今日の為替ウォーキング

今日の一言

ビジネスの世界では、進化をしないことこそが「危機」にあたる。- ジェフ・ベゾス(アマゾン創設者)

Open Arms

 アマゾンとウォルマートは昨年11月に、30万人以上という大規模採用計画を発表しました。世界最大の物流サービス会社のフェデックスも、全米で数10万人を採用する予定。コロナ後の経済活動再開が本格化する米国では、米国の小売業者や物流企業の多くが、労働者の確保に苦心しており、人手不足への対応策として賃金アップや諸手当の拡大を実施しています。働き手を探しているのは小売業や流通業だけではない。米国の労働市場には1,000万件以上の求人が溢れています。

 ところが、働く人が見つからない。レストラン、ホテルなどの人手不足はいまだに解消されていません。コロナ感染流行前には大勢いたはずの飲食店のスタッフやトラックのドライバーは、どこに消えてしまったのか? 

 仕事を失っていた労働者は、不況が終われば、しばらく時間を置くことはあってもいずれ仕事に戻ってくるのが、これまでの一般的なパターンでした。パウエルFRB議長も、今の労働市場は「忍耐の時期」で、いずれ労働者は帰ってくるだろうと述べていました。

 ところが今回は、これまでの不況後には見られなかった現象が起きている。それは「退職率の急激な上昇」です。米国の株式市場は、コロナ感染が一向に収束しないなかでも、史上最高値を塗り替えながら上昇し続けている。ところが、そのおかげで多くのサラリーマンがコロナ前よりも「金持ち」になった。引退するのに十分な貯蓄ができたので、ウイルス感染の恐怖に怯えて外で働く必要がなくなった。この人たちは労働市場に再参入するチャンスを待っているわけではない。労働市場から永遠に去ってしまったのです。米国では新型コロナによって2,200万人が仕事を失いましたが、そのうち約200万人は今後も仕事に戻ってこないといわれています。

 米国では、総人口に対する生産年齢人口(15歳から64歳)の割合が、他のOECD(経済協力開発機構)諸国と比べると急激に低下していると報告されています。労働力不足は、短期的には生産者不足による賃金上昇やドライバー不足による流通網回復の遅れという形を通じてインフレをさらに上昇させる要因になりますが、長期的には国の成長力の衰退というより深刻な問題を引き起こすことになります。

 労働者の退職を加速させた一因は株高。その株高をつくった大きな要因は中央銀行の超低金利政策。経済を助けるための政策が、逆の結果を招いてしまったとは皮肉です。FOMC(米連邦公開市場委員会)が緩和縮小を急いでいるのは当然です。

今週の 重要経済指標

出所:楽天証券作成