたが、これは顧客のEUV露光装置に対する需要が強いため、前期に可能な限り出荷しており、もともと今1Qは減少する見込みでした。一方で販売台数(収益認識された台数)は前1Q7台、前4Q11台から今1Q3台に急減しました。顧客工場への出荷を最優先した結果、一部の顧客向けで以前はASMLの工場で行っていた出荷前の検査を省き、顧客工場で全ての検査を行うようにしました。

 その結果、EUV露光装置を生産した後、顧客工場へ速やかに出荷することができるようになりましたが、顧客工場での検収(装置が動くかどうかをチェックする。検収後収益認識する)が遅れるようになりました。そのため、今1Qから今2Qへ収益認識の遅れが発生しています。

 EUV露光装置以外のArF液浸露光装置、KrF露光装置なども、今1Qは前年比でも前4Q比でも販売台数、売上高ともに減少しました。これらの一世代以上前の露光装置もEUV露光装置と事情は同じで、顧客の強い需要に従って前期に適正在庫も含めて出荷したため、今1Qは販売台数、売上高ともに減少しました。

 受注は堅調でした。今1Qの全社新規受注は69.77億ユーロ(前年比47.2%増)でした。前2Q82.71億ユーロには及びませんでしたが、前4Q70.50億ユーロ並でした。このうちEUV露光装置の受注高は、今1Q25億ユーロ(前年比9.0%増)とこれも前2Q49億ユーロに届きませんでしたが、前4Q26億ユーロに近い数字でした。

 一方で、EUV露光装置以外のArF液浸露光装置、ArF露光装置、KrF露光装置、i線露光装置の受注高は合わせて今1Qは過去最高となりました。EUV露光装置以外の受注高は今1Q44.77億ユーロ(前年比83.0%増)となり、過去最高だった前4Q44.50億ユーロを超えました。

 今1Q末の全社受注残高は過去最高の約290億ユーロと年間売上高を超える水準になっています。

表1 ASMLホールディングの業績

株価(アムステルダム)584.00ユーロ(2022年4月21日)
株価(NASDAQ)619.98米ドル(2022年4月21日)
時価総額 234,242百万ユーロ(2022年4月21日)
発行済株数 401.5百万株(完全希薄化後)
発行済株数 401.1百万株(完全希薄化前)
単位:百万ユーロ、ユーロ、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。
注3:ASMLホールディングはアムステルダム、NASDAQに上場しているが、ここではアムステルダム市場の株価でPERと時価総額を計算した。
注4:会社予想は予想レンジの中心値。

表2 ASMLホールディング:売上高内訳(四半期)

単位:100万ユーロ
出所:会社資料より楽天証券作成
注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

表3 ASMLホールディングの機種別売上高、販売台数、単価(四半期)

出所:会社資料より楽天証券作成
出所:会社資料より楽天証券作成
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ1 ASMLのEUV露光装置:受注台数と販売台数

単位:台、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成、注:2021年12月期より受注台数は非開示

グラフ2 ASMLのEUV露光装置:販売、出荷台数

単位:台、年度ベース、出所:会社資料より楽天証券作成、注:2021年12月期より受注台数は非開示

グラフ3 ASMLホールディングの新規受注高

単位:100万ユーロ、出所:会社資料より楽天証券作成