昨日6月17日に実施されたスペインの10年と30年国債入札は、市場関係者注目のリスクイベントであったが、この入札は無難に通過した。皆が危機に構えているときは、往々にして相場は逆に行く。ECBは5月末の時点で約350億ユーロの政府債を購入しているが、昨日もユーロ圏の各国中銀や政府系ファンドなどがスペイン国債を落札したようだ。ECBは現在も毎日約20億ユーロのギリシャ国債を買っており、投機筋も最近は腰が引けている。ユーロの下値では買い戻しの注文が厚くなってきており、今後は意外な戻りもあるかもしれない。

この連載やブログでたびたび取り上げてきたように、ユーロ売りのおいしいトレンド部分は、日足ベースでは5月で一旦終わっており、現在は典型的な調整相場だ。即ち、ユーロ安トレンドがピークを打ったあとの反動相場なので、ユーロが戻し気味の大きなレンジ相場になる。この局面は順張りがワークしにくい。下のチャートはユーロ/ドルの日足であるが、チャート上段の緑の部分がトレンド期間である。中段の矢印は過去2日間のレンジをブレイクしたときに点灯する売買シグナルである。下段は9日のRSIだ。

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
中段:過去2日間のレンジブレイクのシグナル
下段:9日RSI


(出所:石原順)

この売買シグナルに盲目的に従ってもあまり意味がないが、緑のトレンド期間は比較的値幅が抜ける。では、現在のようなトレンドのない(順張りがワークしない)期間の売買手法はどうすべきか?ここで参考になるのは9日のRSIである。RSIが30以下にあり、30を上まわった時が(逆張りの)買いのシグナルである。昨年9月以降、このような局面は6回あった。しかし、今回の2010年6月のシグナルを除いて、筆者はユーロを買っていない。RSIを使った逆張りが機能するには、相場にトレンドがないことが前提である。RSIが30以下であっても、チャートの水色の部分はすべてトレンド期間であった。

また、通貨の市場では、21日ボリンジャーバンド2σと13日移動平均3%乖離と相場の値段が交差したときが相場の短期的な転換点になりやすいが、このような局面での逆張りもやはり相場にトレンドがないことが必須の条件となる。

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド2σ(赤)・13日移動平均3%乖離(青)
水色部分での逆張りは危険!


(出所:石原順)

現在のユーロ/ドル相場の買い戻しがどこまで続くかはわからないが、オプションでレンジを組んでいる連中は、ユーロ/ドルが1.25を超えてくると苦しくなる。その場合は、5月高値1.2670をトライする可能性は十分あるだろう。

最近、通貨ファンドのトレーダーと話すと、必ずドル/円相場に対する愚痴が出る。全くトレンドが出ないので、儲からないという文句だ。現在、ドル/円相場は大きな三角保合形成中で、これをブレイクするか20ヶ月移動平均線を抜かないと埒があかないのである。もっと言えば、95円と88円をブレイクしないと大相場には発展しない。動かない通貨に固執してもしょうがない。同じ円相場をやるなら、豪ドル/円をトレードするほうがよいだろう。今年の豪ドル/円相場は、まずまず順張りがワークしている。

ドル/円(日足)とMACDの売買シグナル


(出所:石原順)

豪ドル/円(左)とドル/円(右)のATR(1日)

ドル/円は1日に1円動かない日が多い


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)とMACDのシグナル

2010年の豪ドル/円と日経平均はMACDの当たり年?


(出所:石原順)