今日の為替ウォーキング

今日の一言

今の時代、評価がすぐに出ないものは見向きされない傾向があるが、商売には「機」というものがあり、願いが正しければ、時至ればかならず成就する

Bite Me

 FOMCが終わり、次は来月発表される米1月雇用統計に関心が移ります。

 BLS(米労働省労働統計局)が1月7日に発表した12月雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が+19.9万人にとどまり、市場予想(+40.0万人)を大きく下回りました。前回分は+21万人から+24.9万人に上方修正されています。雇用統計の先行指標といわれる民間機関ADPによる雇用データは+80.7万人で、その差も大きかった。

 毎月発表される雇用統計は、最も注目が集まる指標であり、ドルの方向にも強い影響を与えます。それだけ重要なのに、予想と実際のブレがあまりにも大きい。改定値が大きいことは、速報値の正確性に疑問符がつきます。本当に正しいかどうかもわからない結果に対しマーケットが動いていることになります。

 雇用統計の予測は、最近とくに難しくなったといわれています。理由のひとつは、コロナ後の消費者と企業の行動パターンが予測しにくくなっていること。もうひとつは、政府が雇用主から受け取る雇用データの回答が激減していることがあります。

 しかし、予想が困難なのは雇用統計に限らない。過去の経済モデルに基づいた予想は外れ、過去データは頻繁に修正されています。飲食店など多くの業種が新型コロナで深刻な不況に陥っているその一方で、家電など過去最高益を出している業種もあります。「現在の経済サイクルは、これまでわれわれが経験してきたものとは別物なのだ。」このように指摘するエコノミストもいます。

 例えば、経済に季節感がなくなった。ロックダウンの夏は、冬のように自宅に閉じこもって過ごさなくてはいけない。移動制限が緩和されたら、今年の春は例年の夏以上に賑う行楽地も出てくるかもしれない。季節による人々の行動をベースした経済予測が不可能となっているのです。経済データの季節調整は意味がなくなりつつあります。

 ステイホーム期間中に、世界では爆発的な起業ブームが起きています。日本でも才能ある大学生はクイズ番組に出るかわりにビジネスをスタートしている。ところが、これらの数字は雇用統計には正確には反映されていない。ギグエコノミーも統計には表れない。

 最近の雇用統計では、失業率が下がっているのに雇用者数は増えてないというギャップが拡大しています。スタートアップ企業(まだ世に出ていない新たなビジネスモデルを開発する企業)で働く若者たちは「失業者」ではない。しかし、そのような誕生間もない小さな企業の就業状況を雇用統計のデータは網羅できていないから、表面上は「雇用者数は増えていない」ことになる。それぞれが別の調査を元に集計しているからこのようなことが起きているのです。

 雇用統計の数字はますます不完全になり予測困難になっています。しかし全体的な方向としては、経済が順調に回復しているということ。これは良いことです。

今週の 重要経済指標

出所:楽天証券作成