いつ使う?どう使う?初心者だからこそ知っておきたい「トレイリング注文」の活用術
  (1)トレイリング注文とは?
 (2)トレイリング注文を発注する際のポイント
(3)テクニカル分析とトレイリング注文の事例分析

テクニカル分析とトレイリング注文の事例分析

 トレイリング注文の概要や発注時のポイントを理解したところで、事例を用いて深掘してみましょう。

 トレイリング注文を最大に活かすためには、株価のトレンドをうまく捉える必要があり、テクニカル分析との相性は比較的良いと考えられます。

 テクニカル分析において、トレンドの転換や継続を探る手法は多くありますが、ここではもっともシンプルな株価と移動平均線の関係について見ていきます。

(図5)東京エレクトロン(日足)の動き(2022年1月24日時点)

(出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成)

 一般的に、移動平均線が株価下落のサポート(支持)や上昇のレジスタンス(抵抗)となりやすいほか、株価が移動平均線を突き抜けた際には、強いトレンドが表れやすくなります。

 上の図5は東京エレクトロンの日足チャートですが、株価は8月20日に200日移動平均線がサポートとなって反発し、25日と75日移動平均線を上抜けて強い上昇トレンドが発生しました。その後は下落に転じ、再び200日移動平均線あたりで踏みとどまる展開となっていました。

 この時点で、「200日移動平均線がサポートとして機能している」、「この後、株価が反発した場合、75日や25日移動平均線がレジスタンスとなる可能性もあるが、上抜けたら強い上昇トレンドが発生するかもしれない」と考えることができます。

 そこで、75日移動平均線を上抜けた10月14日に東京エレクトロン株の買いを決断し、終値(4万8,120円)で購入したとします。

 次に、想定シナリオに従って、トレイリング注文を発注することになるのですが、その条件は、損切り条件を、75日移動平均線割れのところに設定し、トレイリングの開始は25日移動平均線を超えたあたり、そして、トレイリング幅を2021年あたまからの平均的な値幅である1,000円程度に設定するのが妥当と考えられます。

 その後も株価が上昇し、10月19日に25日移動平均線を上抜けてトレイリングが開始されましたが、翌20日に5万2,150円の高値をつけたあとに失速し、高値から1,000円安い5万1,150円で利益確定売りが発注されて約定しました。これによって、購入価格(4万8,120円)からは3,030円の利益を得たことになります。

 続く21日は一段安となりましたが、以降は25日移動平均線がサポートして機能し、再び上昇に転じる気配を見せているものの、25日移動平均線の傾きが右肩下がりのため、イマイチ株価の反発に自信が持てる状況ではありませんでした。

 そのため、先ほどの14日の直近高値(5万2,150円)を超えたらトレンド発生とみなして買いを入れようと判断し、実際にこの株価を超えた28日に再び購入しました(約定価格はこの日の終値の5万2,450円)。

 続いて発注するトレイリング注文については、トレンド発生がダマシの可能性も捨てきれないため、損切り条件を平均値幅の1,000円ぐらいにして、トレイリングの開始を9月28日と29日に開けた「窓」埋めの5万3,840円あたり、トレイリング幅も同じく1,000円に設定します。

 その後の株価は思惑通りに上昇を続け、11月9日に5万7,930円の高値から1,000円下げた10日に5万6,930円で利益確定となりました。購入価格からの利益は4,480円となり、先ほどの利益との合計は7,510円となりました(取引手数料などは考慮していません)。

 このように、トレイリング注文を活用することで、損失を限定しながら、利益を積み重ねることが可能になります。また、今回はトレイリング幅や損切りなどを価格で設定しましたが、比率(%)でも設定することができますので、投資スタンスや投資銘柄に合わせて発注することもできます。

 もちろん、結果が見えている現時点のチャートを見る限りでは、「トレイリング幅をさらに広げることで、もっと上手に上昇トレンドにも乗ることもできた」という見方もできますが、当時の状況からはトレイリング幅を数百円広げるだけでもかなりの勇気が要りますし、今回紹介した東京エレクトロンのような値動きが大きい銘柄だと、大きなトレンドの中で、トレイリング注文を何度か繰り返して利益を積み重ねることの方が現実に近いです。

 トレイリング注文を使いこなすハードルは決して低くはありませんが、損切りやトレンド転換の時期、利益確定のタイミングなど、大事な考え方を発注の度に考えることになるので、投資家として成長する経験値は高いと言えます。そのため、初心者の方でも機会があればぜひチャレンジしてみてください。

いつ使う?どう使う?初心者だからこそ知っておきたい「トレイリング注文」の活用術
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 (2)トレイリング注文を発注する際のポイント
(3)テクニカル分析とトレイリング注文の事例分析