資本主義経済というのはバブルの発生と崩壊の繰り返しであるが、現在、世界中でバブル相場が展開されている。海外の状況を聞いていると世界的に不動産バブルが復活しているし、株も堅調な動きとなっている。

NYダウ(日足)26日ボリンジャーバンド1σとMACDのシグナル


(出所:石原順)

このバブル相場は、リーマン危機後の低金利と過剰流動性、未曾有の財政出動の結果であるが、バブル相場を底流で支えているのは「時価会計の凍結」である。この時価会計の凍結という特例措置は、2012年に新たな自己資本規制がスタートするまでは温存される予定である。

米金融機関の決算発表スケジュール

企業名 発表日 発表時間 決算内容
JPモルガン・チェース 2010年4月14日 20:00 10年Q1
バンク・オブ・アメリカ 2010年4月16日 10年Q1
シティグループ 2010年4月19日 21:00 10年Q1
バンク・オブ・NYメロン 2010年4月20日 19:30 10年Q1
ゴールドマン・サックス 2010年4月20日 21:00 10年Q1
U.S.バンコープ 2010年4月20日 米株式市場取引開始前 10年Q1
リージョンズ・フィナンシャル 2010年4月20日 米株式市場取引開始前 10年Q1
ステート・ストリート 2010年4月20日 10年Q1
キーコープ 2010年4月21日 20:30 10年Q1
モルガン・スタンレー 2010年4月21日 21:00 10年Q1
サントラスト・バンクス 2010年4月21日 米株式市場取引開始前 10年Q1
フィフス・サード・バンコープ 2010年4月22日 20:00 10年Q1
BB&T 2010年4月22日 米株式市場取引開始前 10年Q1
アメリカン・エキスプレス 2010年4月22日 米株式市場取引終了後 10年Q1
PNCフィナンシャル・サービシズ 2010年4月22日 10年Q1
キャピタル・ワン・フィナンシャル 2010年4月23日 5:05 10年Q1
トラベラーズ・カンパニーズ 2010年4月23日 10年Q1
メットライフ 2010年4月29日 米株式市場取引終了後 10年Q1
AIG 2010年5月7日 10年Q1

(出所:石原順)

商業用不動産問題などの危機は「時価会計の凍結」によって封印されているので、現在は表面化しにくい。つまり、合法的な粉飾決算によって、「表の数字」で相場が形成されている。「米・英の金融機関はあぶない」「中国はバブルだ」「ユーロ圏もあぶない」「こんな経済状況で、この先の相場がハッピーエンドに終わるとは思えない」などの常識的なロジックで株をショートした(売った)投資家は、市場から退場を迫られている。相場の「2番底」を期待してVIX指数(俗称:恐怖指数)を買った投資家も、まったく当てがはずれてしまった。VIX指数のETF(VXX)は年初来40%超の下げとなっている。

VIX指数(日足)投資家の株に対する恐怖を示唆するバロメーター


参照:「石原順の日々の泡」(出所:石原順)

連日のようにギリシャ問題、PIGS問題、人民元の切り上げなどと大騒ぎしているわりには、VIX指数は「馬耳東風」で何の反応も示していない。これはVIX指数がボラティリティの予測モデルとして機能していないか、株式市場の投資家がよほど楽観的なのかのいずれかであろう。先週のレポートにも書いたように、VIX指数はもう1年半も下がっている。筆者は年央まではとりあえず強気相場が続くとみているが、年後半はボラティリティの上昇を警戒している。相場は循環である。「ユーロがなぜ今年売られているのか?」の答えは、昨年まで買われすぎたからである。ドルが戻しているのも、昨年売られすぎたからである。「ありえないなんてありえない」のが相場なので、「ある日突然」に備えて準備を怠らないようにしたい。投資家を守ってくれるのはストップロス注文だけである。

さて、今週は4月13日に民主党デフレ議連の為替政策の要望案「貿易・金融に過度の歪みが生じないよう、購買力平価を参考として、1ドル=120円前後を目安に、相場が適切な水準を保つよう最大限の努力を行う」が報道されたことで、筆者のところにも(購買力平価算出方法なども含め)照会が殺到したが、日本がデフレ脱却を目指しているという認識程度の話であろう。「第125回 日銀バブルに期待する投機筋」で書いたように、現在の日本株は外人が主導する20兆円バブル相場に既に入っている。中国や韓国の経済をみればわかるように、急激な経済成長は「通貨安」が原動力になっている。日本も円安がいいに決まっていると、政治家なら思うだろう。

現実のトレードではグローバリゼーションの時代にあって、古典的な購買力平価説(長期的な通貨の相場水準は相対通貨のインフレ率の格差)など誰も重視していない。購買力平価説で相場をやっても儲からないからだ。筆者は「ビックマック指数」なども信用していない。あれは、各国の人件費と不動産コストの比較である。グローバリゼーションが極まっている現在の為替市場は、膨大なファンドマネーをメインとする「アセット・アプローチ」理論で動いていると考えるほうが妥当であろう。「アセット・アプローチ」理論については、「アセット・アプローチという為替相場の決定要因」を参照されたい。

さて、為替市場は膠着相場が続いている。(筆者の定点観測による独断だが)現在、日足ベースでは、ユーロ/ドルもドル/円も調整中(トレンドがない)なので、次のトレンドを待つより仕方がない。

ユーロ/ドル(日足)

上段:ADX(14日)と標準偏差ボラティリティの推移
下段:21日ボリンジャーバンド1σ


(出所:石原順)

ドル/円(日足)

上段:ADX(14日)と標準偏差ボラティリティの推移
下段:21日ボリンジャーバンド1σ


(出所:石原順)

一目均衡表の雲に跳ね返されたドル/円相場は、4月16日14時現在、13-21移動平均バンドを下回っているが、終値で下に抜けると調整が<日柄>ではなく<値幅>になる可能性がある。その場合、200日移動平均線や直近の上げ幅の38.2%押しレベルがサポートポイントとなるだろう。

ドル円(日足)13日・21日・200日移動平均線の推移


(出所:石原順)