先週「カネ余りと運用難」というレポートを書いたが、この運用難が深刻な状況となってきている。ストラテジストやアナリストも参っていて、相場見通しや景気に対する見方も概ね3つくらいのシナリオを用意して、このうちどれかが当たるでしょうというスタイルになっている。株・米国債・ゴールド・原油なども相場観が対立しているが、筆者が聞いている限り決定的な売り買いの動機となるものは少ない。

その中で比較的わかりやすい相場展開になるのが通貨の市場だと筆者は考えている。7月28日のネット勉強会「2010年後半の相場シナリオと注目ポイント」でも述べたが、現在の米国の通貨政策は通貨安政策が整合的であり、金利政策からみて現在の<ドル安相場>はロジック的に進行しやすい状況にある。">2010年後半の相場シナリオと注目ポイント」でも述べたが、現在の米国の通貨政策は通貨安政策が整合的であり、金利政策からみて現在の<ドル安相場>はロジック的に進行しやすい状況にある。

マサチューセッツ・アベニュー・モデル

  財政政策 金融政策 通貨政策
1 緊縮財政 高金利 通貨高
2 緊縮財政 低金利 通貨安
3 積極財政 高金利 通貨高
4 積極財政 低金利 通貨安

(出所:石原順)

ただし、クロス円相場は難しい。ドル安と円高の狭間で豪ドル/円やユーロ/円の動きはドルストレート通貨に比べて読みにくくなるだろう。

本日はドル/円が約8カ月ぶり安値(86円25銭)を付けた。このレポートを書いている最中も電話が殺到しており、レポートを書く作業が何度も中断されている。今日の円高についてはいろいろな材料を持ち出して説明がなされているようだが、ドル/円はまだトレンドが発生しておらず、明確なレンジブレイクも起きていないので、筆者はポジションを持っていない。

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(赤)


(出所:石原順)

「低金利の長期化=ドル安」というロジックで、現在、いくつかのファンドは「ユーロ買い」を行っており、欧州のストレステスト通過後は「ユーロ買い・ゴールド売り」のポジションをとっているファンドも多い。

ゴールド(日足)上昇サポートラインを割り込む

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)・55日標準偏差ボラティリティ(紫)
下段:55日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

強気相場の続いていたゴールドに、現在、久々の売りトレンドが発生したのは興味深い。最強通貨と言われたゴールド相場だが、ボルカールールの影響で金融機関が紙のコモディティ(ETF)資産の処分に動いている。上昇サポートラインを割り込んだことで投機筋の注目を集めているが、黄色の帯の上で相場をやっている限り、長期の上昇トレンドは変わらないだろう。

ユーロ/ドルは7月21日にボリンジャーバンドの1σを下回ったので、一度手仕舞いを行ったが、7月22日に再度エントリーし、現在買いポジションを保有中である。

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(赤)


(出所:石原順)

一方、ユーロ/円は108~114円のレンジの上方ブレイクに期待して、打診買いポジションを持ったが、相場が1σの内側に入ってきたので、このままいけば今日は損切りをする予定である。

ユーロ/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(赤)


(出所:石原順)

年後半相場の行方は混沌としている。こういう時の相場は投げと踏みの応酬になりやすく、目先の材料で動くと乱高下相場に巻き込まれてひどい目に遭いやすい。ドルインデックス・ユーロインデックス・円インデックスの標準偏差ボラティリティやADXがどういう位置にあるのか、日々チェックしながら慎重な運用を心がけたい。

ドルインデックス・ユーロインデックス・円インデックスのチャートと標準偏差ボラティリティの表示方法については、ブログ『石原順の日々の泡』の「標準偏差ボラティリティ(Std.deviation)の表示方法」を参照されたい。

ユーロインデックス(日足)

上段:14日ADX
中段:21日ボリンジャーバンド1σ
下段:26日標準偏差ボラティリティ


(出所:ストックチャートドットコム)