2020年9-11月に盛り上がった回復機運が2021年に冷え込む

 過去2年、日本の消費は、コロナ禍で落ち込み→コロナ収束で回復の期待高まる→感染再拡大で落ち込み→回復期待高まる→感染再拡大で落ち込みを繰り返してきました。それが、イオンの株価と四半期業績に表れています。

イオンの四半期別営業利益:2021年2月期第1四半期~2022年2月期第4四半期

出所:同社決算資料より作成

【1】2020年9-11月期に営業最高益

 2020年は、3-5月(2021年2月期の第1四半期)に▲125億円の営業赤字に陥りました。コロナ禍による営業停止が影響しました。ところが、この年の9-11月(同第3四半期)には営業利益が急回復し、9-11月期として過去最高の342億円をあげました。営業再開で利益が急激に戻りました。この時、GoToEat、GoToトラベル・キャンペーンが実施され、イベントの制限も緩和され、全国的に人の移動が活発化しました。いよいよコロナ後の回復が始まったと期待が盛り上がった時です。映画「鬼滅の刃」が大ヒットし、イオンの「専門店」部門の利益を押し上げました。

【2】2021年は内外でコロナ禍が再び猛威をふるい業績回復遅れる

 2021年は3-5月(2021年2月期第1四半期)に営業利益が過去最高の391億円となり、いよいよ本格的な回復が始まると期待されました。ところが、その後の展開が、期待通りになりませんでした。日本およびアジアでコロナ禍が再び猛威をふるいました。国内外の営業規制・外出自粛の影響で営業利益の回復が遅れました。

 2021年9-11月の営業利益は前年同期比で▲67%の115億円まで落ち込みました。9月まで国内では4度目の緊急事態宣言が発令されていたこと、アジアでもコロナによるロックダウン(都市封鎖)が行われていた影響が出ました。回復機運が盛り上がった2020年9-11月とはっきり明暗が分かれました。

 ただし、2021年9-11月期を月別でみると、緊急事態宣言が続いた9月がもっとも悪く、その後業績は戻りつつありました。これから回復が始まると期待が高まったところで、年明けからオミクロン感染が急拡大しました。まん延防止等重点措置(まん防)の影響でまた回復が鈍化しました。

【3】2022年度は営業最高益を回復する可能性も

 まん防が3月22日に全面解除されたことを受けて、消費回復の期待が高まっています。4月8日に会社が発表した今期(2023年2月期)業績予想では、営業利益が2,100~2,200億円と、2020年2月期に計上した営業最高益(2,155億円)の更新を視野に入れています。

 ただ、感染は再び拡大しており、予断を許しません。重症化リスクが低いことからウィズコロナの経済再開が進むと私は予想していますが、感染拡大が再び内需回復に足かせとなるとの見方もあります。イオンは今期業績予想の前提として、経済再開を受けた感染再拡大が2022年9-12月に起こり、一部地域でまん防が再度適用される可能性も考慮しています。

 このようにコロナ収束の見通しが変わることにより、イオンの業績・株価とも乱高下してきます。ただ、遅かれ早かれいずれ人類はコロナを克服すると考えています。いつになるか分かりませんが、コロナが回復し、リベンジ消費が盛り上がる時には、業績・株価とも上向きになると予想しています。