今日の為替ウォーキング

今日の一言

地位とは目標ではなく、過程である。- ビル・クリントン(第42代米大統領)

We Are All Alone

 米国と欧州は2月26日、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する制裁措置として、ロシアの一部銀行をSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication:国際銀行間通信協会)から排除することを決定した。SWIFTは、送金情報を電子的に伝達するシステムで、200余りの国地域の1万1,000社以上の金融機関などが参加する国際送金の標準手段。このシステムを利用できなくなるとロシアは貿易決済などに重大な支障をきたしロシア経済に深刻なダメージを与える。

 さらにバイデン米政権は28日、制裁の対象をロシアの中央銀行まで広げ、FRB(米連邦準備制度理事会)に持つCBR(ロシア中銀)のドル資産を凍結すると発表した。米財務省はG7と協調行動を取ると説明しており、日本政府や欧州各国も制裁に加わる意向を表明している。この措置によりロシアの外貨準備の80%以上が差し押さえられることになり、CBRはルーブル安を止めるための為替介入が不可能になる。ルーブル安はロシアのインフレ率の急上昇を招き、これもロシア経済にとっては大打撃となる。CBRは先週、政策金利を9.5%から20%まで大幅に引き上げた。

 円は「セーフヘブン(安全資産)」通貨と呼ばれ、地政学リスクやそれに連動した株価の大幅下落で投資家が消極的になる、いわゆるリスクオフのマーケットではマネーの逃避先として円が買われることが多い。しかし、今回のウクライナ事変(宣戦布告なしの戦争状態)では、ドル/円は114円台後半にとどまっている。水準からいえば「円高相場」というより「円安相場」だ。なぜドル/円は下落しないのか?

 ひとつには、エネルギー価格の高騰がある。ウクライナ戦争は、エネルギー価格の急騰という形をとってマーケットに出現している。1日のNY原油先物は100ドルを超え、7年8カ月ぶりの高値をつけた。エネルギー輸入大国の日本は、石油購入のためのドル買い需要が強まり、それがドル/円を下支えしていると考えられる。

 もうひとつは米長期金利だ。1日はリスクオフで米10年債利回りが1.68%台まで低下する場面があったが、弱気なFRB(米連邦準備制度理事会)を織り込みすぎるのは禁物だ。インフレ問題がある限り、FRBの利上げ方針は変わらない。地政学リスクに直面している欧州のECB(欧州中央銀行)とFRBは違う。

 FRB高官は、ウクライナ戦争を理由に利上げを見送る可能性はないと発言している。今後2週間で情勢が落ち着くならば、3月のFOMCで0.5パーセント利上げする可能性もあるだろう。金利差からもドル/円は下がりにくいのだ。

今週の 重要経済指標

出所:楽天証券作成