75歳まで遅らせず、あえて60歳から取り崩す選択肢はありか

 以前、WPP理論の紹介をしました。あえて手元の財産を取り崩してでも、65歳以降に公的年金を受け取らず、無年金の期間をつくることで繰り下げの年金増額を目指すというものです。

 公的年金が無年金の期間を設定し、1年遅らせるたびに8.4%増の年金を一生涯もらえます。公的年金のほうも75歳まで繰り下げが可能になるので、最大で84%アップまで増額を目指すことができます。

 さすがに84%増までになると住民税や健康保険料の負担増も招来するので無理をして10年取り崩しという必要はありません。しかし3~5年程度の「手持ち資金取り崩し期間」と「年25.2~42%の年金増額を一生涯獲得する」とをてんびんにかけてみるのは悪くない選択肢です。

 もし、こうした繰り下げ年金を検討する場合は、75歳まで遅くもらえるようになったDCの資産を「あえて早く」もらうことになります。

 仮に夫婦で月22万円の年金に月5万円の娯楽費を上乗せして老後生活を送るとすれば、年324万円、5年繰り下げを目指すなら1,620万円の予算を確保できればいいことになります。

 NISAや他の手持ち資金があればそちらを優先したほうがいいでしょうが、65歳までは働き、65歳以降はDCを取り崩すというのはありでしょう。

 国の年金は同時期に75歳まで繰り下げできる制度に変わるわけですが、こちらを優先するためにiDeCoは早くもらう、というわけです。

65歳になった時、受け取り方法に悩むことになりそうだ

 まだ若いみなさんが65歳になった頃には、雇用環境は改善されることと思われます(給料半分でこき使われる60歳というイメージは消えていく)。むしろ70歳もしくは75歳まで働ける時代に変わっていきます。公的年金は65歳を標準としつつ、遅くもらい始めれば増額が可能になり、多くの人がこれを採用するはずです。

 そのとき、「雇用」「手持ち資金の取り崩し」「公的年金受取開始年齢」を組み合わせるパズルに「iDeCoをいつもらうか」が加わることになります。

 どうすればいいか、悩むことになりそうですね。でもそれは老後を自分らしくデザインできる余地が広がるということでもあるわけです。