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ドル大増刷と株高によるドル安局面
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

ドル大増刷と株高によるドル安局面

2009/5/22
数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍する石原順氏による外国為替市場レポート「外為市場アウトルック」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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1971年の金本制崩壊以降、基軸通貨であるドルは事実上無制限に印刷できる。通貨の増刷に歯止めがかからないシステムというのは、最終的にいずれどこかの時点でインフレを招きやすい。インフレファイターとして名高い元FRB議長でオバマの経済再建策のスタッフでもあるポール・ボルカーは「連銀は危機対策としての資産拡大をやりすぎているので、米議会は連銀を査察し、制限をかけるだろう」と発言している。

現在FRBは空前絶後のリフレ政策(量的緩和という名のドルの大増刷)を行っている。世界的に信用不安が蔓延していた2009年の初頭までは決済通貨としてのドルの需要からドルは堅調に推移していたが、3月からの株式市場の急騰で金融不安も収縮している現在、需給的にダブついているドルは売られやすい環境にある。

モノの値段というのは需給関係で決まるので、需要のない環境でドルが大増刷されていれば供給過剰によるドルの減価が起こるのはある意味当然ではあるが、それが米国債の格下げ懸念の浮上などにつながり、「マーケットテーマとして浮上」してきたのが今週のドル安の要因である。昨日の米国市場はトリプル安(株安・債券安・通貨安)となったが、直近の株の下落率は上げ幅に比べれば軽微であり、ドルは供給過剰が主因で売られているのである。通貨の動きをみても株価連動通貨である豪ドルなどのクロス円は比較的堅調であり、現在はドルの全面安相場と言えるだろう。

豪ドル/円(左)・ユーロ/ドル(中央)・ドル/円(右)の「週足」と順張りシステムの売買シグナル

S&P500インデックス(日足)14日方向性指数ADX(赤)と26日標準偏差ボラティリティ(青)の推移
(出所:石原順、ブルームバーグ)

米銀行株指数(左)・ブラジル株指数(中央)・インド株指数(右)
2009年3月以降、急激な上昇相場となった

ブラジル ボベスパ指数(日足)
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドルインデックス(日足) 2009年3月から株高・ドル安連動相場に

ドル/円(日足)三尊天井パターンの出現と重要サポートライン(赤)
(出所:石原順、ブルームバーグ)

中央銀行の誘導する金融バブルは予想外の株の上昇をもたらした。空売りファンドの大量の買い戻しや、株を持っていないファンドマネージャーが大慌てして株を買ったことで、世界の株式市場は3月以降急騰した。しかし、まだ株式投資配分がベンチマークより低いアンダーウェイトとなっているファンドが多いため、現在の買われすぎ相場の調整が完了すれば、夏までにもう一段の株式市場の上昇も考えられる。昨年の大暴落で株を売りすぎてしまって、現金比率が高い年金やファンドは買わない恐怖で相場をやっているという声もあるくらいだ。先週のレポートで述べた「ハーバード大学の新興市場ETF買い」などは、アンダーウェイトの修正の典型例であろう。

いずれにせよ、基本的にすべての市場がリーマン破綻前の水準への戻りを志向している現状では、リスク対策としてのドルの需要はそれほど強くない。ドル安相場なのでドル/円、ユーロ/ドルなどのストレート通貨でのドル売りが現在の基本戦略だ。ユーロ/ドルの日足とADX(方向性指数)の推移をみると、現在はユーロ買いに強い方向感がある相場となっている。

ユーロ/ドル(日足)とADXの推移
相場の保合期(水色)とトレンド期(ピンク色)

ユーロ/円(左)とドル/円(右)のADXの推移とトレンドの判定
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円相場は先週のレポートで述べたように、この先の最重要ポイントは相場が3月安値の93円50銭 を維持できるか否かである。テクニカル的には93円50銭を割り込むと2月以降の円安基調に重大な障害が生じるので注意が必要だ。すでに94円50銭、94円00銭といったオプションのバリアが破られており、93円50銭の攻防に注目したい。

ドル/円(日足)93円50銭の攻防が視野に

豪ドル/円(左)ドル/円(右)の一目均衡表
(出所:石原順、ブルームバーグ)

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年5月21日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:楽天証券)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

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